第1話 再会

(ーーわたしが副担任のクラスはここ、か。2年生で良かった。1年生は慣れなきゃいけないし、3年生は受験だもん。まだまだ自分のことで精一杯だし)


「ふふ。彼方おちかたさんと同じ教壇に立つとは思いもしなかったわね。水無瀬先生、いや、もう彼方先生ね。元気にしているかしら?」

「元気にしています。千夏は張り切ってましたよ。理系の女子をもっと作るんだって」

「一緒に働けなくて残念だったわね。彼女はとても優秀な教師だったから。先生も生徒も残念がっているわ」


 岩見先生はわたしを気遣ってくれている。

 それが嬉しかった。


「あのね、このクラスにはね、Ωの子がいるの。相談に乗ってあげてね?」


 なるほど。わたしが副担任というのはそういうことか。


「わたしにお任せください!」


 わたしは笑顔で岩見先生の後ろについていった。



「ーー2年2組の担任の岩見幸恵と、副担任の彼方結先生です。みなさん、1年間よろしくお願いしますね」

「彼方先生、若くね?新任の先生?」

「そうよ。ピカピカの1年生です。みんな、仲良くしてあげてね?」

 はーいと生徒が返事をする。が、バッとひとりの女子生徒と目があい、わたしと彼女は目を見合わせた。


「清水さん、どうしました?」

「結ちゃんだよね!?私のこと覚えてる!?こよみだよ!」


 わたしはしっかりと彼女の言葉に頷く。


「え、暦、彼方先生と知り合いなの?」

「年は離れてるけど幼馴染だよ。Ω同士で仲良かったんだから」

「え、このクラスのΩって……」

「私だよ。よろしくね、結先生!」


 変わらぬ無邪気な笑顔がそこにはあった。


 ☆


「おぉ……千夏、張り切ってるね」


 家に帰ると机に本の山が出来ていた。


「おかえり、結。春休みの宿題のチェックだよ。3年生だから、頑張らないとね」

「うへぇ。いきなり受験生って大変だね」

「そうだね。あ、ご飯はもうできてるよ。お腹空いてる?」

「空いてるけど、千夏のキリがいいところまで待つよ。先にお湯溜めてお風呂にしちゃってもいいしさ。コーヒー入れてあげるよ」

「ありがと、結」


 わたしはケトルの電源を入れてからお風呂にお湯を溜めていく。


 ドリップコーヒーの用意をする。このコーヒーはつかさ先生がわたしと千夏にくれたものだ。コーヒーだけじゃない。紅茶もくれていた。どうやらそれらは彼女の趣味らしい。今用意しているコーヒーは甘い香りでミルクと相性がいい。


「千夏。入浴剤、どれにする?」

「んー、お花系がいいなぁ」

「りょーかい。今日は一緒に入る?」

「一緒に入る。お風呂でお話しよ?」


 入浴剤もまたつかさ先生がくれたものだ。

 箱から桜のにおいのものをチョイスする。


 コーヒーを2人分淹れて、わたしは集中している千夏の横顔をじっと見つめる。


 わたしの奥さんはとても綺麗だ。

 今日もわたしはこの人に恋をしていた。

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