アリシア嬢の王国再生記
犬野ツナ
1話目
赤、朱、紅、あか。
真っ赤な炎がわたし達のお城を焼いている。
わたしと庭師の息子二人で薔薇の庭園で隠れていた。庭師の息子はぎゅっとわたしの手を握っていた、自分の父親がもう死んでいると確信していても彼は泣くのを堪えてわたしに微笑みかけている。
「お嬢様、僕がいます、僕がいますから」
弟もお母様もお父様も皆燃えて死んでしまった、そんな一人ぼっちなわたしを彼はそう言った。
「逃げましょうお嬢様、ここはお城のすぐそばなので追っ手にバレてしまいます」
彼はわたしの手を引いおぼつかない足取りで走り出した。走りながらわたしはそう言えば名前を聞いてなかったなと思い彼に聞いてみると小さな声で返してきた。
「スノウです、アリシアお嬢様」
「そう、素敵な名前ねスノウ」
真っ白な髪に真っ白な目、色白な肌。スノウという名前は納得だわ、まるで童話のお姫様みたいだもの。
森を抜け二人で空き家へ入った、小さな小屋だったけれど子供二人なら全然広いぐらい。
「これからどうしましょう、スノウ」
「お嬢様」
そっと優しくスノウがわたしの手を触ってきた。
スノウがわたしの目線を合わせにっこりと笑う。
「いつかこの国を取り戻しましょう、アリシアお嬢様の国を」
スノウの手の震えがわたしにも伝わってくる。大丈夫よ、スノウ。
「わたしの大切な人達を燃やした奴を絶対殺してやるわ、地獄の果てまで追いかけて嬲り殺してやるの」
ポカンとした顔をしてすぐに泣きそうな顔に変わって結局泣き出してしまったスノウを慰めながらわたしは自分の発言にドキドキしていた。
お父様達から絶対に人を貶める言葉は駄目と教わっていたわたしがこんな事を言うなんて......。
「お嬢様、計画を立てましょう」
「計画?」
「復讐の計画です」
こうして、わたしとスノウの復讐計画が始まった。
7年後
「アリシアお嬢様」
「なあに?スノウ」
真っ白でふわふわな髪を束ねスノウは子どものような笑みを見せた。
「街で殺人鬼が出たんです、コイツを利用しましょう」
「利用という事はついに計画を始めるのね」
スカートをふわっと広げながら彼は嬉しそうに言った。
「ええお嬢様、始めましょう」
まずは子供殺しの殺人鬼、ね。
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