第17話 野球の思い出
高校三年生の最後の大会で、
快進撃の要因は、キャッチャー
実際に作戦考案やサイン出しは全て美香が行い、名目上の老監督はベンチに座っているだけだった。美香はいつの間にか『監督』と呼ばれていた。
そして何よりも優れていたのは宮島凛投手の速球とコントロール、そして驚異的なスタミナだった。かつていた早実の名投手、斎藤佑樹を彷彿とさせる投げっぷりだった。
「何と言っても決勝戦ね」美香
「連覇確実と言われた強豪校を番狂わせで破ったんだもんな」碧
「連投で凛が疲れていたところに美香が言ったのは、スローボールで行こうってね。中学生みたいな遅い球を投げさせた」樹
「凛は疲れているのにコントロールは抜群だったな」碧
「私は指示通り投げただけだよ。あんな遅い球で打たれないんて不思議だったけど」凛
「向こうのバッターは遅い球に慣れていなかったんだね」樹
「小細工も効いたよね。ピッチクロックぎりぎりで投げたり、極端なシフトを敷いたり」碧
「それにしても一番驚いたのは決勝点の凛のホームスチールよ。焦った相手投手が凛をホームでアウトにしようとど真ん中に投げたんだよね」
美香が楽しそうに話し続ける。
「それを碧が機転を効かせてすかさず打って見事タイムリーヒット。さすがの私も凛にスチールのサインなんか出さないよ。私も敵も味方も観客もみんな驚いていたわ。凛、あなたスチールが成功すると思ったの?」
「あのピッチャー余裕かましてワインドアップだったし、延長が嫌だったから、早く終わらせたかったの!」
「やっぱり最後は猪突猛進、凛らしいよね」
「優勝できたのは美香のおかげよ。真の『監督』だった」
野球の話が四人を楽しい思い出の頃に引き戻してくれていた。
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