1-13 楽しいキャンプ
無事に『サヴァーブセット』を買えた(?)ので、リュックにしまおうとするが、祝和君に「試してみれば?」と言われたので、実行する事に。
『適性検査』はまだ準備中らしい。レジャーシートを敷いて、場所取りをする。
ちなみに、俺達は国立パルブ公園に戻って来たが、サヴァーブセットがあるなら、文字通り『どこでも』キャンプを開始しても、法に裁かれないらしい。
凄い人は酸欠になりそうな場所とか、海の中とか飛びながらとか。倫理的に良いのだろうかっていう場所でも、キャンプをゴリ押しするらしい。心臓にオラウータンの毛でも、生えているのだろうか。
「百二十種類もあるの!? 多すぎない!?」
『十五年前は八十種類くらいでしたよ。色々発見しているんでしょう』
最初なので、一番簡単であり有名である『マカロニグラタン』を作る事に。材料は祝和君と餅歌から貰った。二人はとても優しいと感じる。
マカロニグラタン 材料 (1人分)
マカロニ …… 25g
鶏もも肉 …… 45g
玉ねぎ …… 1/3個
椎茸 …… 1~2枚
牛乳 …… 200ml
サラダ油などの油 …… 小さじ1
バター …… 5gほど
小麦粉 …… 大さじ2
塩 …… 小さじ1/2
こしょう …… 少々
「まぁ、どれも市販レベルだから、あんまり期待しない方が良いかもね」
「え、食材にもランク分けがあるのか?」
「勿論です! 高級食材じゃないと、失敗する可能性がありますからね! あ、でもマカロニグラタンは『☆1』なので、ご安心下さい!」
この本には、作り方と難易度が『☆』の数で表記されている。最大は『☆10』らしい。そのレシピを見てみたが、聞いた事が無い具材が沢山ある。どうやって調達するのだろうか。
本を読みながら、下ごしらえを進めていく。俺は包丁で切るけれど、祝和君はまさかの骨で切り刻んでいる。餅歌は飲み物を用意してくれている。
「祝和君、手捌きが良いね」
「え、そうなの? テキトーにやっているだけだよ」
「天賦の才能かな」
さっさと切り終わった彼は、ボウルの中に調味料をかき混ぜ始める。左利きらしい。俺も切り終わったので、彼と同じ事をする。まき散らさない様に気を付けなければ。
「餅歌ぁ、皿を火釜の中に入れて良いよぉ」
「分かった!」
「空っぽのまま入れるのか?」
「うん。具材はこっちから」
餅歌は火釜を開けて、皿を三つ入れて閉める。祝和君は具材を上についている煙突から入れる。これが正しい使い方らしい。中で勝手に点火するようだ。
「十分くらいで出来るのか?」
「もう出来ますよ~!」
餅歌が目を輝かせながら、レジャーシートの上に座る。祝和君も彼女についていき、隣に座る。本当に何もしなくて良いのかと聞こうとすると、火釜がゴボゴボ音を鳴らし始める。
「イモ君もこっちに座りな。火傷するよ」
「あ、うん」
バ ッ カ ァ ー ー ー ー ン ! !
「うおおおおおおおッッッッッ!?!?!?」
二人の前に座った瞬間、火釜の扉が独りでに開き、煙と共にマカロニグラタンが、もはや地面に叩きつけられるかの如く、目の前に落ちてきた。
「お、お、おおぉう……??」
「ははっ! 初めてにしては上出来じゃ~ん」
「いや、二人が手伝ってくれたから……え、これで完成?」
「そうです! 暖かい内に、食べましょ~!」
顎が取れそうなほどに口を開けて、目の前にある料理を呆然と見ていた。とても、良い匂いがする。玉ねぎは透き通っているので、焼き加減も良い感じだ。
レジャーシートの上に円を作るように座り、手を合わせて一口食べてみる。とろみがあって、椎茸も肉も柔らかい。マカロニまで染みわたっているので、少しかき混ぜただけで充分味が行き届く。まぁ、つまり何が言いたいかというと。
「お、美味しい……ッッッ!!!」
「昼飯には最適だねぇ」
「ホカホカしてますぅ~」
友達と日中キャンプをするなんて、夢にも思っていなかった。この日を忘れる事は無いと、何か偉業を成し遂げた訳でもないのに、直感した。
「何で俯いてんの?」
「どこか具合が悪くなっちゃいました?」
「いや、大丈夫だよ。ありがとう、二人共」
この二人と共に行動していくには、必ず適性検査を合格しなければならない。今から特訓をするのではなくて、グラタンを食べて英気を養う事が最善策だと、本気で考えている。
話しながら食べていると、祝和君のスマホが振動した。彼は手に取って画面を見始める。もう食べ終わったようだ。俺は後一口程だが、餅歌はまだ半分以上残っている。
「あー、準備出来たって」
「いよいよか」
一体、どんな内容なのだろう。ルージャ山の時みたいに、シニミ討伐を課せられるのだろうか。それとも、団長か副団長とタイマンするのだろうか。
「ゆっくりで良いよ餅歌」
「むぐむぐ」
餅歌がリスの様に頬張って食べているのが、食休みの癒しになる。祝和君に目を向けると、ごく自然に彼女の頬についているホワイトソースを指で取り、そのまま自分の口に入れる。
「何?」
「いや別に」
いつか二人で行動する時になったら、餅歌の事をどう思っているのかを聞いてみようと決心した。彼女も食べ終わったので、サヴァーブセットを片付けてリュックの中にしまう。代わりに、テレスコメモリーを出して手に持つ。
「じゃあ行くよ」
二人について行くと、羊のトピアリーにたどり着く。そこは、一見は他のと変わらない。だが注意深く見ると、下が掘られているのが分かる。
「ちょ、この中に入るとか言わな」
ドカッ!!
「ギャアアアアアアーーーーーッッッ!!!」
背中を容赦なく蹴り飛ばした祝和君によって、俺は悲鳴を上げながら落下!!
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