名もなき村編

第13話闇オークション

 アナタはアイドルを『落札』したことがありますか?……俺はある。


 「俺」、二十五歳、”元”時給制契約社員、アイドルオタク。

 ゲーム中に寝落ちして異世界へ転移し、あいどる24そっくりの女の子たちと異世界を冒険中。


 初めてこの異世界に来てからそろそろ二カ月になる……

 俺の『異世界あいどる24』も新メンバーが揃い、総勢十五名と一匹、大所帯になってきた。


 今日も俺は異世界『ファルセイン王国城下町』の『やんやん亭』で、新メニュー『たいやき』を食べながら、新しいクエストなどのチェックをしている。


 そこへ初期生(ファースト)のアンジュが、息を切らせて駆け込んできた。


 「マ、マスター!大変ですぅ!」


 「どうしたアンジュ、そんなに慌てて」


 「現実世界の家に侵入者ですぅ!今ベロスちゃんが牽制していますが、全く止まる気配がありません」


 「ふむ……そいつの特徴は?」


 「丸くて、黒くて……部屋の中をくまなく調べているようでした」


 俺の脳裏には、その黒くて丸い物体と戦っているベロスの雄姿が思い浮かぶ……


 「アンジュ、それはこの間購入した『ロボット掃除機』だな、きっと」


 「え……そうだったんですか、で、でも、その奥の部屋で声も聞こえたんですぅ!」


 「それは何て言ってたんだ?」


 「んー確か、『ヘヤノクウキハキレイニナリマシタ』とかなんとか……」


 「アンジュ、それもこの間購入した『空気清浄機』だな、きっと」


 ……とまあこんな感じで毎日楽しく冒険&生活している。


 最近はみんな異世界での冒険の合間に、現実世界で自分の好きなことをやり始めた。


 マキアは審判の塔での吟遊詩人シシファの歌の影響を受け、現実世界で『ボイストレーニング』に通いだした。

 あの容姿で歌まで歌ったら、もうアイドル以外の何者でも無い。


 ミユキは現実世界の料理に興味があるらしく、『料理教室』に通ってる。

 ……ちなみに得意料理はいまのところ『豚汁』らしい。


 セカンドシスターズのリイナは、毎日図書館へ入り浸っている……日本の政治や歴史に興味があるそうだ。


 あと、アンジュとマコトが回転寿司で目を回したことは内緒だ。


 そうそう、難民だった『ナイトメアウェイカー』たちの、全員の実家を調べて訪問してみた。

 家族がいた子もいれば、いなかった子も、いてももう戻れないという子もいた。

 ただありがたいことに、みんな総じて俺の『異世界あいどる24』に残ってくれることになった。


 そして『やんやん亭』を出て、今俺は奴隷市場に来ている……新メンバーを探しに来た。

 でも店は閉まってる……店主の部下が一人いるだけだ。


 「店主はどうしたんだ?」


 「申し訳ありません、奴隷市場は閉店いたしました、店主は旅に出ると言ってました」


 へえ~俺に嘘ついても無駄だよ。アナライズ!

 (……ここじゃあギガンティックマスターがいて商売にならないから、密かに闇オークションで奴隷を仕入れに行ったってことは内緒だ)


 「なるほど、闇オークション……そんなものがあるのか」


 「えっ?なんでわかったんですか?」


 「企業秘密だよ」


 そう言って俺は闇オークション会場の場所を聞き出し、マキア達と向かうことにした。


 会場は意外にも城下町の外れ、スラム街と言われる地区の地下深くにあった……

 中に入ると、高価な身なりをした貴族っぽい人達が数名椅子に座っていた。

 前にある舞台にスポットライトが照らされる。


 「皆様よくお越しくださいました、これより最初のオークションを開始いたします」

 歓声とともにオークションが始まった。


 出品物は『妖精』だったり、『レアモンスター』だったり、『呪いの武器』だったり……通常のオークションではまず見ない、いわくつきのモノばかりだ。


 そしてオークションも終盤に近付いてきた頃……

 「さあ、皆様お待ちかね、今回の目玉商品、『亜人・エルフの女性奴隷』です」

 エルフ……ファンタジーの世界ではもう常連中の常連種族、森に棲み、魔法と弓が得意な種族ってイメージだけど……


 「マキア、この世界には他の亜人もいるのか?」

 「ええ、人間のテリトリーではあまり見かけませんが、他にも『ドワーフ』『人魚』『ライカンスロープ』など多種にわたる亜人達が存在します」


 小さな檻の中に閉じ込められ、登壇したその女性は、あいどる24『森埜 天音』そっくりの子だった。


 現実世界の『森埜 天音』は、アイドル界一の鉄道オタク。

鉄道のことは彼女に聞こう。天然で真面目な性格は好感度高し。


 「さあ、人間の世界では珍しいエルフの女性奴隷です。まずは銀貨100枚から!」

 「110枚!」

 「150枚!」

 どんどん値段が跳ね上がっていく。


 「200枚!」

 「えーい、300枚だ!」

 「300枚出ました!他にいませんか?」


 「500」

 「500が出ましたー」


 俺の体感だが、セイン銀貨は現実世界のお金に換算すると、だいたい1枚5000円くらいだと思う。

 最初にマキアを買ったときは10枚だったから、5万円ぐらいってことになる。


 今回の500枚は換算すると250万円くらいだ。

 「500か、500はさすがに……」

 500って言った、シルクハットをかぶった男がドヤ顔してる……


 「1000枚」

 「!」

 ザワザワ……

 今1000枚って言ったのは俺だ。あの子は絶対に俺が買う。


 「くっ……せ、1200!」

 シルクハット頑張るねー

 「1500枚」

 「おおー、ザワザワ……」

 「おのれ……せ、1550だー」


 「あーもう面倒くさいな、5000枚」

 「!!!」

 「ご、5000枚出ました―――落札です!」

 シルクハットの奴が泡拭いて倒れてる……


 5000枚ってことは換算すると2500万円くらいか……さすがにやりすぎたな。


 この後『エルフ』以外にも三名、亜人を購入した。

 それぞれあいどる24『潮見 茉莉音』にそっくりな『人魚』。

 あいどる24『真納 姫乃』にそっくりな『ドワーフ』。

 あいどる24『玉崎 ララ』にそっくりな『ライカンスロープ』。


 異世界でのお金はほとんど使っちゃったけど、俺には現実世界のお金がまだあるし、こっちのお金もまた稼げばいい。

 今は『アマネ』『マリネ』『ヒメノ』『ララ』を手に入れることができたことを素直に喜ぼう。


 「我が名において命ずる、汝に名を与え我に隷属せよ、汝が名は『アマネ』『マリネ』『ヒメノ』『ララ』」


 「あの、ご購入していただき、ありがとうございます」


 「警戒する必要はない、俺はお前達を奴隷扱いするつもりはないから。仲間として、俺の『異世界あいどる24』に入って欲しい」


 こうしてアマネ達を仲間にして、オークション会場を出ようと思ったら……あれは奴隷市場の店主だ。


 「くそっ、折角珍しい亜人の奴隷を仕入れできると思ったのに……またもやギガンティックマスターめ」


 「やあ店主。久しぶり」


 「だ、旦那様!?ハ、ハハハ。今回も大活躍でございましたね」


 「ああ、アンタのお陰でここの場所もわかったしな、感謝しているよ」


 「は、はあ……」


 「ところで、俺の目的が女性奴隷や盗賊や人さらいの根絶だって知っているよな?」


 「は、はい」


 「なのになんでアンタを野放しにしていると思う?」


 「えっ、それは……?」


 「アンタを野放しにするおかげで、女性奴隷の仕入れ先を知れたり、殺し屋や盗賊が俺を襲いにくるから返り討ちにできる、助かっているよ」


 「くっ、ううぅぅ……」


 「これからもよろしく頼むよ、店主」


 そう言って俺たちは会場を出た。会場の外からでも店主の心は読める、どうやら部下を呼んだようだ。


 「おい、『レイブン』を呼べ」


 「!『レイブン』……大陸一の殺し屋と呼ばれるあいつを……ですか?」


 「そうだ、あいつならきっとギガンティックマスターを殺してくれるだろう……」


 俺たちは会場を後にした。

 「大陸一の殺し屋、『レイブン』か……」


 *****


 俺はアマネ達に故郷の事を聞いてみた。

 「私達の故郷はここより北西の方角にある『名もなき村』……そこは周りのいくつかのの亜人達が集まって暮らす小さな村でした」

 「亜人達が集まって暮らす村か……」


 「私は一年前、友達と遊んでいた時に野盗グループに捕まり、そのまま連れて行かれました」

 亜人は珍しいからか、それとも最初から狙って……?


 「それから少しして、私の家が何者かに火を付けられ、家族全員が殺されてしまったと聞きました」

 「そうか、辛い記憶だったろう……すまなかった」

 「いえ……野盗グループは私とその友達をグループの殺し屋として育てようとしていましたが、私はずっと拒否していたので……」


 「それで闇オークションで売られていたのか」

 「はい」

 ……使い道が無くなったら売り飛ばす、野盗の考えそうな事だ。


 「私は、家族を殺した犯人を見つけるのもそうですが、野盗グループにまだ残っている友達の事も心配なのです」

 「なるほどわかった。何かわかったら、すぐお前に知らせよう」

 「ありがとうございます」


 「ところで、その名もなき村ってのはどんな村なんだ?」

 「村長は人間の方なのですが、亜人と人間が共存する町を作るのが夢だったそうで」

 そんな面白そうなことを考える人間がいるとは……


 「どうやら亜人達の奴隷は、その村から仕入しているようだな」

 俺はそこがどんな村なのか見てみたくなった。


 「お前の事を心配している人がいるかもしれないし、俺も興味がある、ちょっと行ってみようか」

 俺はマキア達とアマネ達を連れて名もなき村へ行くことにした。



 名もなき村はファルセイン王国から北西へ、山と川を一つ越えた場所にあった。

 以外に近いな……

 「ここから西にいくと、私の故郷『遊牧民ユグド』の村に。

 さらに北上すると『魔導連邦サザバード』の国境にでます」

 そう言えばこっち方面はライカの故郷の方だったな。


 名もなき村を外からパッと見た印象……脆そう。

 特に外壁や堀みないなものも無いし、建物も質素なつくり、まさにスラムのようだ。


 「みんなちょっと提案がある、この村が野盗に襲われたらどういうリアクションするのか見てみたい。野盗のふりをして入ってみようと思う、アマネ達は後ろに隠れていてくれ」


 俺達は野盗のふりをするため、それっぽい格好とそれっぽい顔つきで、村へ入っていった。


 「オラオラ!てめえら命が惜しけりゃ金目のものだしやがれ!」

 おおーマキア、スゲーな


 「……ここには金目のモノなんかありませんよ、みんな盗賊が持って行ってしまった」

 「じゃあ若い娘を出せ!奴隷にしてうっぱらってやるからよ」

 スミレ、あなた本当についこの間まで奴隷でしたっけ……?


 「!……若い娘……なんていませんよ、それも全部盗賊が……」

 と言いつつ、村人全員の目が一か所に集まった。


 「はいストップ、ストーーップ!」

 とりあえず俺が両手を上で振ってみんなを止めた。


 村人全員キョトン顔。


 「ダメ、全然ダメ。若い娘の居場所もろ分かり、演技下手すぎ」

 俺は村人達の目線の先、小さな物置みたいな建物に入ってみた……ほらいた。


 中にはいろんな種族の亜人の若い娘達が、怯えながら隠れていた。

 「こんなとこにいたら、さらってくれと言っているようなもんだ」


 これは想像していたより相当ひどい状況だな……まずはアマネを通して、村の村長に合わせてもらう。

 

 「私が村長です」

 出てきたのは人間のおっさんと若い青年。

 「こっちは息子の『バグ』と言います、いつもは食糧確保のため森に入ってます」


 バグ……ゲームとかのプログラムで、誤りや欠陥の事を『バグ』って言うけど……なんか関係あるのかな?


 「この村は先代、つまり私の父親が、亜人達との共存のために作った村でして、

 盗賊達にここの存在を気付かれるまでは、みな平和に暮らしておりました」


 村長に続いて、そのバグって青年が話し出す。

 「数年前、『羽人ハネト』という有翼の亜人から裏切り者が出まして、そいつを勘当してから盗賊に襲われるようになりました……

 オレの勘ですが、そいつが怪しいと思ってます」


 「村長、率直に言おう、この状態では盗賊達に搾取してくれと言わんばかりだ。

 まだ若い娘も数名いるし、ここはアマネ達の故郷だ。何か対策を」


 「私達ではもう無理なのです、盗賊に金目の物はすべて奪われ、若い者もさらわれて……その日を生きるのが精いっぱいで」


 「そこで、この村の復興を俺達に協力させてもらえないか?俺は新しいメンバーもここで探してみたいし、亜人達にも興味がある」


 「それは願ってもありませんが……よろしいので?何も報酬は払えませんよ?」


 「構わないよ、さっきも言ったけどここはアマネ達の故郷だ。ここを亜人達の楽園にしたい」


 さて、協力するとは言ったけど、問題は山積みだ。

 問題は大きく分けて三つ。

  ①村の防衛力強化

  ②その日の食糧とこれからの収入

  ③他の亜人奴隷達の解放

 他にも日々のレベリングや新しいメンバー確保なども続けるつもりだ。


 俺は異世界あいどる24のメンバーに指示を出す。

 「まずは村の防衛力強化とレベリング。初期生(ファースト)とシスターズはこの村のバグを連れて行って、一緒にレベリングしてくれ」

 「えっオレですか?」


 「そうだ、お前にはまずこの村の防衛の要になってもらう、目指せ打倒パラディン!」

 「いやいや、そんなの無理ですよ」

 「これから毎日、俺達のレベリングに付き合ってもらう、明日はナイトメアウェイカー達とね」


 「村の食糧はどうするんですか?」

 「それはカスミ達四人にやってもらう、いいな」

 「はい、お任せを」


 「あとカレン達は他の町や国に行って、奴隷になってる亜人達の救出を頼む。

 今あるお金とこれから稼ぐお金、すべて使ってでもいいから亜人達を購入しろ。

 それでもだめなら、多少強引な手を使っても構わない」

 「わかりました、任せて下さい」


 「アマネ達は俺と一緒に村の復興だ、まずは簡単に攻め込まれないように木の幹で壁を作ろうと思う、手伝ってくれ」

 「はい」


 異世界あいどる24、それぞれ役割をこなす。

 バグとマキア達は近くの山岳地帯でレベリング、時々山の方から爆発音と悲鳴が聞こえるが、きっと気のせいだろう……


 カスミたちは食料担当、カスミとスミレが森の木の実や野菜を、リョウとマコトは草原で狩り。

 草原に生息する『ボアモドキ』『魔牛』『ワイルドチキン』はそれぞれ現実世界の豚、牛、鶏にそっくりなのだ。


 カレン達奴隷解放組は、各地の奴隷市場、闇オークションなどを周り、一日で数名の奴隷を開放して村に連れてきた。


 各自優秀なのに、一番ダメなのは俺だったりする……

 木材は売るほどあるので、まず真空の魔法で木を切り倒し、壁にするものと売るものとに分ける。


 売るものの加工はアマネ達と村の住人達に任せ、俺は丸太を村の外側に一本ずつ刺していき、壁を作る。

 これが中々に大変だ。念動の魔法で運んで、重力魔法で刺すのだが、MPの消費が激しい上に、一本ずつしかできないし、そもそもこれは俺にしかできない。

 せめて丸太を打ち込む担当が一人いれば……


 そうこうしてる間に日は暮れて、メンバーも続々帰ってきた。


 「おかえり、お疲れだったな。夕飯できてるぞ」


 夕飯はミユキが腕によりをかけて作った……『豚汁』だ。

 「『ボアモドキ』の肉は現実世界の豚肉より少し固めだったけど、味は保証します、どうぞ召し上がれ」

 ミユキの言う通り、肉が少し硬いが、美味しい!異世界で豚汁食べられるとは思わなかった。


 ついでに現実世界の『ビール』も持ってきた。

 やっぱり仕事終わりはこれでしょ?俺は村のみんなに『かんぱい』を教え、ビールを配った。


 「ギガンティックマスター殿、この黄色い飲み物は一体何なのですか?上に白い綿がのっかってますが……」

 「綿じゃないよ、それは泡。まあ飲んでみてよ」


 ゴクゴクゴク……プハァ!

 「ううぅ、に、苦い!しかもこの泡……喉が破裂しそうです!」

 う~ん、異世界の人にはまだビールは早かったか……?


 ……なーんて言ってたのに、その二十分後。


 「ぎらんてっくますたー殿、この『びーる』というもの、飲めば飲むほろ、いい感じに、ヒック、なってきました~」

 おおー出来上がってる……もともとこの異世界にもお酒はあったが、蒸留の仕方が雑でとてもおいしいとは言えなかった。

 「今度ビールもやんやん亭におろしてみよう……」


 「ギガンティックマスターさん、あなたの四天王はどんな鍛え方をしてきたんですか!?」

 ……村長の息子バグが、泣きそうな顔で訴えてきた。

 「山岳地帯の危険害獣認定されている『ワイバーン』に、笑いながら斬りかかっていったんですよ!『とどめはバグさんね』って、何度死ぬかと思ったか……命がいくつあっても足りやしない」


 「お、じゃあ明日の夕飯はワイバーンの肉料理かな?」


 「イヤイヤイヤ、明日はオレが魔獣のエサになってますって!」


 そう言うバグは一日でかなりのレベルアップを果たしたようだ、このままいけば本当にパラディンに匹敵するかもな……

 俺たちは村の一角に住居をもらい、そこで寝泊まりすることにした。


 *****


 数日が過ぎた……メンバー達はそれぞれ成果を上げているのに、俺だけ進みが悪い。


 一応俺も、壁だけじゃなく他の復興案を色々やってはいる。


 まず電力。

 異世界のは必要ないかもしれないが、俺には大いにあるので、

 現実世界から『ソーラーパネル』と『蓄電池』を購入して、村に運び込んだ。

 なんせ土地も売るほどあるので、かなりの枚数設置でき、電力もこの村で俺が使う分くらいはすぐにたまった。

 余れば現実世界で売ることもできる。


 あとは農業。

 ミユキがここで料理をするので、色んな野菜や果物なんかがあると幅が広がるし、城下町で売って稼ぐこともできる。


 村の住人総出で畑を耕してるけど、さすがに重労働、なかなか進まない……これは魔法じゃ無理だしなぁ。


 そんな話を現実世界の弟に話してみたら、


 「耕耘機とか、田植え機とか購入すればいいんじゃない?」


 「それは俺も考えたけど、基本的にオルタナティブドアを通れるものしか持って行けないから、さすがに耕耘機は……」


 「うーん……だったら、メーカーに頼んでバラバラにしてもらいなよ。そして異世界の方でまた組立てればいい」


 「お前……頭いいな」


 「知ってる」(キラリ)


 弟が言った通り、耕耘機や田植え機を購入後メーカーに頼み込んでバラバラにしてもらい、それを一つずつオルタナティブドアで異世界に運び込んだ。


 運び込みさえすればこっちのもんだ。あとは念動の魔法で簡単に……

 あーこれって、俺が全部組立てなきゃならないのね。


 俺は耕耘機と田植え機の設計図を見ながら半日悪戦苦闘したのは言うまでもない。


 耕耘機と田植え機のお陰で、畑関連はあっという間に準備ができた。

 でも驚いたのはこの後。


 「あとは一年待つだけだな、収穫が楽しみだ」


 「あの……」


 「どうしたアマネ?」


 「私の魔法を使えばすぐに収穫できますけど……」


 「えっ?」

 そんな便利な魔法があるの?


 アマネの前に魔法陣が展開する……『光』『地』『水』

 「あまねく精霊たちに申し上げる 光 地 水に力の恩恵を 木々に活力を 森に実りを与え給え 森属性ハイアナグラム 『フォレストーション』!」


 アマネが魔法を唱えたとたん、畑に蒔いた種から芽が出て花が咲き、あっという間に実がなった。魔法スゲー


 「本来は身を隠すために、森の木々の成長を促進させ操る魔法なんです」


 これが光属性の魔法か……森の民と呼ばれるエルフは、最初からこの光属性の魔法を使うことができるらしい。

 人間達ではほとんど使えるものがおらず、亜人専用と言ってもいいくらい。

 俺も一応光属性は使えるが、こんな魔法があるとは知らなかった……


 「急速に成長させるので、品質は少し落ちてしまいますし、やはり使う度精度が下がっていきます」

 だよなー、そこまで万能ではないってことね、でも当面の食糧難はこれで回避できた。


 俺とアマネが畑で収穫を手伝っている時、村人が慌てて俺を呼びに来た。


 「ギガンティックマスター様、大変です!外に王国の騎士団が来て、ギガンティックマスターを出せと言ってます!」


 マジか?なんで俺がここにいるってわかったんだ?

 とりあえず行ってみよう、このままでは村に迷惑がかかる。



 ☆今回の成果

  『エルフ』のアマネ(25)が仲間に

  『人魚』マリネ(24)が仲間に

  『ドワーフ』ヒメノ(25)が仲間に

  『ライカンスロープ』ララ(24)が仲間に

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