子取り様
第8話 プロローグ
隣のクラスの
「行方不明者届は出さなかったのか?」
「彼は親に暴力をふるうような人間だったそうよ」
だから親御さんはいなくなって清々したという。捜索願も出すことはなかったらしい。なんとも世知辛い話だった。因果応報ともいうべきなのか?
「この学校の校則って知ってる?」
そう
立川は黒髪をギブゾンタックにまとめている。その楚々とした佇まいからどこか一流ホテルの受付のような女子だ。この学校の理事長の娘でもある。
「あの悪いことをしてはならないという校則だな」
立川は頷いて、生徒手帳を開いて見せてきた。そこにはこう書かれている。
・夜間の外出はできるだけ控えること
・万引きやいじめなど、悪いことはしないこと
「この校則が作られたのには理由があるのよ。この学校はね、悪いことをすると子取り様に攫われるの」
その噂は俺も聞いていた。子取り様は本来は子供の成長を祈願する神様だ。夏には神様役の大人が、幼い子を抱きかかえて子供の健やかな成長を祈願するお祭りが開催される。
立川は古びたノートを見せてきた。
「これは、学年委員に引き継がれてきたノートなんだけど」
そう言ってページをめくりノートを開く。
そこに書かれていた文字らしきものにギョッとした。それは乱れた文字でこう書かれていた。
僕たちは悪いことをしてはならない
「これを書いた学年委員の高橋さんは行方不明になっているわ」
マジかよ。えぐい話だった。
「黒川くん、行方不明の生徒について説明してくれる」
目まで髪を伸ばした色白の眼鏡をかけた
「始まりは七年前だった。当時の松田と言う生徒が行方不明になっているんだ」
それから一年ごとに一人ほど行方不明になり、今にいたるまでに沼代を加えると六人いなくなっている。
「これが学年委員で調べ上げた資料です」
そう言って茶色に染めた二つ結びで童顔の
一年目:
三年目:
四年目:
五年目:
六年目:
「この原因と言うのが、悪いことか?」
「ええ、三名は分かったのだけど、山本さんはグレーで、松田さんは分からなかったわ」
グレーというのは万引きに近いことをした噂があるというレベルらしい。
「で、立川はなんでこの話を俺に?」
「ゴールデンウィーク明けの事件を解決した緑坂くんに調査を手伝ってほしいのよ」
それは怪談殺人事件と週刊誌が命名した事件のことだ。その解決に俺は一枚噛んでいる。
「期待しているぜ。探偵」
学習室の椅子の背もたれにもたれながらベリーショートの金髪に爽やかな顔立ちの
俺はただのミステリー好きで探偵ではないんだけど。
「私たちの代でこの話を終わらせるつもりよ」
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