第9話 夜景は立って眺めましょう

「ちょっと変えるね」


 あおは音楽をスローテンポのものに、映像は函館の夜景に切り替えた。


「はい。夜景は立って眺めましょう」


 碧は凛の手を取り、ゆっくりと立たせた。


「ここは函館山。いつもの夜景。百年前から変わらない」


「……」

 凛は無言で少しにやついて碧を見つめる。


「少し寒いかな?」


 碧は凛の腰に手を回し引き寄せる。

 碧の顔が近づいてきた。凛は笑いをこらえ始めた。


「寒くはないよ」


 凛は真面目な碧の顔のアップに耐え切れず、とうとう吹き出してしまった。


「函館山は寒いだろうよ。俺が温めてあげるよ」

「碧、止めてよ、もう」


 凛は大笑いした。


「こいつう、俺の演技を笑ったな。伝説の大泉ばりなのに」


 碧は笑いながら凛をベッドに押し倒した。

 二人の甘い夜が始まった。

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