第四十一話 家族総出
撮影が進むうちに米山の奥さんが必要なシーンが出てきた。本人は出たくないと言う。色々な女性に当たってみたが見つからない。
仕方なくマイルスは静に出演を頼んだ。静は快く引き受けてくれた。しかしそうなると幼い娘に留守番させるわけにはいかない。
結局映画には家族総出で参加することになってしまった。旅行ではないけれど何か違った時間を家族で過ごすことが出来る。こんな機会は頼んでもお目にかかれない。
今度はそうなると米山の家探しだ。友人の歯医者の松野氏の部屋が使えるという。そのままという訳にいかないのでらしいセットを作る。真っ赤なバラを一凛細長のタンブラーグラスに挿してテーブルに置く。本物の奥さんの写真をそっと飾る。
「ただいまあ」
「ケンちゃん、お帰りなさい!」
「疲れた、疲れた」
「はい、ケンちゃんビールね」
乾杯の後、テーブルには山盛りのすじを取る前の絹さやがあって、米山が奥さんを手伝う。すじを取った絹さやを別のボウルに入れようとして米山がドジる。まじめにやってこれがいい。
マイルスはカメラを回しながら軽く嫉妬している。そう思いながらいい絵になっていると思った。
二人には子供がいない...
「私たちに子供がいないのは仕方ないけど、私の子供はあなたなの。あなたの子供はあなたの夢、二人で育てていきましょう」と静が、おっと奥さんだった、が言う。
(く~妬ける…)
「ありがとう」と米山が答える。
この後も静は米山との夫婦のシーンで登場した。そして撮影には家族みんなで参加した。飛行機にはトミーと四人で乗った。
歌恋も子供の端役で登場した。そして撮影の仲間はみんな歌恋のお友達だった。
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