とあるダンジョン探索者の日常

第43話

~ありふれた視聴者の1人~

———ドオオオオオオオンンンンン！！！！

サラマンダーが放った煉獄魔法が『ファイヤーウォール』に囲まれた『修羅』に直撃した。

『………少しだけヒヤヒヤしたぞ』

が、直前に『修羅』が魔力障壁を貼ったことで間一髪で防いだ。

だが魔力障壁の外側は大量のマグマが溢れ出しコポッ……コポッ……という音を出して周囲に広がっている。

ダンジョンの下層なので地面が通常の層よりかは頑丈ではあるが現在進行形で溶けている部分がほとんどだ。

その景色はまさしくこの世の終わり

———『ディストピア』だ。

「な、なんだこりゃあ…………」

すっかりビールも空になりツマミもとっくになくなっていた。

・？？？？？？？？？

・え？煉獄魔法ってやばくね？

・当たり前だわ火魔法の上位互換やぞ

・でも使えるやつがマジで人間にもモンスターにもほとんどいないっていうね

・お前なんか知ってんの？

・いや？見たことがないだけw

・てかあの魔法はなんなん？周囲がマグマで埋め尽くされてるんやけど……

・教えて博士！！！

・『博士』 あの魔法か………俺も初めてみたが、

おそらくあれは煉獄魔法の『ディストピア』と言う魔法だ。魔力障壁を貼ったところで貫通してくるし、そもそも温度が高すぎて人が溶ける

・え？じゃあなんで『修羅』は余裕そうな顔してるの？

・それが何にも分からん。ただまあ、それがSランクってことなんじゃないの？適当かもしれないけど、それが俺的には一番しっくりくるんだわ笑

「煉獄魔法『ディストピア』………か」

コメ主の言う通り、なんで怪我一つもしてないんだよ……

火魔法の完全上位互換らしい『煉獄魔法』の『ディストピア』。見た感じ周囲が正に地獄の景色になっている。本当になんで無事なんだろうか。

—— 1番気になるのは、なんでドローンが無事なんだろうか……？

『そろそろウォーミングアップは終わりだ』

と言う。どうやら『修羅』が反撃するようだ。

『修羅』が太刀を抜き、魔力を纏わせていく……。

——ギャ……？！……ギャアアアアアァァァァァ！！！

魔力の纏わせ方を見て焦ったであろうサラマンダーは魔力を限界まで消費させた『ファイヤーウォール』を自身に何重にもはり、『修羅』の攻撃に備えた。

——サラマンダーの行動は正しい。だが、今回は相手が悪かった。

———『死ね！『桜吹雪』！！！！』

そう。前にも出てきた。あの『桜吹雪』を『修羅』は使った。

『修羅』のオリジナルであり十八番でもある

技がサラマンダーに襲いかかった。

——ギャアアアアアアア！！！！

サラマンダーは『ファイヤーウォール』を自身に何重にも貼っているが、『桜吹雪』は『ファイヤーウォール』を軽々と貫通してサラマンダーを切り刻んだ。

——ギャ……………

サラマンダーを原型を保てずに消滅し、周囲のマグマも無くなっていった。

『フィニッシュだ』

「すっげぇぇぇ………」

小さいスマホに映る配信を俺は10センチも満たない距離で瞬きもせずに見ていた。

・何あの斬撃？！？！

・博士なんか知ってる？？

・『博士』　　知らん、あんな魔法見たことない。おそらくだがオリジナルの『アーツ』なんじゃないか？

・『アーツ』？聞いたことはあるけどあんなこと誰でもできるんか？

・『博士』　　ハァ……まあ知らない人の方が多いか。よく聞けよ？『アーツ』っていうのは魔力を自分の想像通りに具現化させて実体化する技術のことだ。

だから有名なアーツだったら『紅』の北条の『斬撃』だな。

あれはシンプルかつ遠距離攻撃で強力だから使おうとしてる人も多いぞ？

・へぇ？すごいやん！

・『博士』 ただ、自分の想像通りに具現化させるってめちゃくちゃ難しいらしいんだよ。

だから『修羅』が出した『アーツ』は異次元なんだよ。圧倒的な魔力量と精密な魔力コントロール、そしてなにより……想像力が化け物だな

・『博士』も『アーツ』持ってるの？

・『博士』 さっき『らしい』って言っただろう？持ってないよ。魔法は中級までなら使えるけど

『またどんどん行くぞ』

サラマンダーのドロップアイテムを拾い、今度は走り出した。

『ここら辺のモンスターはAランクばっかで面白くないんだ。だからささっとBOSSのところまで行く』

・え？早速BOSSですかい？

・What？？

・面白くないって……笑

・こ、これがSランク…！

・大体の出来事はSランクって考えるだけで理解できるのマジで草なんよ

・Sランクに風評被害が……

・だって『白銀』もSランクやん

・そいえばそうやな

・普段おちゃらけてるからSランクって聞くと1ミリぐらい尊敬するわ

・でも、まだ常識人よ？

・もう終わりだよこの国

・大丈夫！海外も中々だから！！

—そして5分後—

『まあまあ本気で走ったからすぐBOSS部屋に着いたな』

・うっぷ……

・画面酔いした………

・ていうか走ってる時にモンスターぶっ飛ばしたな笑

・ブラックウルフやろ？

・そうww

・さっきの戦いはじゃれ合いだったのかな(白目

・ていうかマジでなんで配信してるカメラはついていけるんだよ笑笑。これドローンやろ？どうなったんねん

・ドローン最強説

「……本当にこのドローンはなんなんだ…？」

『じゃあ開けるぞ？』

———ギィィィィ……………

———グルァァァァァァァァァァァ！！！！

『……なんか前にも見たな、この光景』

「な、な、な……！」

思わず自分の目を疑った。

——だが、それも仕方がないじゃないか。

配信画面越しには、本でしか見たことがない

蒼いドラゴンがいたのだから。

———

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