目覚め
81世紀(8001年)1月1日、地球は巨大隕石の衝突により、その約半分がクレーターで空いてしまった。それにより、地球のクレーターが空いた部分「大穴半球(クレーターゾーン)」では、危険音波が発生し、大量の未確認危険生物や未確認危険物質が出てきた。これが発生した、隕石衝突日である1月1日では毎年、地球にある全ての学校でこれについて勉強するように義務付けられている。
「では、これから、隕石衝突日についての特別授業を始めます。今回は魔法科の私、村木と、歴史科の川田先生との合同授業で進めていきます。」
魔法科の村木先生が言い、歴史科の川田先生が深く頭を下げた。
「では挨拶お願いします。」
「起立、気を付け、例。」『お願いします!』
今回は、歴史科と魔法科の二教科合同の校内一斉授業だ。
今日、9001年1月1日は、隕石衝突日からちょうど一世紀だ。
毎年行われる隕石衝突日についての授業よりも、更に、より、細かく説明されるらしい。
「連絡が遅くなってしまって移動できてませんでしたね。今回の講義は第1大ホールで行います。多機能手袋と多機能パッドを持って第1大ホールに集合してください。」
村木先生が言い、移動が始まった。
第1大ホールへの移動が終わり、みんなが席についていた。余っている席はないかとあたりを見渡していると同じクラスの川田がこっちこっちと手を振っていた。どうやら席を取ってくれたらしい。
川田は同じクラスの学級委員長。本名を川田太郎といい、歴史科の川田リサ先生の息子さんだ。リサ先生は川田の母だ。
僕が川田の取ってくれていた席に座ると、川田先生がニコニコしながら
「よし、村木くんも着席しましたね。では授業を始めましょう。号令で起立しなくていいので、挨拶だけしましょう。」
あ、そうだった。
「姿勢を正して、気をつけ、礼!」『お願いします!!』
「お願いします。まず、最初にみんなに紹介しなければいけない新しい仲間がいます。」
先生のアイコンタクトに合わせ、僕は立った。
僕は今日からこの学校に転入することになった。
「こんにちは、はじめまして。僕は魔法科教師である村木恩分の息子、村木 守といいます。得意科目は魔法科です。一般魔法は基本的にはすべて習得しています。」
周囲がざわついた。
少し意外だった。もうあの話がこんなに早くに広まっているとは。
あの隕石衝突日のあと、大穴半球の近くに属している地域では環境汚染や生き物の身体への突然変異が起こった。生き物の突然変異は、その地域だけではなく世界全体に広まっていたが、その地域では、特に突然変異の規模が大きかった。そして、地球全体では突然変異によって、超能力や魔法といった非科学的な力に目覚めるものが次第に現れるようになった。
住困難区域では、大穴半球から近いこともあり、その力が暴走してしまう人が現れてしまった。政府は、そのような人、メテオライターが力を自己制御ができるまで、住み続ける―放置される―地だ。
噂が回るのも、インターネットがほとんど全てなこの世の中では、仕方があるまい。そして、俺を怖がり避ける人がいるだろうことも俺は知っている。
実際、俺は他の人よりも強い魔法が打ててしまう魔法暴走者、メテオライターの一人だ。怖い人も多いだろう。
元は僕もみんなと同じ魔法も使えないただの人間だったのに……
僕が一通り自己紹介を終えると小さな拍手が起こって僕は自席に戻っていった。
そして、授業が始まった。
「まず、隕石衝突についてのおおもとな概要から説明しますと、木星内の大きな魔力が激しい回転運動をしたことによる木星と地球との接触のことを言います。」
「このとき、ちょうど、"宇宙構造探査機関(SSEA - Space Structure Exploration Agency)"が木星への星の性質調査をしているところでした。このとき、地中から異常なエネルギー暴走を察知し、地球にあるSSEA本拠地から今の大穴半球の各国に情報が回ったことで各国は異常事態により避難命令を出し、死者の人数は抑えることができました。このとき、連絡手段や技術が発展していたことが不幸中の幸いでしょう。」
「しかしそこで、元々、今の大穴半球となっているところに住んでいた人の複数人が体調不良を訴えました。それも風邪のようなものではなく、毎晩うなされ、中には自ら命を経とうとしたものも現れたそうです。そして、病院で検査しても原因は不明のまま。人々がもうだめだと思ったときに、その人達は突如超能力のような不思議な力、"魔法"に目覚めました。それから様々な研究機関で魔法についての研究がされました。地球にある全ての事柄を取りまとめる政府の最高機関、"地球世界統合連盟(EWIF - Earth World Integration Federation)"もその一つです。EWIFで公式に魔法の存在が認められたのはこのときです。
このとき、魔法が使えるようになった人を"有魔力人種"、使えない人を"無魔力人種"、"通常人種"といいます。有魔力人種は、その子孫までずっと有魔力人種で、無魔力人種と有魔力人種の間に生まれた子も有魔力人種となります。」
そこまで言って先生方が一息つこうとしたとき、いきなりホール内で大きな揺れが起き始めた。
地震だ。
近くにある緊急時用防災救助ロボットが自動起動し、避難経路の確保と誘導、柱や建物の強固を開始した。
つい先月、新しい耐震構造を取り入れるため、工事をしたばかりな大ホールが、右へ左へ、上へ下へと大きく揺れる。
僕は怯えて震えていた。警報機の音と悲鳴が聞こえてくる。そのとき、僕の腕についていた魔力制御装置の放出魔力レベルを表すランプが最大レベルの赤を示し、瞬きしたら、制御装置が壊れ、足元に落ちていた。
すると、その瞬間を待ちわびていたように一気に、ホールの天井から電灯が落ちてきた。悲鳴の声が高まる。僕は恐怖から、「みんなを守りたい」という願いだけが頭の中を巡っていた。そして、僕は呪文を発した。信じられないほどの速度で唱えた。
「我らを見守る神々よ。罪なき人々を救い給え。結界を張り弱気者の盾となれ。」
すると、僕の魔力が淡い水色に光り、屋根のようになり、落ちてくる電灯からみんなを守るように広がったのだ。その屋根に降りかかる電灯や天井の破片は屋根に触れると同時に淡い光を放ってゆっくりと降りてきたのだ。
そして、地震が収まりみんながまだパニック状態で騒いでる中、僕は安心したようにそっと胸をなでおろし、前を見ると、奥の方に黒いフード付きパーカーを羽織った男が逃げるように出ていくのが見えた。僕は聴こえた。その男が「目覚められたのだ。我らを統べる暗黒の……」と言っているのを。
そのとき、僕はこれまで感じ取ったことのないほどの大きな悪寒を感じ取った。
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