第56話 第二王子派?

楽しい楽しいパーティーも終わり、秋休みは後数日。


十二月からは、二学期が始まるのだ。


俺はしばらく、弟にお手紙を認めたりしていたのだが……。


「「あの」」


「ん?お前らは確か……」


「アラン、です。旦那様」


「ベティもいますよー」


黒髪の猫獣人、アラン。


鳶色髪の犬獣人、ベティ。


孤児達のリーダー的存在だ。


「どうした?課題は終わったのか?」


「「終わりました」」


ほう。


「じゃあ、次の課題を……」


「「館にある課題は、全て終わらせました」」


……ふむ。


「少しテストをしようか」


俺は、二人に軽いペーパーテスト(高校受験レベル)をやらせてみた。


……全問正解か。


なるほど、こいつらもできる。


「使えない奴はいたか?」


「残念ですが、数人ほど……」


「その、その子達は、多分、『障害者』という人だと、思います。目が見えなかったり、喋れなかったり……。ですから、『障害者雇用』と言うものを、適応できませんか?」


ふむ?


他人の目とか世論とか、いくらでも無視できるこの世界で、わざわざ障害者雇用をするメリットはないが……。


「まあ、良いだろう。俺にはよく分からんが、仲間意識というものか。お前らが頑張って無能を養いたいというのなら、好きにしろ」


本人達がそれで良いなら良いんじゃないかね。


「もちろん、無能のままではいさせません。今はまだ予定の段階ですが、旦那様が要求なさった能力水準に届かない人材も活用する術を、私達が必ず見つけます」


ほーう?


「よく言ったな、ベティ。良いだろう、お前らは有能だ。アランと共に幹部の座をやる。お前らはとりあえず、エイダと相談して人材の管理をしろ」


「「はっ!」」


「それと……」


俺は二人の腹を撫でる。


「「ひゃん♡」」


魔力加圧……!


「「お"っ♡」」


……何で男の子のアランまで気持ちよくなってるんだよ。これ、男は気持ちよくならないんだが。


まあ良いや、とにかく、下腹部の魔力溜まりを脳まで押し上げ、魔法使いにしてやった。


今後はこれを魔力覚醒施術とでも呼ぼうか。


とにかく、魔導師の頭数を増やさなければどうにもなるまい。


パーティーで知り合った貴族達や、奴隷商人などからガキを買いまくる……。


聖帝十字領を作る予定はないが、ガキの方が何かと扱いやすいからな。


そして、ノルマをこなしたガキから順に、魔力覚醒施術を施す予定だ。


ガキ共は十二月には初期ロットが届くだろう。


……にしても、アランとベティは非常に優秀だな。


あのクソみたいなスラムで生き残り、孤児のまとめ役をやってきただけはある。


最初は敬語も碌に話せない野良犬だったが、今ではお上品に宮廷言葉まで操る始末。


それも、たった一月の自習でだ。


学習速度だけなら俺に並ぶ……、否、上回るかもしれない。


さあさあ、早速魔法を教え込むか……。




「新学期だ、無能の諸君。ん?何他人事です、みたいなツラをしているんだ?お前ら教師も大体は無能だったぞ?」


「さて、改めまして、能無しの諸君。エグザス・フォン・ザナドゥだ。王から、名誉男爵の称号をもらってやったので、今後はザナドゥと呼んで……いやそれは不快だな。ザナドゥ様と呼んでくれたまえ」


「無能の諸君らは、無意味な魔法学を身につけて、ショッパイ魔法を使えるようになったようだな、おめでとう。諸君らが時間をドブに捨てている間、俺は孤児を五百人集めて、その内三百人を魔法使いにしたところだ」


「魔法使いを増やす方法?教える訳がないだろう?まあ、教えても誰もできんだろうが……。とにかく、俺は順調に勢力を拡大しているところだ」


「いやあ、だが諸君らは本当に運がいい。このVRビジョンを見ろ。……分かったか?つまり、俺に従う者には、秘密結社の上級構成員の椅子を用意すると言っているんだよ」


「上級構成員は良いぞ!俺が開発した魔法の使用権を与えよう!新作のゲームギア関連商品の優先購入権はもちろんのこと、働きによっては魔剣に魔装具、召喚獣も与えてやろう!役立つゴーレムや、勉強会に参加する権利もだ!」


「協力者や出資者でも構わん。忠誠の具合によって、渡せるものの質と量は増減するがな。さあさあ、席は少ないぞ!挙って俺の下に来い!」




二学期の始業式、首席のスピーチで早速気持ちよくなる俺。


秘密結社アウロラの更なる構成員の追加の為、学園でもメンバーを募る。


正式なメンバーではなく、準構成員でもいいだろう。


この国はいずれ崩れるし、教会も、あの横暴ぶりではどうなるか分からない。


貴族諸君にも新しい賭け先を用意してやろうと言うのだよ。


貴族は基本、あちらにもこちらにも血を残し、血脈が途絶えることを避けるもの……。


であれば、秘密結社。


血の契りによらないが、確かな繋がり。


ビルトリア王国に変わる、新たな枠組み……。


今までは、「王国貴族同士だから交流しよう」となっていたが、これからは「秘密結社会員同士だから交流しよう」という道も用意してやるという話だ。


だが、まあ、この秘密結社にはまだまだ王侯貴族様方の大好きな『権威』の香り付けが足りん。


……おや?おかしいな?


先日、『権威の塊』みたいな友人ができたよなあ……?


放課後、サークル活動の場である、秘密結社のアジトこと、元スラムの館に希望者を集めて……。


そこに、友人を呼んだ。


「あ、あのお方は!」


「ま、まさか!」


「だ、だ、第二王子ぃ〜?!!!」


「いかにも、第二王子のギルバートだ。私は、こちらのエグザス君と友人でね……」


そう言って、俺の館に現れたのは、友人のギルバート王子だ。


ギルバートは、笑顔で俺を褒め称える。


「エグザス君は素晴らしい魔導師で、必ずや役立つ魔法を授けてくれるだろうね。確かに、教会からの評価はお世辞にも良いとは言えないが、そこのところは〜……」


流石は王族、口が上手いというべきか。


適当な憶測、希望的観測に軽度の嘘を織り交ぜて、さも俺が善人であるかのように取り繕う。


「第二王子ほどのお方が言うのなら……」


「確かに……、第二王子は聡明だと父上が」


「私も、第二王子に気に入られろと本家から……」


貴族のガキ共は、そうやって囁き合う。


もちろん、サクラとして、着飾らせて変装させたアランとベティなどを集団の中に混ぜているぞ。その辺は抜かりない。


「これは、割れるぞ……」


「うーむ、第一王子と第二王子、どちらの派閥につくべきか……」


「わ、私はこちら側につくわ。兄上が第一王子とご友人だそうだし、私は第二王子と縁を……」


そんな感じで、なんか知らんが派閥のアレのような何かを勝手に感じ取る馬鹿共。


俺はなーんも言ってないぞ?ただ、個人的に友人を呼んだだけだ。


派閥とか、考えたこともない。


勝手に勘違いされちゃあ困るなあ?


まあ、あえて口には出さんがな。


面白いね。

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