第一章  《自白》

第5話


 犯人の自白ほど、有力な証言はない。その、はずだった。





 取り調べ室、そこは、高度な心理戦が行われる。その情報戦は、極めて困難だ。


 扉が、開かれる。その扉は、重いものの、白く塗られていて、見た目のほうが軽そうだった。

 探偵が、椅子に座ると、


「私が、やりました。」


 開口一番、彼女は、そう言ってきた。


「私が、みんなの飲料水に毒を入れました。」


 しかし、この探偵は聞かなかった。いや、聞く気がなかったのだろう。


「多田 名香さん、あなたは、脅されている。違いませんね?」


 開口一番、推理を語り出した。


「…え?」


「あなたは、とある組織から濡れ衣を着せられている。あらかた、家族でも人質に取られているのでしょう。とりあえず、仮釈放にしますから、家に帰ってください。」


「いや、違います。私がや…」


「あなたは、脅されている、かわいそうな一般人。それ以外の、何者でもありません。」


「ちょっ……」


 被疑者の声も届かず、この探偵は、部屋をでた。実に、短い事情聴取だった。




「どうでしたか?彼女は犯人ではないでしょう。」


 部屋を出ると、刑事が1人待ち構えていた。


「まだ、はっきりしたことは分かりませんが、おそらくそうでしょう。」


 探偵が、そう述べた。


「よかったです。私としても、あんなに幼い子だと心苦しいですからね。」


 けれど、雑談なんてなく、探偵はその場をさった。

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