私と君とあの子と

@ichigomirukukizitora

第1話 あの子と君

4年間、私は彼に片想いをしていた。

彼は、私にとって星のような存在だった。

彼のまわりには、いつも輝くような光があって、その光が、彼が、「私」をつくってくれているような気がする。

きらきら輝く美しい恋。

でも片想いは苦しくて、悲しくて。

心の中はどろどろで醜くて。

いっそ、告白して想いを伝えたら楽なんだろうか。

これは何十回も、今まで考えてきたことで、それでも行動に移せないのは。

「嫌われたら?距離が遠くなってしまったら?私は、後悔はないって思えるの?」

そんな思いが、頭によぎるからだ。

意気地なし。せっかく変えたのに。

彼だけに好かれたくて、優しい、素直な、可愛い子になろうと思った。

「ありがとう」って言いたくて。

「好き」って言ってほしくて。

その決意から、2年ほど経った今。

素直にはなれた。前よりは優しくなった。可愛くなるための努力もした。

趣味も、タイプも、好きなものも、歩き方さえも。

彼のために、全てを変えた。

人によっては重いと思われるんだろうが、それでもいい。

ただ彼と一緒にいられればそれでいい。

その思いは昔も今も変わらず、なんならもっと膨らんだ気がする。

「みくとそうの二人って、お似合いじゃない?」

たまに、そういう声が聞こえてくる。

いつも聞こえていないふりをしているけど、本当はめちゃくちゃじたばたしたい気分。

あ、みくっていうのは私、葉波みくのことで、そうっていうのは私が片想いしている相手、水野奏のことだ。

自分でも、可能性はあるんじゃないか、とは思っている。

(でもなぁ、最近…)

それでも私がもやもやしているのは、最近、奏が入っているグループに、奏といい感じになっている子がいるから。

あ、噂をすれば…

「…そういえばさ、この前○○ででた新作のコスメの〇〇見た!?」

「え見た見た!あれやばいよね、パッケージが可愛すぎて、私変な顔になったもん!!w」

「えどんな顔!?見せて見せてw」

「…こんな顔!!」

「wwwやっばぁw」

…コスメの話をしてるのは分かるんだけど、詳しい話は全く分からない。

今の思いっきり変顔をしていたのが、奏といい感じになってる、赤留みとちゃん。

みとちゃんはいわゆる「女子!」って感じのきらきらしたグループにいる。

そしてそのグループとよくつるんでいるのがいわゆる「男子!」って感じのスポーツが得意な人の集まりのグループ。

そのスポーツマングループの中に奏はいて、今その男子グループは女子グループと混ざった感じで喋ってるんだけど…

「みと、お前そんなことやってるからモテないんだよw」

「うわぁ…w」

など、みとちゃんはよく変顔をするからなのかあまりよく言われているのは聞かない。

「おい、お前ら~朝の会が始まるから席につけ~」

先生が入ってきて、みとちゃんたちは席に戻っていく。

みとちゃんと奏が私の席の方に歩いてきて、思い出す。

そういえば、みとちゃんと奏が後ろの席だった!

そんなこんなで、朝の会が始まった。


~3限目~

3時限目は、班で自分の意見について話し合う授業だった。

「私ねぇ、好きな人いるんだ~」

ふいにみとちゃんがそういった。

「誰だと思う?」

(奏だろうな…)

私は迷わずこの結論に至った。

その理由は簡単で、この前みとちゃんと他の女子が話しているのを聞いてしまったからだ。

でも本人が目の前にいる前で言ってもあれだし、私は黙っておくことにした。

「そうなんだ」

奏は興味がなさそうにつぶやいた。

「あ、奏じゃないから安心してね?w」

みとちゃんは奏の顔を覗き込んで言った。

その瞬間。

「俺もみとのこと嫌いだから安心して」

と冷たく奏が吐き出すように言った。

その言葉を聞いて、私はなぜか、「よかった」と思ってしまった。

…最低すぎる。

自分が嫌いになった瞬間だった。

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