第15話 どこまで?
私を見る渚の目が、嫉妬と独占欲でいっぱいになっている。
もっともっと、私に執着したらいい。
私はいつでも、渚の物になる準備はできてるんだから。
「渚は、私が草壁を好きになったら嫌なの?」
「……嫌だよ」
泣きそうな顔で渚はそう言った。
可愛い。
優しく笑って、そんなことには絶対ならないから安心して、とでも言えば渚はこの顔をやめるのだろうか。
そんなの嫌。渚に、もっともっと執着してほしい。
早く気づいてよ。渚だって、私がいなきゃだめなんだって。
私からは教えてあげない。だって、渚に自分で気づいてほしいから。
「渚、お菓子食べようよ」
「……うん」
渚が持ってきてくれたのは、私が好きなラムレーズンのクッキーだ。
私がよく家にくるから、渚のお母さんがスーパーに行くと買ってきてくれるのだという。
「渚は学ラン、
「うん、そのつもり」
郁人くんは渚の弟だ。現在中学2年生で、学校の野球部に所属している。
「渚が学ラン着たところも早く見てみたいな。渚、似合いそうだから」
「桃華ほどじゃないよ」
「渚はなんでも似合うよ。可愛いから」
私の言葉に、渚は照れて顔を逸らした。
なんか前より、本気で照れてる気がする。
「ねえ、渚」
「なに?」
「運動会、なにかお揃いにしない? 髪型とか、ヘアアクセとか」
私の提案を聞いて、渚はぱあっと目を輝かせた。
「する! 誰から見ても、お揃いって分かるやつ!」
「うん。今度映画観にいく時に、ヘアアクセとか見てみよっか」
「約束だからね」
念を押すように言って、渚は上機嫌にクッキーへ手を伸ばした。
分かりやすくて抱き締めたくなる。
私の頭の中は渚でいっぱいだ。渚の頭の中には、どれくらい私がいるんだろう。
「渚、髪伸びたよね」
「そう? まあ、言われてみればそうかも」
「切らないの?」
草壁は、長い髪の女が好きだ。
私は渚ならなんだっていい。髪を伸ばしても、結んでも、染めても、いつだって渚だけを見てしまう。
「桃華は、どっちが似合うと思う?」
「……渚なら、なんでも似合うと思うけど」
「けど?」
なんだって大好きだから、渚が好きな髪型をすればいいとも思う。
だけど、渚が私のために髪型を変えてくれたら、どれだけ幸せだろう。
「私は、ボブが好き」
そっか、と渚が頷く。そして、上機嫌に髪を触った。
「じゃあ、切りにいこうかな」
「……すごくいいと思う」
「なにそれ」
くすっと笑うと、渚は私の髪に手を伸ばした。
「桃華は、長い髪が似合うね」
「……ありがとう」
「髪の毛切らないのって、私がいつもそう言うから?」
その通りだ。私は少しでも渚に好きになってほしくて、毎日面倒なヘアケアもしている。
「そうだよ」
「じゃあ明日、ポニーテールにしてきてって言ったら、そうしてくれる?」
「するよ」
「じゃあ、ツインテールにしてって言ったら?」
「するけど」
渚はそっと私の手に自分の手を重ね、私をじっと見つめた。
「どこまで、桃華は私のお願いを聞いてくれるの?」
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