王都学園

第20話 一年ぶりは学園で

 王立学園は、王国各地から有力な女性を集めている。

 それは王国が女王制度をとっており、次の女王を決める方法がクイーンバトルという特殊な方法を取っているからだ。


 男性が少ない世の中で、強い王国を作るために考えられた制度であり。

 誰もが、憧れる女性を求めたからだ。


 クイーンバトルの応募には……。


 美しく。

 力強く。

 賢く。

 強い男性に愛された者と記されている。


 誰からも憧れるためには、見た目は大切であり、美しさは絶対条件だ。

 

 王国の女王には誰よりも強さを示す必要がある。

 決勝戦まで進む権力や、財力、人材力、体力、どんな強さでも構わないが、最後まで残って男性と共に強さを示さなければならない。


 政治、経済、外交、内政、女王に求められるのは人の気持ちをわかることではない。

 強い王国を作るために、賢く王国を発展させることができる知識である。


 最後に、女王になった後は子を成して王国を支える人材の育成が必要になる。

 その女王の治世がいつまでも続くように、繁栄をさせる伴侶が必要になる。

 それは強い男性であり、女王と共に生きていく者なのだ。


 全ての項目は王国の歴史に刻まれたものであり、品格と政治など強さ以外の分野でも必要な教養を勉強するために、強い女性たちは学園への入学を求められる。



 学園では、貴族や平民の垣根は存在しない。


 学園では等しく平等であり、強さと、魔術と、知性を持ってもらうため教師たちは平等さを重んじる。


 同年代の男性たちが共に入学してくることで、女性には将来自らが子を成したいと思う伴侶と出会うきっかけを持ってもらい。


 数が少ない男性は、より多くの女性と出会うことで、女性に対して慣れてもらうためにと考えられている。


「アンディ、そろそろ入学式だ。起きろ」

「うん? ああ、すまんなレオ」

「全く、お前はどこまでもだらけ切っているな」


 俺が考え事をして目を閉じていると、金髪金眼をしたイケメンの若獅子がこちらを見下ろしている。

 

 その表情はイケメンではあるが、気苦労をしていそうな溜息が吐き出される


「ふぁ〜、別に入学式などサボってもよかったのではないか?」

「何をバカなことを言っているんだ。王立学園は、この国で一番権威のある学園で、今日から俺たちも寮に入って学ぶのだ。そんな学園の入学式をサボれるはずがないだろ」


 真面目なやつだ。

 

「はいはい。レオが言うから参加してやるよ」

「お前は全く。マシロも待っていぞ」

「ああ」


 寮への入寮を果たして、全ての準備は整った。


 今日から王立学園の入学式を迎えて、俺たちはゲームの舞台になる学園に通い始める。


「あっ、レオ! アンディ! おはよう」


 真っ白な髪に、活発だと思える笑顔を浮かべた色々と成長を遂げた美少女が二人を迎える。


 本来であれば、この場面で気持ち悪く成長したレオが嫌な奴に絡まれて、それを助ける二人の出会いの場面だ。


 それを俺が入って、すでに二人は出会ってしまっている。


「ああ、おはよう。マシロ」


 本来は結ばれるはずのない二人が並んで歩いている。


「おはよう」


 俺は二人の後ろからついて行って、その光景を眺める。


 感慨深いものだ。


 師匠が亡くなって一年が経った。


 俺たちの関係はあの頃から変わっていないようで、少しだけ変わってしまったように思う。

 意図的に俺自身が動いたこともあるが、それぞれに師匠の死によって成長を遂げた結果にも思える。


「アンディ。また寝癖がついてるよ」

「ああ、どうでもいいんだ」


 マシロが俺の赤い髪に触れて、寝癖を直そうとする。

 だけど、俺に構う必要はない。


 俺はマシロの親父さんを助けることができなかった無能なんだから。


「もう、どうでもよくないよ。これから入学式なんだからね。レオからも言ってよ」

「はは、マシロ無駄だぞ。アンディは全然やる気を出す気がないからな」

「もう、そんなんじゃダメだよ。私たちはこれから頑張っていくんだからね」


 眩しいほどに輝く笑顔を向けるマシロにレオは苦笑いを浮かべる。


 俺はマシロにされるがままに髪に櫛を入れられる。


「おい貴様ら、そんなところで何をしている?」


 不意に声をかけられた人物に、俺はため息を吐いた。


「レティシア姉さん。迎えに来てくれたのか?」

「うっ、アンディ! 姉を面倒くさい者のように見るんじゃない」

「そんなつもりはないよ」


 俺はマシロをレオに預けて、レティシア姉さんへ近づいていく。


 身長はいつの間にか俺の方が高くなり、見下ろしてレティシア姉さんの長い髪に手を伸ばす。


「うん。いつも通りにレティシア姉さんは綺麗だ」

「ばっ、馬鹿者! 当たり前であろう。おっお前は大きくなったな。それにカッコよくなった……」

「ありがと。それじゃボクらのエスコートを頼める?」

「ああ、任せろ。ほら二人ともいくぞ!」


 本来であれば、悪役貴族として入学してきたレオをいじめるのはレティシア姉さんの役目だ。それは俺を殺した復讐も含まれていたのだろう。


 こんなところに変化が出ている。


 俺たちはレティシア姉さんに引率してもらって、入学式の会場へ向かう。


 

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