第二章

騎士国カイエル編

第21話停船権が欲しい!

 アナタはアイドルの『円陣に参加したこと』がありますか?……俺はある。


 「俺」、二十六歳、元時給制契約社員、アイドルオタク兼ゲーオタ。

 ゲーム中に寝落ちして異世界へ転移し、あいどる24そっくりの女の子たちと、異世界を冒険中。


 ファルセイン王国を出発してから、大体一週間ほどたった……

 目的地である東の大陸、『騎士国カイエル』にはまだ到着していない。

 それは当然だったりする……


 そりゃそうだ、異世界の道なんて車が走るようにきちんと舗装なんてされているわけがない。

 ガタガタの砂利道がほとんど、獣道みたいな道もある。

 せめてジープとかにするべきだった……後悔先に立たず。


 しかも車が通れるような大きな橋なんてないし、勿論トンネルなんかも存在すらしない。

 なので山や川があれば相当な迂回をしなければならず、時間だけが無駄に過ぎていった。


 「ん~現実世界の道路を作った人は偉大だなぁ」

 「ママママスター、そそんなこといい言ってるばば場合では……」

 道が悪くてメンバー達が何言ってるのかよくわからない……



 異世界に来てから約六か月たち、新しく発見したこと・わかったことがいつくかあった


 ①オルタナティブドアの詳細

 異世界から現実世界へ行くときはどうやら自宅のみらしい(何か法則がありそう)

 自宅から異世界へは基本的に最後に開いた場所に戻るが、俺が強くイメージした場所なら行くことが可能っぽい

 今現在はファルセイン城下町・やんやん亭・名もなき村の三つが可能


 ②メタモルフォーゼ

 人魚や人馬など現実世界では目立つので、擬態魔法『メタモルフォーゼ』を使っている。

 これを使用すると、見た目が人間と全く同じ姿に変身できる。

 人魚のマリネは人間の『パンツ』を履くことができて大変喜んでいた。

 ちなみに自分で簡単に解除することが可能


 ③めん太について

 ファルセイン城の攻防戦の時に、マコトが使った共鳴魔法『スタンピード』。

 その動物たちの中にマコトが実家で飼っていた羊の『めん太』が混ざっていた。

 ビックリしたのはそのあと、アナライズすると『山羊座のゾディアックビースト』であることが判明した。

 『ゾディアックビースト……星の神が作ったと言われている生体兵器。

 十二星座をモチーフとし、それぞれ特殊な力を持つ。全て揃えると星神と同等の力を得ると言われている』

 ……公式オンライン設定資料集より抜粋。


 俺もプレイヤー時代、ギルメンとファルセイン中を探し回ったけど、結局一体も見つけられなかったのに……

 今は俺達と一緒に行動を共にしている。


 *****


 「お、なんか村みたいのが見えてきたぞ?」

 「ややややりましたたたねママスター、ああれは『カイエルの港町』でですすよよよ」

 やっとカイエルの港町に着いたか。

 ここからならカイエルの王城まで半日くらいかな?


 一休みがてら、お茶を飲みながらマキアに聞いてみた。

 「騎士国カイエルってどんな国なの?」


 「騎士国カイエルはその名の通り、王族や貴族、騎士の方が多数住んでおり、上流階級の国というイメージです」


 「上流階級ねぇ……」


 「ここカイエルの『カイエル騎士専門学校』で認定試験に合格することで百戦騎士となれます」


 「へ~、じゃあ今まで会った百戦騎士達はみんなこの学校の卒業生ってわけか」


 「そういう事になりますね」


 「あとはなんかないの?」


 「そうですね……海洋国家を謳っていて、海産物が豊富です。

 それにカイエルの海軍は、大陸一と言われています」


 「ふむ、海洋国家か……」

 ここなら船を使って中央島に行くことができるかもしれないな……

 『中央島』は、その名の通り大陸の内海の真ん中に浮かぶ小島。

 地続きではないので、海を渡る必要がある。


 「あ、あとカイエルの王様は伝説の『百万騎士ミリオンナイト』だそうです」


 「ミ、ミリオン!?ずいぶん桁が飛んだな」


 「昔伝説の悪竜を倒した人だそうで、この大陸に一人しかいないそうです」


 そりゃそうだ、そんな奴が何人もいたらゲームバランスが崩れてしまう。



 その話を聞きつけ、アンズが興奮気味に話し出す。

 「カイエルの王様は若いころに宝林寺活人拳と、その対極の流派である裏林寺殺人拳を両方極め、その後両流派の良いところを合わせて作った『双林寺活殺拳』の創始者でもあるんです」


 「おいおい、凄いな……そんでもって『騎士』でもあり『国王』でもあるわけか。本当にその人は人間なの?」


 「『閃帝』という異名を持ち、武闘家の憧れの的でもあります」


 この世界にはまだまだ凄い奴がいるんだなー、俺も修行頑張ろっと。



 トントン


 「?」

 一人の老人がマイクロバスの窓を叩いている……


 「おぬしたち、ずいぶんへんてこりんな馬車に乗っているのぉ」

 外には頭つるピカのちっちゃなおじいさんが立っていた。


 「ワシはラムじいさん、このあたりの港を仕切っておる。周りからは『ラムじい』と呼ばれている者じゃ」


 「ラムおじいさん、マイクロバスに興味があるんですかぁ?」

 アンジュが質問した。


 「ホッホッホ、ラムじいでええよ……見たところ木でも鉄でもない、不思議な馬車じゃのぉ……と」


 「これは『マイクロバス』と言って、現実世界の乗り物だよ」

 俺が答えた。


 「ほう、ではおぬしは『転移者』かのぉ……久しぶりに見たわい。ところでおぬしたちはここで何をしておるのじゃ?」


 「一応カイエルの王城を目指しているんだけど、その前にここから船で中央島へ行くことができるかどうか聞きたかったんだけど……」


 「中央島!?……ふむ、ここ何十年も船で中央島へ行ったという話は聞いたことがないのぉ。ここの船乗りに頼んでも、おそらく行ってくれる者はおらんじゃろう……問題がいくつかある」

 「問題?」


 「まずは海賊。カイエル港町の周辺で海賊が出現するらしいのじゃ。すでに何件か被害報告が出ておる」

 「海賊か……異世界ならあるあるだな」


 「そして魔獣。カイエルから少し離れた海域で、最近目撃例が増えておる」

 「魔獣?海のモンスターって事か」


 俺達『異世界あいどる24』もだいぶ強くなったはずだし……

 「自分で船を購入して、自分たちだけで中央島へ行くって方法なら?俺達なら海賊も魔獣とも戦えると思うんだけど」


 「あまりお勧めはせんが、そうなると船だけではなく、『停船権』も必要になるのぉ」

 「『停船権』……船を泊めておく港の確保ってわけか」


 「その通り、しかも中央島へのルートはかなり難解で、熟練の船乗りでもおいそれとは行けぬのじゃ」

 「問題てんこ盛りだな……」


 まあどっちにしても、中央島へ行くにはまだ全員のレベルが足りていないし、

 中央島への移動はカイエル城へ行った後、ゆっくり考えるとしよう。


 俺は興味が湧き、ちょこっとラムじいをアナライズしてみた。

 「ラムじい」「男性」「レベル250」「基本属性 水」

 「HP1450」「MP1100」「腕力1200」「脚力1150」「防御力800」「機動力900」「魔力350」「癒力400」「運350」「視力2.0」……


 「ぶっ」

 俺は思わず吹いてしまった……

 なんじゃこのでたらめなステータスは!?レベル二百五十って……


 「どうしたんじゃ?急に吹きだしたりして」

 「あ、いや、その……」


 ラムじいさんの顔がニヤリと微笑む

 「おぬし……ワシのことアナライズしたのぉ?」


 「あ、あははは、えーっと……」

 ラムじいさんは俺の耳元で小声で話す……

 「このことは秘密にな。この港の連中にはワシのステータスの事は知られていないんじゃ」(小声)


 「あ、はい」(小声)

 「かわりに良いことを教えてやろう、ワシの心を読んでみよ」(小声)


 俺は言われるがままラムじいさんをアナライズして心を読んだ。

 「……なるほど、そういう手もあるか」


 「まあ、後でまた会えるじゃろう、道中気をつけてな」


 ……俺達はラムじいさんと別れ、少し港町を観光した後、カイエル城へ向かってまたマイクロバスを走らせた。



 あれから半日かけ、俺達はとうとうカイエル城へたどり着いた。


 「はあ~これがカイエル城か……」

 ファルセイン城より一回り大きく、装飾も豪勢だ。

 さすがは王族と騎士の国ってとこか。


 城門まで来ると、門番の騎士が俺達に近づいてきた。

 「あなた方が『異世界あいどる24』の方々ですね、お話は伺っています、どうぞお通り下さい」


 言われるがまま門をくぐる。

 「ほえ~広いな……そして綺麗だ」


 城内もその名に恥じぬ豪華ぶり。一体いくらかかっているんだろう……

 そのまま直進し、また大きな扉の前へ、おそらく王の間だろう。


 ゴゴゴゴ

 扉を開けるだけですごい音……


 かなり広い空間に、五人の騎士と、大臣と思しき老人が立っていた。

 「よくぞまいられました、カイエル王はこの奥におられます」


 五人の騎士たちが俺達の方を睨みつけてきている……っていうか、トカゲやサメみたいな顔した人がいるー?

 「驚いているようですね。彼らは『カイエル宮廷五獣士』。

 このカイエル最強の騎士達であり、全員が千迅騎士でもあります」


 五人とも千迅騎士!?ファルセインですら二人だったのに……


 「世界最高の錬金術師アルケミスト、『Dr.ナマズエ』が開発した『獣魔融合システム』により、獣の力をその身に宿した魔強化人間エンハンサーなのです」


 なんだそりゃ……魔法なのか?科学なのか?


 「Dr.ナマズエはこの世界で『魔法』と『科学』の融合を目指しているそうです」

 んーどっかで聞いたことがあるフレーズ……


 その時、いつもはニコニコしているアルケミストのシイナが、真剣な眼差しになったのを俺は見逃さなかった……

 「シイナ……?」

 「申し訳ありませんマスター、今度必ずお話しします、今はそっとしておいてください」

 「わかった」



 宮廷五獣士の自己紹介が始まった。

 「オレは蜥蜴騎士リザードナイト、チカラ勝負には自信があるぜぇ」

 「あたいは隼騎士ファルコンナイト、素早さに自信ある人、いるかしら?フフフ」

 「我は鮫騎士シャークナイト、水中なら無敵の魔導士サメ」

 ……語尾に「サメ」をつけるのが口癖らしい。

 「……ワタシは蟷螂騎士マンティスナイト、蟷螂拳の使い手です」

 「そしてオレは宮廷五獣士のリーダーをやっている獅子騎士ライオンナイト、ガーマイン』だ」

 そのガーマインの横に普通に生きたライオンがいるんですけど⁉


 「お前たちの噂は聞いている、あのメギード皇子と互角の戦いをしたそうだな」


 イヤイヤイヤ、圧勝ですよ、圧勝。まあ、公にはそう言えないけどね。

 ふむふむ、爬虫類に鳥類、魚類に昆虫、最後に哺乳類の最強種か……両生類がいないのが気になる。


 「いずれ俺達とも戦ってもらいたいものだ、期待している」


 俺は密かにアナライズしてみた……


 「あのトカゲ顔の騎士、チカラだけならメギードよりも上だ。

 あっちの羽の生えた女性騎士も、機動力の数値が桁違い」(小声)


 あのライオン顔の騎士に至っては、全てのステータスがメギードより上……すげぇな。しかも横に従えているあのライオン、『獅子座レオのゾディアックビースト』だ。


 「レオ、アサルトモード!」

 「ガウッ!」

 横にいたライオンが光ったかと思うと、黄金の金属の体に変身して、

 あのガーマインってやつの鎧になっちゃった⁉


 ゾディアックビースト……普段はただの動物と変わらないが、所有者の『アサルトモード』の掛け声により、専用の兵器へと変貌する。

 「獅子座のアサルトモードは鎧か……」

 「ほう、ゾディアックビーストの事は知っているようだな」


 ……ってか千迅騎士以上の実力を持ちながら、ゾディアックビースト持ちって、どんだけ強いんだよ?


 大臣らしき人が続けて話す。

 「ガーマイン様の異名は『万嶺騎士テンサウザンドナイト』。

 正式にはその称号はありませんが、それに見合う実力を持つお方でございます」


 万嶺騎士か……あのメギードの十人分、できれば戦いたくはない……かなぁ。


 「しかも現カイエル国王陛下のご子息でもあられます、失礼の無いよう……」

 またか……どこの国も国王の息子は千迅騎士って決まってるのかな?



 「ではそろそろ、カイエル王にご挨拶を……」

 そういわれて俺達はさらに奥へと進み、カーテン越しの玉座の前まで案内された。


 俺達はおそらく王が座っているであろう玉座の前で、片膝をついて恭順の意を表した。


 「こちらにおわすお方が騎士国カイエルの現王、『ラーマイン・ヴォル・カイエル陛下』であらせられます」

 一番奥のカーテンが開き、カイエルの王様が姿を現す……


 「……!?ラムッ……」

 全員思わず口を手で塞いだ

 つるピカの頭にちっちゃいカラダ……そこに座っていたのは、カイエルの港で出会った『ラムじい』だった。

 「あの爺さん、只者ではないと思っていたけど、まさかカイエルの王様だったとは……」(小声)


 「フォッフォッフォ、遠路はるばるよく来たのぉ」

 「はい、ありがとうございますカイエル王」


 「おぬしたちの事はファルセインのメギード王からの招待状で聞き及んでおる。

 ファルセインの王政と色々あったようじゃが、最終的には指南役として立て直したようじゃの」

 「いえ、私は本当に指南をしただけで……実際は特命大臣や現実世界の知り合いがほとんどやってくれました」

 「フォフォフォ、まあそれだけ人脈もあるという事じゃのぉ、素晴らしいことじゃ」



 アンズがまるで憧れのアイドルを見るような眼差しで王様を見てる……

 よほど凄い人なんだな、きっと。

 

 「おぬしが宝林寺活人拳の使い手、『アンズ』じゃな……噂は届いておる」

 さすがの王様もアンズの視線に気づいたか。


 「今まで数名の実力者に、ワシの『活殺拳』を伝授しようと試みたが、全てを会得する者はおらんかった……

 その若さでそれほどの才能、おぬしならワシの『双林寺活殺拳』も会得できるやもしれんな」


 「ほ、本当ですか?恐縮です……

 今や伝説となった『双林寺活殺拳』、私も体得してみたいです!」


 「ワシの技を体得したいのなら、その実力もさることながら、まずワシの目にかなわなければならぬ……おぬしにその覚悟があるかのぉ?」


 「はい、あります」


 「フォフォフォ、ギガンティックマスター殿、そこで提案じゃ。

 実は丁度明日からここカイエルでは、『カイエル四天王戦大会』という武闘大会が開催される」


 「『カイエル四天王戦大会』……?」


 「まあ国民からするとお祭りのようなものじゃが、ワシら王政からすると、騎士団の強さの誇示や、他の強者の発見などを兼ねる大会となる」


 なるほど、しかもこの大会で騎士に憧れさせることで、騎士専門学校も儲かると……一体一石何鳥になるんだ?


 「一年に一回の開催で、今までの大会では宮廷五獣士が全て圧勝してしまいつまらなくてのぉ……おぬしたちで大会を盛り上げてほしいのじゃ。

 そうすればおぬしたちやアンズの実力も知れて、この国にとっても都合がいいのじゃが」


 千迅騎士が五人……ほとんど反則、そりゃそうだろうね。


 「勿論優勝したあかつきにはおぬしたちの欲しい物を賞品として進呈しよう、どうじゃ?」

 おっと、それは願ってもない。


 「ちなみに、欲しいものはなんじゃ?」

 「この国の港に船を停泊できる停船権と、中央島まで航海可能な頑丈な船、それに中央島までの航路に詳しい腕利きの操舵士を希望します」


 「はっきりと決まっておるのじゃな……いいじゃろう約束しよう」


 「ありがとうございます、わかりましたお受けします、王様」

 俺はカイエル王の頼みを聞くことにした。いいレベルアップの修行にもなるしね。


 *****


 その後俺たちは、カイエルの高級宿泊施設に泊まらせてもらい、疲れを癒した。


 早速明日が大会の予選らしい、本戦と決勝は明後日になる。

 場所は『カイエルコロッセオ』という闘技場で行われるそうだ。


 俺は試合に出場する選手を選抜することに。

 「まず一人目は、あの蜥蜴騎士に対抗するため、うちで一番の腕っぷしメンバー『ライカ』」

 「はいはーい!」


 「二人目はあの隼騎士のスピードに対抗して、うちのスピードスター&高レベルの『マキア』」

 「はい」


 「あと三人目と四人目だけど……」


 メンバーの中から手が上がった。

 「マスター、ボクを使ってください、お願いします」

 「ふむ、あの王様にいいところを見せたいんだな……いいだろう三人目は『アンズ』だ」

 「ありがとうございます」


 「はい、はい、はーいぃー!」

 またメンバーの中から手が上がる……アンジュだ。


 「アンジュ、お前出場したいのか?」

 「はいぃー、フフフ実は新技を開発しまして」

 「おお、新技!?いいだろう、四人目は『アンジュ』で決まりだ」


 出場する四天王は決まった。


 「私に任せておいてください!あのトカゲさんギッタンギッタンにして、

 尻尾をちょん切って丸焼きにして食ってやりますよ!」

 おおーライカ、頼もしいな。


 「私も隼騎士のあの羽根を全部引き抜いて、みんなの防具の飾りにしてやります」

 マキアもいいねー期待してるぞ。


 「よーしみんなで円陣組んで気合い入れだーいくぞー!」

 「えいえいおーー!」


 *****


 そして次の日

 カイエルコロッセオで大会の予選が開催された。


 「では出場者の皆さんはこちらへどうぞ」

 案内役の人に連れられて、総勢二十名近くいる出場者たちは会場の中央へ。


 だだっ広い会場の周りには客席があるが、人は誰もいない。

 「この予選ではコロッセオに観客は入れません。本戦と決勝の時のみとなります」

 へーそうなんだ。


 「この予選は『バトルロイヤル方式』となっております。

 共闘するもよし、一対一で戦うもよし、ご自由にしてかまいません」

 バトルロイヤルか……全部で五チーム、相手は二十名ということになる。


 「制限時間は三十分、最後に残っていたチームの勝利となります」

 「マスター、作戦はどうしますか?」

 「んー、今回はお前たちは休んでいてくれ」

 「えっ」

 「俺一人で行く」

 「ええー!?」


 俺は一人、対戦相手たちがいるほうへ歩き出す。

 すると向こうから、煌びやかな装備を身に纏った『ザ・貴族』さまが近づいてきた。

 「私は『サイキョー貴族チーム』のクリス・シ・バイタル伯爵というものだ」


 そのネーミング……センスなさすぎ。

 そのシバイタル伯爵さまがコソコソ耳打ちしてきた。

 「ワザと負けてくれたら、優勝賞金の半分をやるぞ、どうだ?」(小声)


 「あ、いや、結構です」


 「くっ……しょうがない、ならば金にものを言わせて手に入れたこの最強の装備で……」

 おいおい、自分で「金にものを言わせて」って言っちゃってるよ……大丈夫なのか?


 「フフフ、見せてやろう、この日のために購入した『レアアダマンタイト装備』と

 レアモンスターの数々を!」


 おおー凄いじゃんシバイタル伯爵、『レアアダマンタイトの剣』だけでも城が立つくらいなのに、相当な金持ちなんだな。


 シバイタル伯爵は他の出場者たちのところへ戻り、また耳打ちしている……

 「おい、あいつが今回カイエル王が特別枠で呼んだっていう『異世界あいどる24』だ……まずは全員共闘して、あいつを先に倒そう」(小声)

 全部聞こえているんですけど……


 全員武器を構えて俺の方を向く……

『むザイくん』が現れて戦いの合図を出す。

 「それでは『カイエル四天王戦大会』予選一組、戦闘開始します、死なないでくだサイ」


 「うおおおー」

 他の全チームが俺に向かって来た。


 「よーし、じゃあみんなうまく避けてくれよー」

 俺の前に魔法陣が展開する……『地』『地』『炎』

 「ボア・ギル・バーライン 爆ぜる火炎よ 消えない恐怖を敵に刻め 焼き払い 全てを焦土と化せ 焼夷属性ハイアナグラム『ナパームサークル』!」


 俺を中心に炎の渦が回転しながら広がっていく広範囲炎魔法!

 触れたら最後、その装備を燃やし尽くすまで消えない効果もつく。


 「うわあああー」

 「ぎゃああああー」

 会場中に悲鳴が響く……

 まあ火傷した奴は俺が後で治してやろう。


 「マスター、ノリノリですねぇー」(小声)

 「だね」(小声)

 ……アンジュ、ライカ、聞こえているぞ。



 お、さっきのシバイタル伯爵、俺のナパームサークル避けてるじゃん、やるねー


 「さすがはレアアダマンタイト装備、あと残ってるのはあんただけだよ」


 「く、くそー……こうなったら私の最大の奥義で!」

 シバイタル伯爵が剣を構えて集中する!

 「くらえ!アドバンスドアーツ『烈剣剛剣大斬剣』!」

 ……なんだそのネーミングは?


 「障壁属性ハイアナグラム『バリアウォール』!」

 ガキーーーン!

 「な、私のレアアダマンタイトの剣でも、斬れない!?」


 俺の前に魔法陣が展開する……『炎』『炎』『風』

 「リュー・ブリューレン・コート 炎よ 風を纏いて 轟となれ 我が敵を粉砕せよ

 爆轟属性ハイアナグラム、『デトネーション』!」

 俺の手の平から、衝撃波を纏った火球がシバイタル伯爵に向かって飛んでいく!


 「うおおおーー!対魔力結界!」


 おおーやるじゃんシバイタル伯爵、俺のデトネーションをほぼ無効化した。


 「ど、どうだ!私は対魔力結界には定評があるのだ」

 「じゃあこんなのはどうかな?」

 俺はバーストガントレットを構えて、詠唱を唱える……


 「炸裂拳・デトネーションブロウ!」

 炸裂に加えて、衝撃波を伴う拳撃!

 ガシャーン!!

 シバイタル伯爵のレアアダマンタイトの剣が粉々に砕け散った!


 「あ……やばっ、なんか、ゴメン」

 「ギ、ギブアップ……」

 「はやっ!」


 「勝負あり、勝者『異世界あいどる24』です!確認してくだサイ」


「やったー!」


 とりあえず予選は突破した。

 後は明日の本戦だ、


 *****


 「『カイエルコロッセオ』に御来場の皆様、大変長らくお待たせいたしました」

 おおー、公式の四天王戦になると、MCが付くのか。


 「予選を勝ち抜いた八組のチームの入場です!」

 わああああーー


 「では本戦第一回戦、『サイキョー魔導士チーム』対『異世界あいどる24』です」

 ……しかし、そのネーミングなんとかならんのかな?

 「わーー!いーぞー!やっちまえー!」

 こんなふざけた名前のチームなのに、結構人気あるんだな。


 相手チームからリーダーと思しき男が、こちらに向かって歩いてきた。

 「私はカイエル一の魔導士『ホンマーニ・エーヤンカ』、四重星魔導士クアトログラマーだ」

 うわぁ、この人絶対貴族だ間違いない。



 「私の最大最強無敵無敗のこの魔法で相手をしてやろう……逃げるなら今のうちだぞ」

 どっかで聞いたことあるセリフだな……


 「ではこれより『カイエル四天王戦大会』本戦一回戦を始めます!気合い入れてくだサイ!」

 「おおおおーーホンマーニ様ーやっちまえー!」


 「私とお前は同じ魔導士タイプ……先に魔法を放った方が有利だ!行くぞ!」

 ホンマーニの前に魔法陣が展開、『風』『風』『地』『地』

 雷系のクアトログラムか……

 俺の前にも魔法陣が展開、『炎』『炎』『地』『地』


 「右に雷電 左に閃光を持つものよ 空を裂き 大地を割れ 汝が名は轟雷

 千雷属性クアトログラム、『ギガボルト』!」


 「ジア・ガロン・デイス・ファー

 炎帝 炎竜 炎神 地の底より 力の根源よ吹き出せ!

 熱波属性クアトログラム『マグマオーシャン』!」


 ガガガガ!!

 ズズズ……


 「な、私のギガボルトが……打ち消された⁉」


 アナライズで相手の思考を読んで、対応する魔法で打ち消す……

 数々の戦闘を重ね、俺の反応速度も上がっている……『神の言霊』もあるしね。

 「『先読みのギガンティックマスター』っていう通り名もありだな……」(ニヤリ)


 「今度はこっちの番かな……

 俺の前に魔法陣が展開、『炎』『炎』『水』『地』

 「ヴァー・ギルゲスト・アル・ロージニー

 大地に衝動を 力と力の衝突を起こせ この地に怒りの衝撃を……」


 「えーと炎だから水と……え、詠唱がはやくて……間に合わない!」

 ホンマーニが焦ってる……

 「爆心地属性クアトログラム、『グラウンドゼロ』!」


 ドガガガガ!!

「ギャーーー!」


 俺の一撃で『サイキョー魔導士チーム』は全滅、うん快勝快勝。


 *****


 その後、準決勝の相手、『サイキョー海軍チーム』にも圧勝した俺たちは、そのまま決勝戦へ……

 相手は『宮廷五獣士』……やっぱりね。



 ☆今回の成果

  俺 新技『デトネーションブロウ』習得

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