(二)-11

「聞いたぜ、豊川。お前、取っちまったんだってな。だったらいいじゃねえか。ガキができる心配もねえし。な、いいだろ」

「死ね、ボケ!」

 豊川悦子は短くそう口で応酬した。

 二人組のもう一人も椎田昇一と名前の入ったヘルメットを斜めに被りながら船町芙美恵に「そうだよ、なあ、いいだろ」と近づいてきた。

 そんな椎田に対し、芙美恵は最も効果的ではあるが同時に最も安直な方法で解決を試みた。それは拳を使う方法であった。

 中年の椎田が、アラサーではあるがまだ二十代の芙美恵の拳の直撃をあごに受けて、うめき声を上げながら後頭部から地面に倒れた。


(続く)

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