第46話 スラム浄化作戦

フランちゃんの館で居候する俺。


最近は、自分の屋敷でも買おうかなーなどと思っているが、良い土地はお貴族様が買い占めているので、広い土地はないそうだ。


郊外は郊外で、既にほぼ満員。


まとまった広さの大きい土地は、もうほぼないらしい。


そもそも、首都らしく地権が入り組んでいて、色んな意味でそれどころではないそうだな。


カラの一坪とか、やっぱりある感じなのだろうか?誓って殺しはやってません!ってか?


なので、スラム街を丸ごと購入してみた。


スラムは、王都郊外、外壁の外側にある開発放棄地区。色々な不動産が地権だけは持っているが、不法滞在しているスラムの人間や、そこに潜んでいる危険な裏組織だの闇ギルドだのがいて、手を出せない不良債権ってことらしい。


なので、スラムの孤児やら物乞いやらを殲滅して、街を浄化し、更地になったスラムにクソデカ屋敷と個人的な街を作ろうと思う。


魔法を使えば楽勝だからな。


え?スラムの恵まれない人達の気持ち?


知らんよ、死ねば?


っと、でも、スラムでもガキは拾ってやろうか。


年寄りは物覚えも悪いだろうから追い散らして、ガキには洗脳教育をして手下にしよう。


秘密結社を作るんだもんな。


組織は人から成るものだ、組織を作るとは即ち、人を作ることだろう。


人は石垣……ってな。


どうでも良いが、人は石垣とか言ってた甲斐のおじさんは息子を切腹させてるよね。どの口で人は石垣とか言ってたんだろうか?


まあ、戦国大名なんてみんなホモの外道、ゲイのサディストだからセーフか。




そんな感じで、魔法で作ったドローンを飛ばして、スラムの測量をしていると……。


「エグザス!貴方にお客様よ!」


と、フランちゃんが現れた。


今日も、日に焼けた小麦色の肌が眩しい。


特に訳はないが、スカートをめくる。


「ひゃわ?!何すんのよ?!」


「フランシス、今俺は忙しいんだ。後で遊んでやるから、向こう行ってろ」


「いや、違くて!お客様が来てるのよ!」


「知らんよ、追い返せ」


まーたゲームに対してご意見を飛ばしてくるカスかぁー?


もう良いよマジで、カスタマーセンターはビークス商会の方にあるって言っておけよ。


「そうじゃなくって……!王家からの使者よ!」


あえーえ?


つまり、勅使ってこと?


なんでそんな奴が……?


まあ良いや。


「今忙しいから後にしろ」


他人様を、いや、この俺様を呼び出そうってのが気に入らん。


無視してやろーっと!


「お願いだから!ほんっとに!お願いだからぁ!王家からの使者を送り返したなんて、本当の本当の本当に拙いのよ?!!!」


うるせ〜!知らね〜!


「会うだけでも!会うだけでも!!!」


んもー、仕方ねえなあ。


フランちゃんがお願いするならなあ?


仕方ない仕方ない。




俺は、フランちゃんの館で、王家の使者に会った。


「貴公……、何故跪かぬ?!王からの書簡ぞ?!」


「は?」


なんか、生っ白いヒョロ男が、高い声で叫んでる。


「エグザス!頭を下げて!」


隣で、フランシスが小声でそう言ってくる。


まあ、意味は分かっている。


王からの書簡、王命をもらう時には、恭しい態度をせにゃならん。


それは理解している。


王命を言い渡す使者の言葉は、今この瞬間だけ王の言葉と同じ価値がある、と。


だが待ってほしい。


「なんで俺が、王家なんぞに従わなきゃならんのじゃ」


俺より弱くて、間抜けで、こんなアホ臭い国で王家なんぞやってるボケカスに?


俺が従う?


はっ、ジョークのセンスだけは一丁前だ。


「き、貴様!何を言っている?!」


「一昨日きやがれ、オカマ野郎」


そう言って俺は、使者が持っている書簡を魔法で焼いてやった。


あーーーーー……。


気持ちええ……!


なお、隣で見ていたフランちゃんは、泡を吹いてぶっ倒れた模様。


草生える。




ブチギレて帰っていった使者を追い出しつつも、俺はスラム街に来ていた。


「へへへ……、お貴族様の坊ちゃんがぷげれ」


俺は、目の前にポップしてきたカスの頭をポンと吹き飛ばしつつ、スラムを移動する。


「う、うわあああああっ!!!こ、殺した!このガキ、殺しやがった?!!!」


「マイケル!そんな!嘘だろ?!」


「テ、テメェ!なんの権限があってこんなことを?!!!」


なんかモブキャラがうるさいな……。


「スラムのカスでしょ?スラムの奴らは市民権がないから殺してもOKらしいじゃん。だから殺したんだけど?」


「は……、はは、こいつ、イカれてやがる」


「まあ、なんと言おうと結構だがな。俺はイケメンで優しくて善人だから、お前らのような生きる価値のないカス共にもちゃんと忠告をしてやる」


そう言って俺は、拡声の魔法を使い、スラム街全体に声をかける。


『あー、あー、マイクテストマイクテスト……。ごほん、えー、スラム街のゴミ共の諸君!おはようございます、エグザスです!』


まずはあいさつ。


そして本題。


『先日、俺は、スラム街の土地を全て購入しました!スラム街は、端から端まで全て俺のものです!ここにいるあなた方は、全員、不法占拠者扱いとなり、抹殺が許可されております!』


で、締めに……。


『日没までに出て行かないアホは殺す。とっとと消えろ』


と。


こんなもんか。


おっと、いけないいけない。


それともうひとつ。


『しかし、俺は鷹揚で寛容だ。俺に従うと誓う、十二歳以下の子供であるならば、種族も性別も問わず生かしておいてやってもいい。……老害の諸君は大人しく消えるか、消されるかしてくれ』


っと、これで完璧だ。


「た、大変だ……!せ、戦争が始まるぞ……!」


スラムのカス共は、そう呟いて慄くと、走って逃げていった……。

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