第16話



あの後鈴木さんに見せつけながら食べた唐揚げはとても美味しかった。その後にも飲んだ水が胃と体に染み渡り、生きているというのを感じた。

やはり食は素晴らしい。その間鈴木さんは追加でお酒を頼んだはいたが……


今は鈴木さんと別れて家にいる。うん。

暇だ。

そうだ。ダンジョン配信とか見てみようかな。今やってるダンジョン配信は…っと

これとかいいな。なになに?


『Bランク探索者チーム『紅』!中層探索!レッドオークに挑む!チームメンバー 

リーダー 綾瀬

     矢川

     北条』


〜LIVE配信 120097人が視聴しています。

  

おー…。レッドオークか。懐かしいな。確かAランクの魔物で火魔法が無効化されるという極めて厄介な魔物だ。だが弱点もあり、水魔法が効く。だから水魔法の魔法で遠くから倒すのがベストだ。


『ついに挑むのか…』

『回復薬の準備は出来てるか?』

『出来てるよ〜!本条っちは準備できてる〜?』

『勿論だ。この私の剣で切り刻んでやる』


・ついに挑むのか

・ドキドキ!

・レッドオークか。確かAランクなんだろ?本当に勝てるのか?

・一応Aランクの中でも下位だから大丈夫かと

・今の『紅』なら大丈夫だろ

・頑張ってください!



『みんなありがとう〜』

『期待には応えないとな』

『レッドオークを倒せばついにAランク探索者になれるからね〜』


・そうなの?!

・初耳なんだが

・俺らの『紅』がついにAランクか…。前はDランクでわちゃわちゃやってた頃が懐かしい

・それな

・なんか感慨深いな


あーだからこんな張り切ってんのか。

これは面白そうだ。


『じゃあ行くよ!』

『『お〜!』』


画面越しで第30階層のボス部屋が開かれる。


そこには真っ赤な斧を持ったマグマ色のオークがいた。


『オオオオオオオオオオオオオオオ!!』


『みんな来るよ!』


ハイオークは『紅』の姿を見つけると斧を振り回しながら接近してきた。


『オオオオオオオ!!』


『任せた矢川っち!』

『任されたぜ!』


矢川と呼ばれた男性はレッドオークの攻撃を盾を使って真正面から防いだ。


『オオオオオ?』

『ぐっ。今までで戦ってきたモンスターの中では一番重い攻撃だが防げないことはない!

今だ北条!』

『ああ!スキル『水斬』!』

『グオオオオオ?!』


・よし!

・ナイス矢川!

・やっぱ北条の『水斬』威力がエグいわ!

・魔力が剣士なのに高いもんな



『ナイス北条っち!矢川っちは一旦避難して!』

『おっけー!』

『グオオオオオ!』


レッドオークはまさかダメージが入るとは思わなかったのか。怒り狂いながら北条を狙い始めた。


『グオオオオオ!!!』

『まずい!火魔法がくる!』


火魔法 『ファイヤースピアー』

この魔法は火でできた槍を何十本も標的に当てる技だ。北条に『ファイヤースピアー』が放たれたが持ち前の身体能力と反射神経で軽々と避け続けた。


『グオオオオオ!』

『大丈夫北条っち⁈』

『大丈夫か北条!』

『ええ、なんとか』


・エッグ

・あの量の『ファイヤースピアー』を避ける自信ないわ

・安心しろ少なくとも視聴者の大半は避けれないから

・にしてもレッドオークの魔力量凄くねえか?

・Aランクだからじゃね?

・なるほど?


『矢川はレッドオークの注意を引いてくれ!』

『北条か!わかった!スキル『挑発』』


矢川がスキル『挑発』を発動すると北条にしつこく攻撃していたレッドオークが矢川の方に攻撃し始めた。


『ぐうう。え、Aランクにも『挑発』は効くんだな』

『ナイス矢川っち!そのまま抑えて!スキル『ウォーターカノン』!!』

『グゥぉぉぉ…』


・弱ってきてるぞ!

・このままいけば倒せる!

・いっけええええ!



これはすごいな。よくできたチームだ。ポテチを食べながら見るにはちょうどいい。

タンクで足止めをしてその間に魔法と剣で攻撃か。理にかなっている が


《Aランク》はそこまで甘くはない 




◇◆◇◆◇◆




もう少しで倒せるとコメント欄が盛り上がっていた中、Bランクチームのリーダーである綾瀬は違和感を感じていた。


(なんだろう?嫌な予感がする…)


普通はそこで笑い飛ばすだろうが探索者にとって"感"はかなり重要なものである。"感"とはダンジョンが始まる前から人間の中に備わっており、その感のおかげで生き延びるといったことは少なくないのだ。綾瀬も今まで感に助けられたことは少なくない。だからこそ最悪な展開を回避することができた。



「矢川!北条!レッドオークから離れて!」

「お、おう」

「え、ええ、分かったわ」


いつもの矢川っち、北条っち呼びではないことが只事ではないことを感じたがリーダーである綾瀬の指示によってレッドオークの近くから遠くに退避した。


次の瞬間



『ぐううううオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』


ドオオオオオオオオオン!!


レッドオークが吠えた瞬間にレッドからマグマが溢れ出した。


・ファ?!

・マジかよ……

・これがAランク?

・これ避けなかったらやばかったよね?

・綾瀬が指示してなきゃ2人とも死んでたな

・心臓に悪いって…


「マジかよおい!」

「これはちょっと」

(危なかった。もし遅れていたら今頃視聴者さんがいってたように…)


その光景を想像と体が震え出した。


(うううん。だめだ。みんな生き残ったんだ。今は勝てる方法を考えないと)


レッドオークを見ると全身からマグマが流れていてる。水魔法で攻撃しても蒸発して無意味だろう。


(私の情報不足でこうなったんだ…)


「どうしたんだよリーダー!要するに倒せばいいんだろ?何考えてるかわからんがどうせ情報不足だからこうなったーとかだろ?」

「ダンジョンはいつでも情報不足だわ。だから、これから見つけましょう?」

「うん、そうだね。ありがとう!じゃあまずは遠くから氷魔法で攻撃しようか、北条っちは斬撃をスキルで飛ばし続けてほしい。矢川っちは『挑発』でおびき寄せて仮になってほしい。耐火のポーションと私が耐性の魔法をかけるから」

「任された!」

「さぁみんな行くよ!」

「「おー!」」


『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


・頑張れ〜!!

・俺らもなんとか情報を見つけるから諦めないでくれ!

・俺らもついてるぜ!

・画面越しでもクッソ怖いわ。マジで頑張ってくれ



俺はコーヒーでも飲んで見守りますか。

……ヒントぐらい出すか。流石に初見ではキツいしな。いやでもうーん。


…将来有望だしね、いつか肩を並べるかもしれないから教えるか。恩を売っとけばメリットあるし。減るもんじゃないしな。





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