第14話 貴女との約束を
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◯◯◯:主人公視点、もしくはそれに準じるもの
◇◇◇:主人公以外の視点
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あらゆる物を飲み込み、万物を焼き尽くさんとする破壊の力が、プルミーさん達に向けて放たれた。
しかしプルミーさんは迅速であった。
彼女の準備は既に完了していた。
「《
彼女の呼び掛けに応じて、燃え盛る業火に包まれた、禍々しくもどこか荘厳な門がゴゴゴゴと音を立てて現出した。
それは恐らく、プルミーさんが召喚したものに違いなかった。
○○○
彼女───エルフのギルマスことプルミーさんと映像の魔導機によって互いに顔を合わせて話し合った日に話を戻したい。
俺はその夜、夢をみた。
内容は前回と同じ、プルミーさんが多くの者を率いて戦う夢であった。
ただし、その内容の全てが前回と同じというわけではなかった。
前回みた夢でのプルミーさんは、どこか追い詰められた表情で、自身の身を顧みない様子であった。
しかし、その日みた夢でのプルミーさんからは、絶対に何としてでも状況を打破してみせるという意志を感じた。
装備にしてもそうだ。前回の夢とは異なり、恐らく彼女は試行錯誤の末に、持てる中での最高最善の物を用意し装着していた。
しかし───その夜の夢でも、結末が変わることはなかった。
プルミーさんは、みんなを率いて死力を尽くした。
実力以上の力を用い、老獪な策を張り巡らせ、誰一人欠けさせることなく、全身全霊の一撃により敵を滅ぼした───かに見えた。
その先はまさに、悪夢であった。
俺はもう、確信していた。
それまでにみた悪夢は、もはや単なる悪夢ではなく、これから確実に
目覚めと同時に俺は、最悪の未来を阻止すべく頭を抱えた。どれほどそうしていたか、俺の辿り着いた解答は、俺がだけが成し得る、たった一つのやり方であった。
けれど、それは、センセイによって否定されることとなった。
○○○
「我は反対じゃな」
まさかのセンセイの反対に俺は、己の耳を疑った。
「ムコ殿、我も
「ならッ───」
食い下がった俺をセンセイは一瞥し、
「
俺は、呆気に取られた。
そんな可能性、考えたこともなかった。
「強力な力の行使には、強力な代償を伴う。
強い魔法には、大量の魔力を。素晴らしい武技には、欠かさぬ功夫を。それこそが、自然の摂理。
ならソレは───下手をするとムコ殿の虎の子の宝珠以上の力を発現させるソレはどうなる? 何も代償がないとどうして言い切ることができる?」
彼女は言い聞かせるように俺へと説明した。
確かにその通りだ。センセイは何も間違ったことは言ってない───けど、
「なら俺は、これから起こる不幸がわかってても、それを手をこまねいて待つことしかできないのですか……?」
床に液体───血がぽたりぽたりと滴った。
いつの間にか、無意識に硬く握られた俺の手の平から流れたものであった。
センセイが俺の手を取った。
「ムコ殿、自分を責めて、傷つけんでくれ」
普段の飄々とした彼女が、俺を慮って顔を歪ませた。
俺はセンセイのその表情が好きではなかった。彼女にはいつだって「くふふ」と笑って他愛ないイタズラをしていて欲しかった。
ちょうどそのとき、チカリと、俺のマジックバックが一瞬光った気がした。センセイの視線も確かにそこへと向けられていた。
「セナも、ムコ殿にはいつでも笑顔でいてもらいたいと思うとる」
センセイが一つ大きな溜め息を
「我も、甘くなったものよ」
彼女はくしゃりと微笑んでみせた。
「───けど、まあ、悪くはない」
そこでようやくセンセイは俺の手を離したのだった。
「ムコ殿、これはセナからのお願いでもある。セナが言うておる。『イチローの力になってあげて』とな」
じゃあ! と俺が声を発するのを手で制止し、
「プルのやつを助けるのに、ムコ殿のソレを用いることを考慮しよう。ただ、それは最後の保険とする」
こうして、センセイが俺に、条件付きながら協力してくれることになったのだった。
○○○
最短時間で彼女の元へと馳せ参じるためにも《
竜の背から見えた、プルミーさんの召喚した巨大な門が、三つ首龍の光線の内の一つと接触し、大爆発を起こした。
それほど悠長にしてる時間はない。
「ここで降ろします」
竜の御者が俺達に告げた。
最前線は既に危険な状況であったため、少し離れた場所に降りることとなった。
急いで駆け付けた俺達の前で、プルミーさんが煌めく刀身の魔剣を振るった。目の前の化け物が一刀両断された。
まさに夢の通りの展開であった。しかし化け物がそれで終わらないことも俺は知っていた。
「プルミーさんッッ!!」
俺は大声で彼女の名を呼び、彼女の元へと駆けた。何とか、間に合った。
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