無機物質-非金属元素-塩素の製法

 塩素はハロゲンであるため、単体として存在することは少ない。


 工業的には、塩化ナトリウム(食塩)水溶液の電気分解により製造される。


 以下では実験室的製法を紹介する。

 実験室では、酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加えて加熱することで塩素を発生させる。この際に生じる気体には、目的の物質である塩素以外に、水蒸気と揮発した塩酸が混ざっている。そこで、塩酸(塩化水素)を取り除くために、発生した気体を水に通す。溶解度の分野で学習したように、塩化水素(とアンモニア)は水に非常によく溶けるので、これによって塩化水素は除去される。さて、水を通した気体は、塩素と水蒸気が混ざっている。水蒸気を除去するために、この気体を濃硫酸に通す。濃硫酸には吸湿性(脱水性ではないことに注意せよ)があるため、気体中の水蒸気を除去することができる。尚、この実験で生じさせている塩素は有毒であるため、実験を行う際は換気のよい室内かドラフト内で行う。


 さて、この反応は、塩酸が還元剤、酸化マンガン(IV)が酸化剤として働く酸化還元反応である。なぜ酸化剤に酸化マンガン(IV)を用いるのであろうか。代表的な酸化剤である過マンガン酸カリウムでは何か問題があるのであろうか。その答えは、発生する塩素が有毒であることから理解することができる。仮に過マンガン酸カリウムを酸化剤に用いた場合、この反応は加熱を必要とせず、自発的に起こる。つまり、有毒な物質である塩素が自発的に発生するということである。これは危険である。ところが、酸化剤に酸化マンガン(IV)を用いた場合、酸化マンガン(IV)は酸化力が弱く、加熱しないと反応が進行しないため、危険な状況になり実験を中断したい場合は熱源(主にガスバーナー)を離すだけで反応を中断させることができる。これが、酸化剤に過マンガン酸カリウムではなく酸化マンガン(IV)を使う理由である。

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