第二十五話 言葉を揺らしてみよう
「言葉とは本来揺れているものなんだね。揺れていないのを棒読みという。ところが音符が邪魔して、歌で棒読み状態で歌ってしまう。こんな歌が心に響くはずはないだろ?」酒井君はなるほどと思った。
「『好きだ』って棒読みしてごらん。こんな風に言われてうれしい子はいない」
「今度は揺らして『好きだ』って言ってごらん。ぐっといい感じだろ?」
確かに、受ける感じが大きく違う。でもどうやって揺らすのか分からない、と思っていると...
「あまり考えずにとりあえず揺らしてごらん.. 何回かやっているうちにいい感じの「好きだ」が言えるようになる。でも考えてやるのは、いつもの通りOUTだよ。余計に、こんがらがってしまう」
酒井君は、あまり普段は言わない「好きだ」を繰り返してみた。
「揺らす事ばかりに気をとられずに、丁寧に言う事に気をつけて見よう。これは歌を何倍にも良くする、魔法なんだ」
「じゃあ少し慣れたところで、いつもの歌を歌ってみようか」
酒井君は練習でつかんだイメージで歌を歌ってみた。なぜか歌が上手くなったような気がした。発声も軽く、息苦しさが全く無い。
「良くなっているだろう」と、マイルスが言うと、「歌が違って歌えるようになった気がします」と、酒井君が答えた。
「変わったんだよ。かなり良くなっている。もう以前の君の歌とは、何段階にも違って聴こえる。この感じを大切にするんだよ」酒井君はとてもうれしそうだった。
マイルスもうれしい。レッスン生の殻を破った瞬間は、新鮮で生まれ変わった喜びがある。これを一皮剥けたとか、化けたとかとも表現する。
言葉は丁寧に揺らして歌う、しゃべるときにも使える。日本語や英語がかなりネイティブになった感じがする。
ただ丁寧は、ゆっくりとは違う事を認識しよう。ゆっくり言わなければ、丁寧にできないと思うのは、思い込みの一つである。
この時、「最後のスペルは、最初からイメージする」を思い出してほしい。
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