第38話






———『配信です』



俺がそういうと全員が驚いた顔をしていた。



「…………ほぉう?配信、ですか……」


「はい、近年流行り始めているあのダンジョン配信ですね。これを『修羅』にやって貰えば我々ももしもの時に対処できますからね」



俺がそういうと反対派はコソコソと喋り始めた。



「確かにそれなら………」

「もし何かあったら他国の冒険者に言えば…」

「それにダンジョン配信ということは…」

「うむ…。各国に日本の英雄をアピールすることができる」



元Sランク探索者である俺の耳には彼らの声がハッキリと聞こえてくる。聞いている感じこれは好感触なのでは?



心の中でほくそ笑んでると金丸が発言をしてきた。



「確かに良い考えてみればアメリカがダンジョン配信、とまでは行かなくても動画は取っていましたね。

しかし、階層によってはBOSS部屋に入った途端に扉が締まるところもあるとか…。

その場合他国の援軍は呼べませんがどうするのですか?」



やはり、か。俺もそこはどうしようかギリギリまで考えていたんだ。

だがやはりこの結論しかない。



「その時はもう諦めます」


「…………は?話になりませんね。

つまりもし失敗したら配信を垂れ流したまま私たちは『修羅』の死に様をみなければいけないと……

西園寺会長、貴方は分かってない。


Sランクと言う存在がどれほど国のためになるのかを! 


つまり貴方の言いたいことは『修羅』が単独で下層に行きその様子を配信で流す。

勝つ確率はわからない、だが単独で行くということはつまり、下層突破できる確率はかなり低いはず!アメリカや中国、ドイツでさえも単独ではなかった!!

余りにも、余りにも無謀すぎる!!

それではまるで、  じゃないか!」



金丸が激昂して俺を言い詰めようとしてくる。



確かに、俺が言ってることは他者から見れば話にならない、荒唐無稽な計画だろう。金丸の気持ちもわかる。



………だがな、



「そうですなぁ。ギャンブル……そう、



————ギャンブルなんですよ、これは

Sランク探索者を、日本の英雄をダンジョンに

して、下層突破させる


一世一代の大勝負です」






———探索者って言うのは、確率なんか信じない。





◇◆◇



「————今、なんと?」


「ですから、ギャンブルと言っているのです」



俺がそういうと金丸は動揺した。



「今貴方はSランク冒険者がどれほど国のためになるのか知らないのかと聞きましたね?


—知ってるに決まってるでしょう。私も元Sランク探索者ですから」



俺がSランクだとは初耳だったのか金丸は動揺していた。

前にも言ったような気もするけどな……?



「それに探索者という存在自体が貴方は何もわかってない……!」



俺が少し声を大きくすると金丸はビク!っと体を少し縮こませた。



「探索者というのはモンスターを討伐してドロップアイテムを売って生計を立てる日本でだけでなく世界でも重宝されている職業です。


しかし、探索者を生業《なりわい》

とする人は少ない。殆どの人がダンジョン試験だけで終わるか。良くて副業、お小遣いを稼ぐぐらいでしょう。


しかし一部の人、探索者で食べている人たちは身の危険を顧みずお金を得ています。


つまりですよ……初めから探索者一本の人たちは、

自分の命と人生をダンジョンにしてるわけです。『修羅』も同じですよ?

『修羅』こそまさに今の時間を殆どダンジョンに費やしてるじゃないですか。

このダンジョン下層突破も『修羅』が申し出たんです。


今更ギャンブルだなんだと言われても……既に私たちはそのギャンブルに参加しているわけですしね」


「だ、だが!下層を単独で行くのでしょう?!突破確率があまりにも………!」



確率……ねぇ。



「確率、確率、確率、うるさいですねぇ。

確率なんて私たちは信じてませんよ。

何せ……………負けたらそこまでですから。

私は運良く生き残りましたけどね」



そういうと金丸は黙ってしまった。

チャンスだと思いそのまま話を進めていく。



「金丸さん、反対していた皆さんもここは一つ、この賭け事に乗ってみませんか?

負ければ日本は英雄を失い必ず衰退していく。アメリカか中国に吸収されるでしょうね。


勝てば日本はアメリカ、中国、ドイツに並ぶ強国となるでしょう。

そうすれば忌々しいアメリカとの条約や他国との利権の主張もこちら側が非常に有利になります。

かけるのは日本の英雄 Sランク探索者


『修羅』 


——我が国ができる最高のです」





そう言うと数分間沈黙が続いた。



そして、金丸が重々しく口を開く。




「……Sランク探索者を失うかもしれない。


だが、西園寺会長の言葉も一理ある。



心の中ではわかっていたが信じたくない自分がいた。

やはりこのままだと、日本という国がゆっくりと、確実に衰退していくだろうな……と。


——我々は目の前のことしか見ずに、先のことを見ていなかった………。


確かに中国、アメリカ、ドイツは多数のSランク冒険者の犠牲が出たというが。


こちらは1人だからな……。


分かった。私は賛成にしよう」



金丸が手を上げると他の反対派も賛成に傾こうとしていた。



「……確かに俺たちは前が見えていなかったのかもしれない」

「ずっと立ち止まり続けていたな……」

「これは危険なギャンブル。だが、かけない道理はない」



「では、もう一度多数決を行います。賛成の方は手をあげてください」



俺がそういうと、他の反対派の人たちも手をあげて全員が手を挙げていた。



「——では、満場一致ということで

今回の議題である『修羅』の下層突破の案はこれで終わります。ありがとうございました」



そうして、会議が終わったのである。





◇◆◇




1人、また1人と帰っていき残ったのは俺と金丸大臣だけだった。



「おや?金丸大臣は帰らないのですか?」


「いや、もう帰りますよ。にしてもすごいですなぁ。初めから想定してたんでしょう?

——私が賛成する事を」


「……………まぁ、それこそ賭けでしたね」


「ハッハッハ!……それにしても本当に、


Sランク探索者に、それも1人の人間に国の全てを賭ける。西園寺会長も正気でない、言っちゃ悪いと思いますがですな!!

では!はっはっはっはっは……」




そう言って金丸は帰っていった。





「正気じゃない…か」



部屋から見える空は既に日が沈みかけていた。



確かに俺はイカれてるのかもしれない。




だが、俺と同じランクの人間は全員そうだった。




俺は懐かしむように、そして、あの日常が二度と自分には来ないことを自覚しながらも呟く。




「俺は正気じゃないですし、変人でもありますよ。そりゃあ




——元  Sなのでね」






さぁ、俺はやったぞ『修羅』。



次は、お前の番だ。



ダンジョンを 喰らってやれ








———



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