第5話 事件の様子

「事件の当時のことを知りたいってどういうこと?」

「犯人がわかるかもしれない」

 俺たちは放課後、職員室に向かっていた。

「犯人って……」

「本庄を殺した犯人だ。たぶん、あいつは怪談の秘密を知って殺されたんだ」



「なに!? 事件のあった日の旧校舎に誰が出入りしていたか知りたいだと?」

 弁当を食べていた生徒指導担当の藤松先生が顔をしかめる。

「あのなぁ、生徒が事件に首を突っ込むんじゃねぇよ」

「どうしても亡くなった美咲のことが知りたいんです」

「森里は本庄さんの友達だったな」

 情には脆いのか藤松先生は悩んでいたが話してくれた。


 当時の遺体を発見した生徒は地学室にいた地学部の一年の中村という生徒だったそうだ。他の部員が教師を呼びに行き、旧校舎に駆けつけ事情を知った教師が警察に連絡した。その間も旧校舎の唯一の中央階段から一階ホールに下りてくる人物はいなかったそうだ。警察が駆け付けた後、藤松先生が案内役となり、二階の捜索をしたが誰もいなかったらしい。


 誰も出入りできない状態での旧校舎での犯行、それはまるで黒い涙の滴る絵画で起きたことの再現だった。


「開かずの校長室は調べたんですか?」

「あそこはただの物置になっている。今は鍵がかかっているからな。そのことを警察に伝えて調べてはない」

「というと先生は校長室に入ったことがあるんですね。室内にはどんなものが置かれていましたか?」

「そうだな。ベッドやキッチンなどがあったな。当時の校長は寝食をそこでしていたらしい」

「倉庫みたいな部屋はありませんでした?」

「いや、あったな。そこだけ手持ちの鍵じゃ入れなかった」

 ジロリと藤松先生が俺を睨んできた。

「いいか、これ以上事件のことを調べ回るんじゃないぞ」

「いえ、これで犯人が分かりました」 

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