第14話オッドアイズ

 アナタはアイドルに『頭なでなで』したことがありますか?……俺はある。


 村の入り口付近に行くと、村人たちと騎士らしきものたちが言い合いをしていた……


 「ここにギガンティックマスターがいるというタレコミがあったでござる。

 隠し立てすると容赦しないでござるよ」


 やたらでかい男が一人と、小さい男が一人、その後ろに二十名ほどの騎士達がいた。どうやら俺がここにいるという事をチクった奴がいるらしい。


 「俺に何か用か?」


 「やはりここにいたでござるか!それがしらはこの近くで遠征をしていた騎士団でござる。帰りの道で旅の旅団に出会い、ギガンティックマスターらしき男がこの村を出入りしていると聞いてやってきたでござる」


 なんだその旅団って……怪しすぎるだろ。

 「お前の噂は聞いている。王政内でも、発見次第連行するよう言われているでござる」

 「やなこった、ベロベロバー」


 「うぬ~貴様~

 それがしの名は『百戦騎士 モチツキのベンケイ』でござる」


 「……ボクの名前は『百戦騎士 呟き(つぶやき)のジロウ』……」(小声)

 声小っさ!


 「地脈を操り、通常の五倍の威力を出せるそれがしの『地脈のハンマー』で、貴様等全員ぺしゃんこにしてから王都に連れて行くでござる」


 あのハンマー、あれがあれば丸太の壁も簡単に、しかも誰でも打つことができるかも……

 「あのハンマー……欲しい!」


 ギュピ―ン!俺の目が光る。


 「マスター、また悪い癖が……」

 マキアも呆れてる。


 「よし、出番だ『異世界あいどる24・オッドアイズ』!」

 「はっ!」


 『オッドアイズ』……審判の塔で仲間にした災いの民と呼ばれていた四人に、俺が新しくつけた呼び名だ。このオッドアイズ達、実はかなりの拾いものだったかもしれない……


 この四人はそれぞれ、目の色に対応した属性を二つ、基本属性として備えている。(普通は一人一つ)つまり、得意な属性が二つあるってこと。

 これは戦闘においてもかなり有利に働くだろう。


 「お前達の力を見せてやれ!」

 「はい!」


 今は戦闘中だけど、オッドアイズの特徴をアナライズしながら説明しよう。

 まずは『リョウ』。

 「名前リョウ」「女性」「レベル31」「基本属性 炎・地」

 「HP160」「MP80」「腕力100」「脚力65」「防御力80」「機動力85」「魔力65」「癒力45」「運60」「視力1.2」

 槍技・キュウビ


 リョウのクラスは『ランサー』。

 審判の塔で百戦騎士ゴーガンが落としていった槍『床落とし』を今でも使っている。


 性格は真面目、超真面目、真面目過ぎ。

 見張りや荷物運びなど、人が嫌がる仕事を率先してこなす。


 「私がやれば、他の人がやらずに済みますので」

 ……サムライか、お前は!


 きっとストレスも溜まっているだろうと思い、酒場に誘ったら……

 「マスター、私には女としての魅力がないんでしょうかぁ~ううぅぅ」

 ……からみ上戸だった。


 「そんなことないよ、素敵な女性だと思っているよ」

 「ではなぜマスターは私に手を出さないんですかぁ?私ががさつだから~?うわーん」

 ……しかも泣き上戸だった。


 ……実はリョウの凄いところは、飲んだ時のことを全く覚えていないってことだ。

 「あ、マスターおはようございます、なんか今日はすっきりした気分なんです」


 んーまあストレス解消に、一週間に一回ぐらいは飲みに誘うことにするかな……


 現実世界の『天王寺 涼』は、若くしてあいどる24のセクシー担当。

本人にその気がないのがまたいい。ただいま急成長中の筆頭株!


 「フフフ、遠距離だからと油断しているでござるな」

 ベンケイの奴の相手はリョウがするようだ。


 「エクイップメントアーツ、『溶岩流』!」

 そう言ってリョウから離れた場所でハンマーを地面に叩きつけた。

 大地に亀裂が走り、リョウの真下から溶岩が噴き出てきた!


 「リョウーー!」

 「ハーハッハッハ地脈を操るこのハンマーなら、溶岩すらも自由自在でござるよ」

 「それは助かりました」

 そう言って溶岩流の中からリョウが出てきた!


 「なにー、でござる!」

 「この衣はマスターが作ってくれた『マゼンタイーグルの衣』。

 熱属性を吸収し、攻撃力に変えてくれるのです」


 「なんだとでござる?」


 「アドバンスドアーツ、『キュウビ』!」


 リョウの体から九本の炎の槍のオーラが飛び出し、ベンケイに突き刺さる!

 「グアアアァァーーーでござる!」


 スゲー、百戦騎士ベンケイを倒しちゃった……



 「『チェーンウィップ』!」

 バチィッ!

 「グフッ」


 おっと次は『マコト』。

 「名前マコト」「女性」「レベル31」「基本属性 水・風」

 「HP120」「MP90」「腕力75」「脚力95」「防御力70」「機動力110」「魔力80」「癒力45」「運55」「視力2.0」

 特殊技・逃げ霧

 三重星魔術・スタンピード


 審判の塔でも活躍した、博多弁を話すマコトのクラスは『ビーストテイマー』。

 マコトが使役するビーストは、能力が二倍になるらしい。


 性格は天然。博多弁とも相まってメンバーのマスコットキャラになりつつある。


 現実世界の『今 真琴』は、あいどる24の動物大好きっこ。

 若いのに言いたいことをズバズバ言うのは、果たして天然か?計算か?……


 「くそ~こうなったら五人がかりで囲め!」


 「よかと~?うちにばっかり構うとって……さあ、ベロスちゃん出番ばい、行っけー!」


 「ワンワンワン!」


 「なんだ~?この犬っころ、オレさま達とやろうってのか?ハハハ」


 「ワンワン!、ウ~……ガオオォォ――ン!」


 「うわあ、こ、こいつ『地獄の番犬 ケルベロス』だー!」


 「ベロスちゃん、『獄炎のブレス』!」

 「ギャアアアー―!」


 マコトとベロスが大分騎士達を引き付けてくれた。


 お次は『スミレ』。

 「名前スミレ」「女性」「レベル30」「基本属性 風・炎」

 「HP105」「MP100」「腕力65」「脚力60」「防御力60」「機動力80」「魔力100」「癒力110」「運60」「視力1.2」

 基礎星魔術・ヒーリング


 基本はヒーラーだが、魔力も高め、でも攻撃魔法は持っていない。


 母親から貰った魔導書を今も大事に持っているのだが、そこに書かれた魔法や技だけは何故か使うことができる……が、どこに何が書かれているか覚えられないらしく、いつもアワアワしてた。


 現実世界の『早乙女 菫』は、エレガントさと力強さを併せ持つ逸材。

 アイドル特有のあざとさが印象的で、俺は勝手に『あいどる24のあざとい女王』と呼んでいる。


 「よし、まずはこのヒーラーを先にやっちまおう!」


 「フフフ、私をただのヒーラーだと思わないで下さいね……赤い付箋の22番!

 赫き炎の精霊よ 爆炎となりて 敵を焼き尽くし給え 炎の渦よ 舞い上がれ 炎属性アナグラム『パイロバーン』!」

 「ぎゃああーー!」


 現実世界の最高アイテムその④『付箋』。

 魔法の属性別に色分けした付箋を付けただけで、全然迷わなくなった。

 付箋スゲー


 最後は『カスミ』。

 「名前カスミ」「女性」「レベル30」「基本属性 地・水」

 「HP190」「MP75」「腕力20」「脚力20」「防御力350」「機動力20」「魔力20」「癒力20」「運25」「視力0.5」

 防御技・絶対防御鉄壁

 防御技・絶対零度氷壁


 ステータスを見たらわかる通り、ほとんど防御に全振りしている。

 クラスは『シールドマスター』。


 アナライズするとわかるのだが、審判の塔の時以来ずっと俺に好感を持ってくれている。

 現実世界でこんなにモテたことがないので、正直戸惑っている。


 現実世界の『一条 香澄』は、小顔で目鼻立ちくっきりの美人さん。

こんなに可愛いのに、気取らない飾らない性格は奇跡だと思う。


 「……『バーストロア』」(小声)

 「うわあぁ!このジロウってやつ、声が小さすぎて何の魔法かわからない!以外に厄介だな」


 「マスター、右手の小指に傷が……」

 「ああ、今の魔法がちょっとかすって……」


 「……てめぇ、マスターになんてことしやがる、覚悟はできているんだろうな?」

 もしもし、カスミさん……?あの、変わりすぎでは……?


 「アドバンスドアーツ『絶対零度氷壁』!」

 「……!?」

 百戦騎士のジロウの体を巨大な氷塊が包んでいく!


 以前百戦騎士アイアスが使った『永久凍土の盾』は氷塊で自分を包んで守ったが、この『絶対零度氷壁』は、相手を閉じ込めて動けなくすることもできるのか……


 「これでもくらえ!アドバンスドアーツ『絶対防御鉄壁』!」

 ヒュ~~……キラーン

 ジロウの足元から巨大な鉄の壁がジロウに直撃!ジロウはそのまま吹っ飛んで星になった……


 「マスターやりました!」

 カスミが近づいてきて褒めてくれるのを待ってる……

 何かあるといつも俺はカスミを頭なでなでしてあげている。

 「エヘヘ……ありがとうございます」


 気が付けば百戦騎士達率いる騎士団は、全員オッドアイズが倒していた……


 *****


 ◆場面は『何もなき村』の外れの崖の上……

 二組の影が、百戦騎士達とオッドアイズの戦いを見て会話を交わす。


 「百戦騎士達に様子を見に行かせて正解だったな……相当な手練れだ。

 正攻法では分が悪い、やはり『夜襲』をかける必要がある……準備しろ」

 言われてもう一つの影が瞬時に消える……


 *****


 〇百戦騎士たちとの戦闘から一夜明けた、名もなき村……

 一応襲ってきた百戦騎士達の処遇を決めた。


 「とりあえずお前達はこの村で監禁させてもらう、王都へ戻って、俺の居場所がバレると色々面倒だからな」


 「監禁って……これのどこが監禁でござるか?」


 まあ監禁と言っても装備を解除して、魔法が使えない特殊な契約を交わしただけだけど。

 「別に俺たちはお前達に恨みがあるわけじゃないしな、外にさえ出なきゃ、特に制限はかけていないよ」


 アナライズもしたけど、観念してるし、悪さをする気もないようだ。


 「寝るとこは用意してある。食事や買い物なんかは自由にしていいから、贅沢したかったら働いて稼げ、じゃあな」

 俺は二人を残し、村復興計画の指揮に戻る。


 「……ギガンティックマスター、王政から聞いた情報とは少し違うようでござる」

 「……」

 「ジロウ、少しは何か喋るでござるよ」



 ◆場面変わって ファルセイン城会議室


 王らしき人物の横の席に、ヴァイガンが座っている。

 「定例会議を始める」


 「陛下、殿下は?」

 「あやつには知らせておらぬ、あやつは余の息子だが、頑固で融通が利かぬ、王政が王国民の奴隷を斡旋しているなどと知ったら何と言うか」

 王は目を瞑り頭を抱えている


 「審判の塔ではギガンティックマスターもその四天王達も取り逃がしたと聞いたが……?」

 「いえ、あのクエストも情報を得るためのものです。

 気絶したふりをしていた百戦騎士エリアから、ジャッジメントドラゴンやギガンティックマスターの貴重な情報を得ることができました」


 「そうであったか」


 ファルセイン王は急にモジモジし始める……

 「ところで……」


 「はい、大丈夫でしょう。今ここには作戦の内容を知っている私の側近のみ、気遣いは不要です」


 「そうか!いやー王というのも疲れるのぉ、最近は肩も凝っていかん」

 王の顔がパアーっと晴れる


 「そう言えばあのギガンティックマスターの四天王達はみな美しかったなぁ……あーゆー女達とあんなことやこんなことをしてみたいのぉ」


 「私の計画通りに行けば、それも叶います」

 「まことか!それは楽しみじゃのぉ」


 「恐れながらその前に、この計画を実行するために王にやっていただく事がございます」

 「なんじゃ?」


 「王位を、殿下にお譲り下さい」

 「なんと、余に王位を降りろと申すか!」

 「その通りでございます」


 王は立ち上がり、ヴァイガンを睨みつける……

 「……計画の内容を、聞こうか」


 「はっ、私には切り札として『反射属性魔法グラムレフ』がございます。

 この魔法は、相手が使う魔法がクアトログラム以下の魔法であれば、無条件で、確実に跳ね返すことができる魔法です」

 「ほう」


 「あやつはここぞという時に必ずクアトログラムのギガンティックフレアを使います。

 自慢のギガンティックフレアを自分で受け、あれだけの火力をレジストするとなると、さすがのギガンティックマスターでもかなりの魔力を要するはず……

 その隙に私のアドバンスドアーツ『転魂術』で、あやつの体と王の体を入れ替えます」


 「……なるほど、そうすれば余はギガンティックマスターとなり、あの四天王達とイチャイチャでき、真なるギガンティックマスターは、悪王の名のもと追放か、はたまた処刑か……」


 「はい」


 王は後ろを向き、しばらく考えた後、振り向き話す。

 「ヴァイガン、お前の計画を実行に移すのだ……ぬかるなよ」


 「はっ!」



 ☆今回の成果

  オッドアイズ カスミ(30)装備 タングステンの盾 メタルマターメイル

  オッドアイズ リョウ(31)装備 床落とし マゼンタイーグルの衣

  オッドアイズ マコト(31)チェーンウィップ シノビ装束

  オッドアイズ スミレ(30)魔導書 高魔導師のローブ

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