3.ロボットの盾

 もしロボットが立てたなら、2m近い高さになるだろう。ロボットはあちらこちらボディがむき出しになっており、表皮カバーもついていない。


 所々基盤も見え、今にも壊れそうな状態だった。


 そんな今にも壊れそうなオンボロのロボットなのに、なぜか俺は見とれてしまった。


 これは旧型だが、随分性能の良さそうなロボットだ。このロボットを換金場へ連れて行ったら、1年は食事に困ることはなくなっていただろう。


 後1分で上層世界からゴミが落下してくるというのに、思わず金の計算をしてしまう。


 そのときだった。ロボットは急に立ち上がり俺に近づくと、俺に覆い被さった。


「な、なにするんだ!」


【アト50ビョウデ、ゴミガラッカシテキマス】


 後50秒という時間に俺は顔を青ざめて、体を起こそうともがいた。


 このままでは落下してきたゴミに押しつぶされる。 


 だがこのロボットは俺を覆い被さり動かない。


【ウゴカナイデ、キケンデス】


 ロボットが冷静な音声で語りかける。その言葉に動揺していた俺の頭も少し落ち着いた。


「おまえ。もしかして……、俺を助けてくれるのか?」


【タスカルホショウハ、アリマセン】


【ショウゲキニソナエテ】


 ガン、ガチャ、ガッシャーン、ガタガタ、ガンッ、ガンッ、


 1分かそれとももっと長い時間か、資金ゴミ同士がぶつかる音を聞いていた。


 おそらく俺が倒れている地点も大型の資金ゴミが落ちたのだろう。


 しかし俺を守っているロボットが庇ってくれているおかげで、今のところなんとかなっている。しかし、


 ガチッッ


 俺に覆い被さっているロボットの腕から、嫌な音が聞こえてきた。


 先ほどから資金ゴミが背面のボディに当たっているのだろう。腕のパーツも限界に近づいているようだ。


「おい。大丈夫か」


【ハナサナイデクダサイ。シタヲカミマスヨ】


 ロボットは心なしか焦っているような音声を出した。ロボットだから感情などないはずなのに。


【アト30ビョウデ、ゴミハイキシュウリョウデス】


【アト20ビョ…】


 ガッチャン、ドンッ


 ロボットの音声が途切れ途切れになってきた。


 ークソッ、もうだめか……!!


 バキンッ


 ついに覆い被さっているロボットの右腕が折れてしまった。


 ロボットの体勢は崩れ、俺に覆い被さるように乗った。


「お、重い」


 ロボットと落下してきた資金ゴミの重さで俺は意識を失った。

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