2140

🌳三杉令

第一章 2121年春

第1話 宮島 凛(りん)

 百年後も、北の雄大な自然は変わる事が無かった。

 気温の上昇以外は。



 宮島凛みやじまりんは西暦2096年7月26日に札幌市で生まれた。


 その後、長万部おしゃまんべに移り静狩しずかり高校を卒業。

 さらに北海道大学へ進学し、政治学を学んだ。


 近所に住む環境活動家アリーナという女性の勧めで、19歳の時に『緑の森』という活動グループに本格的に加わった。


 そして大学を卒業後、ある政治家(元道知事)の長万部おしゃまんべ事務所に勤務していた。

 彼女は2121年、同市議選に二十四歳で出馬し初当選する。


「ピート、行ってくるよ!」


 凛はペットの犬に元気よく声を掛けた。

 透明なクッション『エアホッパー』でポンと跳ね、玄関に滑るように移動した。


 エアホッパーは粒子制御技術が生み出したという粒子体の応用商品である。

 この時代、空気だまりの弾力や低摩擦性能を使った様々な製品が開発されている。


 ゴールデンウイーク明けの5月8日、凛は市議としての初仕事の為、自宅のマンションを出るところだった。

 彼女は市内で一人暮らしをしており、ピートと名付けた柴犬を飼っている。


 細めですらりとした体形に真新しいスーツを決めて、凛は自宅を飛び出した。


 「――さあ、今日から新しい仕事だっ」



------------------------------------------------

※この時代、長万部おしゃまんべは新幹線駅のおかげで人口が増加し市に昇格しています。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る