【異世界ショートショート】甦る前世の記憶

畳01

思い出した前世の死に際の癖が強い

 今日は冒険者ギルドに行くんだと勢いよく椅子から立ち上がった瞬間立ちくらみがした。

 その時、私は前世を唐突に思い出した。


 癖が強い。


 思い出した前世が、死に際が、死因が、顔を覆い悶えてしまうほど癖が強い。

 恥ずかしすぎて消えてしまいたい。


 十五歳の女の子の私が立ちくらみのついでに思い出していい前世の記憶では無い。

 羞恥心に致死量があれば私はもう死んでいるだろう。


 私の前世は令和の時代の日本人でスケベな独身男性だった、それだけならまだ何の問題も無かった。


 どうもその前世の独身男性ヘンタイは心のスキマをいわゆるセルフプレジャーグッズで埋める性質が有ったようで、過酷なソロプレイ集vol.1みたいな要らない記憶の中でもダントツに恥ずかしい記憶が死に際だった。


 胡散臭い媚薬とエナジードリンクのカクテルを飲んでVRゴーグルでエッチな動画を視聴しながら乳首や下半身の前後にいくつものセルフプレジャーグッズをフル装備して逝ってんじゃねぇよ!第一発見者とか家族が困り果てるでしょ!!




「おっほぉ~出口が二つとも出入口になっちゃうの~」じゃねぇよ!出口で遊んではいけません!!


「しゅごい~白目剥いて動画が見れない~」じゃねぇよ!それ死にかけてんだよ!!



 魂にうっすらと残る前世の独身男性の自我が「もっときたかった…」とか言ってんじゃねぇよ!ダブルミーニングしやがって!!前世の記憶を思い出したせいで広がっていく私の心のスキマにミチミチと自我をねじ込むな!!



 私、恥ずかしいよこんな前世……






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