第43話 ライテルーザの戦闘──《スタル、ミヤサイド》──リルアの『──えいッ!!』
装飾された絨毯がいっぱいに広がる一室。
女帝ミリーザと大臣ドルテオ・メールテルト、その部下シャール・アイノルア、そしてホワイトドラゴンの娘リルアが控えていた。
街中では戦闘が繰り返されている中、この場所は至っては安全であった。
アイルとユイ達が出ていった後、リルアは言われた通りミリーザを守るため、部屋全体に聖結界を施していた。
そのためなのか、全く敵が現れず暇を持て余していた。この中にいると街中の戦闘が嘘のように時間が過ぎていた。
「──リルアよ。街中では戦闘が行われているのだろ? ここにいる状態では何も起こっていないように錯覚してしまう……」
これに続くように大臣ドルテオとシャールは頷いている。
「そーですねぇ。街の至る所で戦闘が行われていますね……。でも、ユイさんのお陰で対応できてますよぉ〜。あ! でも、南門辺りのスタルさんやミヤさんの所に、アンデットの竜が現れましたね。この感じは、元ダークドラゴンですね……」
この淡々とした言葉にミリーザは驚きながら聞いてきた。
「──アンデットの竜が敵で大丈夫なのか!?」
リルアは口元に右手の人差し指を当て、質問に返した。
「う〜ん……。大丈夫だと思いますけど……。あ、今お二人が倒しましたよ」
「そ、そうか……。それなら良いが……」
ミリーザがそう言うと、またしても気付いたようにリルアが声を出していた。
「あー……。もう一体来ちゃいましたねぇ……。お二人の魔力はもうほとんど残っていないようですからヤバいかもしれませんね」
淡々と言うリルアにドルテオとシャールは慌てている。
当然ミリーザも慌てた様子を見せている。
「──『ヤバい』と言うことは、殺される可能性があるのか!?」
「可能性というよりも、殺されますね、これ……」
飽くまで淡々と言うリルア。
これにミリーザはリルアにどうにか出来ないか聞いていた。
リルアは、「私なら倒せますよ♪」と軽く答えていた。
「リルア、あの者達はメシアの想い人の仲間だ。助けてやってもらえないか?」
ミリーザの頼みに無言のまま佇んでいたが、──ハッ! と気付いたように言った。
「──ああ、ごめんなさい。助けには行くつもりでしたけど、この場をどうしようかと考えていたんですよ。メシアお姉様からはこの場所を任されましたし……。もし私がいない間にないかあったらと思うとなかなか動けなくて……」
これに答えたのはドルテオだった。
「ワシは大臣だが、これでもこのライテルーザでは指折りの魔法士だぞ? ちょっとやそっとでは遅れは取らんよ」
ミリーザはリルアに視線を向けると、「そういう事だ……」と告げた。
そして続けて頼んだ。
「リルア、あの二人を助けてもらえないだろうか? この場はお前が構築した結界と、ドルテオがいる。それに、私も守られるだけの女帝ではない」
これを聞き安心すると、リルアは腰に手を当て胸を張り言った。
「分かりました! すぐに片付けて戻ってきます♪ ちょっと行ってきますねぇ」
リルアはそう言うと、人の姿のまま純白のスカートを靡かせ窓から飛び出ると、二体目の骨竜を消すべスタルとミヤの所まで一直線に向かった。
※ ※ ※
スタルとミヤは自分達が絶望の中にいると確信していた。
周りにいる騎士達も、もう自分達は終わりなのだろうと感じていた。
「──まさか、本当に二体目が出てくるとはな……。もうコイツを倒せる魔力は残っていないぞ……」
これに同意するようにミヤも続けた。
「──はぁ……。そうだねェ。こりゃあここまでだね……。ユイ達は上手くいくといいね……」
二人は死を覚悟し、骨竜を見上げていた。
そして、骨竜は生きる者を見下し、その命を奪うべく骨格だけの口を開け、漆黒のエネルギーを溜め始めた。
そして、その充填が完了し放とうと────
──が、その時、小さな影が骨竜に向かうと、蹴りを入れながら小さい声を発した──
「──えいッ……!」
この言葉と同時に、先程までブレスを放とうとしていた骨竜は、スタル達の後方の地面に叩きつけられていたのだ。
そしてその小さい影は二人の前に降り立ち言った。
「大じょーぶですかぁ?」
この気軽い言い方にこの場の全員が呆気に取られていた。
そして、ようやく頭が追いついたのかスタルが言った。
「──リ、リルア少女!? ど、どうして!?」
これにミヤが続けた。
「何であんたがここにいるんだい!? あんたはユイ達と部屋にいたんじゃないのかい!?」
「──まぁそーなんですけどね。メシアお姉様達がドーラを探しに行って、その間ミリーザお母様達を守っていたんですけど、お二人が危なくなっていたのでミリーザお母様に言われて来ました! お二人はもう魔力がないようなので……」
その返しに、「──陛下達は大丈夫なのか?」とミヤが尋ねた。すると、淡々と心配する事なく言った。
「一応大丈夫みたいですよぉ。まぁそれに、すぐ戻ればいいので問題なしです!」
だが、この場の者達の心配は絶えず、スタルはさらに聞いていた。
「君はホワイトドラゴンというのは分かるが、まだ子供だろ? あの
これにミヤ達も同意といった感じであった。
しかしリルアは──
「ただの骨の塊じゃないですかぁ……。あんなのには苦戦しませんよぉ〜」
と笑いながら答えている。
その表情に呆気に取られていると、地面から音を立てて起き上がる骨竜の姿があった。
スタルとミヤ、騎士達は顔を強張らせていた。
だが──
「──さてと! さっさと片付けようかな!」
そう言うと、ホワイトドラゴンの娘リルアと元ダークドラゴンの骨竜の戦いが始まった。
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