valentine share with you.

マイペース七瀬

第1話

40代後半になっている会社員のヨシテルは、いつも、不貞腐れていた。

 そう、会社でこのまま仕事はできず、そして、彼女もいない。そして、周りの同級生は、みんな、もう、20歳前後の子供がいる。顔は、男前だが、ヨシテルには、気が弱いゆえに、いつも、肝心なときに、いつも貧乏くじを引いていた。

 品川駅から京急快特久里浜行きに乗った。

 横には、カップルがいる。

 楽しそうだ。

 ヨシテルは、最近、彼女がいない。

 それは、悲しい思いをしていた。

 たまに、スマホの電子書籍で、恋愛小説を読んで慰みにしているが、寂しいと思っている。

 京急快特は、そのまま、品川から蒲田駅、川崎駅、横浜駅、を通って、上大岡まで進んだ。

 そして、ヨシテルは、上大岡で下車した。

 そう、ヨシテルは、横浜市内に住んでいる。

 ヨシテルは、横浜に住んでいる。

 2024年になっても、まだまだ、寒波が厳しいようだ。横浜や東京都心でも、雪がちらつき、マンホールが凍って滑りそうにヨシテルは、なった。

 ヨシテルは、ハイツに帰る前に、いつもコンビニに寄る。

「いらっしゃいませ」

 とコンビニ角川の店員さんは、言った。

 若い女性の店員さんだった。

 ヨシテルは、この店員さんを、以前から知っている。

 顔で言えば、指原莉乃みたいな顔をしているとヨシテルは、思っている。

 ヨシテルは、ここにコンビニ角川で、チキンと辛子明太子のおにぎり、そして、ポテトを買った。

 その時だった。

 ヨシテルは、会計をしようと、思ってレジに並んだ。

 すると、指原莉乃に似た店員さんは、ヨシテルに

「いつもありがとうございます」

 と言った。

 ヨシテルは、ドキッとした。

 そうだ、と。何か悪いことをしたのだろうか?もう、何年と彼女がいない。そして、前にエロ本を買っただが、それを覚えているのだろうか?そんなはずはない、だって、こっちは、客として来ているからな。

 指原莉乃に似た若い店員さんは、ヨシテルに会計の値段を言って、ヨシテルは、コンビニ角川を後にした。

 また、一人でてくてく歩いている。

 もう、2024年も2月になった。

 ヨシテルは、毎日、頑張って仕事をしている。

 そして、年々、景気が厳しくなっている。ヨシテルは、食品メーカーの会社員だが、もう、給料が下がっていく。ぷよぷよクエストのゲームをして、ふと、指原莉乃の映画を観ていた。そうだ、指原莉乃は、この映画に出ていたな、漫画の編集者の役をしていたな、と思った。

 ふと、ヨシテルは、コンビニ角川の店員さん、指原莉乃に似た店員さんを思い出した。

 ヨシテルは、大学院で、栄養学を専攻していたが、研究所で身体を壊して、ここの食品メーカーの事務の仕事をしている。

 ヨシテルは、一時期、入院していたから。

 夢はあったんだ、研究者になりたい、とか、思っていた。

 今日は、バレンタインデーだな、と思った。

 若い会社の女の子が、何人か、義理チョコをくれた。

 だが、彼女たちは、決まって、他のカレシがいる。

 そして、ヨシテルは、そんなところを、空しく思っていた。

 そして、会社の仕事が、たまたま、早く終わった。

 いつものように京急快特で、品川から横浜を通って、上大岡駅まで進んだ。

 そして、コンビニ角川へ寄ると、指原莉乃に似た彼女は、いないと分かった。それでも、辛子明太子のおにぎり、チキン、ポテトと、コーヒー牛乳を買った。

 ハイツへ帰った。

 そして、部屋の暖房を入れて、食事をしていた。

 その時だった。

 ピンポーン!

 とチャイムが鳴った。

ー宅配だろうか?

 とヨシテルは、思った。

 ドアノブを開けたら

「あの、今日、引っ越してきた栗栖さやかです」

 と言った。栗栖さやか、と名乗った女性は、コンビニ角川の指原莉乃に似たいつもの店員さんだった。

「すみません」

「はい」

「角川町のコンビニでお仕事されていませんか?」

「はい、どうして知っているんですか?」

…さやかは、そんなヨシテルに興味を持ったらしい。そして、それは、2024年2月14日のバレンタインデーの出来事だったようだ。そして、その日は、二人で、ヨシテルの部屋で、いきものがかり『気まぐれロマンティック』をBGMで流しながら、食事をして話をしていたらしい。<終>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る