第20話反乱から逃れた少年

「あ!」


「うわっ!うわっ、やば!ああっ!」


「え!ちょっ、落ち着いて!」


ドカドカドカッ!


「…うっ。痛そう、」


犯人が驚き、暴れたことで本棚から本が大量に落ち、犯人に降り注いだ。その青い光は大量の本によって弱くなっていった。


「なんで、盗んだの?」


「げっ!?やっぱバレてたぁ。そうです、草薙剣を盗んだのは僕です。」


「あれ?」


よく見ると、古ぼけたおもちゃのような王冠を頭につけているのに気付いた。しかし、俺の母がつけていたような王冠とは似ても似つかなかった。


「それって、王冠?輝いてるけど…髪まとめてる?」


「ようやく気付きましたか!僕が頭につけてるのは本物の王冠です!どうですか?かっこいいでしょう!」


「まあまあ」


「酷い評価だなぁ。あっ、ていうかこんなことしてる場合じゃないんです!」


またジタバタと本の上を跳ね始め、ただでさえ狭い本棚との感覚を広げようとするかのように、暴れまわる。


「あ、だからちょっと落ち着けって!」


ドカドカドカッ


「いってえええええ!」


「大声出すな、見つかるぞ。」


「あ、すいません」


「てかその機械みたいなやつの光、眩しいから消してくれ」


「はい」


やっぱりさっきの声は城に響いてしまったようだ。この金庫に近付いてくる足音が聞こえた。その音は段々と大きくなっていく。


「まずいぞこれ、お前もバレるとやべえかもよ!」


「いやそれはぁ!理由があってぇ!うぼ」


また声を出すから、そいつの口を抑えて喋らせないようにした。


「一回静かに…」


コンコンコン


トットットト


「はあ、よかった。ぎりぎり入ってこなかったっぽい。」


「走る音がしたな!」


「…一応聞くけど、理由って?」


盗んだ事実はあるが、理由があるというなら一応聞いておく。まあ、どんな理由があろうと剣は返してもらうけどねっ!


「ちょっと離れて…剣を出します。八面玲瓏はちめんれいろう。よしっ、出た。」


「もしかして、透明化魔法?ていうか変わった名前の魔法だな」


「理由…ダメだと思うんだけど、この剣がどうしても必要で。ただ、それだけ。」


「なんで必要?」


伝説の剣と呼ばれるのにはピッタリの見た目をした黒い剣。


「だって、わざわざこの剣じゃなくてもいいだろ?もうかなり長いこと使われてるような剣だろうし。」


「僕は、ある国の王なんです。正確にはまだなんですけど、次期になる予定でして。」


「なんだか急に改まったな。でもこんなゲームなんかしていいのか?」


「知らないんですか?このゲームはもう世界各国の問題にもなってるんですよ!ある男にハッキングされて、このゲームの運営はもうめちゃくちゃなんですよ。そのせいで、このゲームの中で戦争が行われるようになったり、とんでもないですよ」


「そんなに現実世界とゲーム世界ってリンクしてるの?じゃあやばいね。」


「やばいどころじゃないですよ。なんてったって、この剣も現実世界から奪われてここにきたんですからね。」


「…!?そういうことか!」


「伝説の剣…草薙剣は僕の国で保管されていたものです。それをあっさりと奪われてしまった。どこかどこかと国ぐるみで探していました…」


「ん?どうしたんだよそんな暗い顔して。」


「でも!今や僕の国ではそれどころじゃなくなってきている。現国王の父が、何者かに暗殺されたんだ。そんな時、やっと僕はこの剣を見つけた。僕はさっさとここから帰んなきゃいけない。戦わなきゃなんないんだ!」


「戦うって…」


「今、僕の国は内乱状態だ。父が殺されたことで政治が崩壊しかけてるんだ。」


「その戦いがゲームの世界で?」


「ああ。でも結局現実とリンクしてるから、建物は壊れまくってるし人も大量に死んでんだよ。」

「それじゃあ、僕もう行くから。」


ガチャッ!


「誰か来た!」


コンコン


「…!」


「誰か来たじゃねえよサンダーランド。ほら、口から手離してやれ」


「うっ、苦しいって!」


「ああっごめんごめん。ところで…どうしてバレたの?スキャロップス」


「最初から。普通に声で気付いた」


「そうだったのか…」


「君の話は聞いたよ。草薙剣を探している国があるとは。」


「ここに辿り着くのはかなりきつかったよ…!」


「なあスキャロップス、俺戦いたい!一緒に、こいつと!」


「え、え?」


「そのためには上の許可がいる。接触しなきゃな」


「いや、死ぬぞお前ら?いいのか?」


「死にかけたのはいっぱいあったからな!別にいいんだ。」


「それじゃあまずはこんな狭いところを抜け出して、城外のある家に行くぞ。そこに、団長がいらっしゃる。」


「うん。行こう!」


「なんでそこまで…?僕のために、」

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