第38話 早速の決闘

入学式後。


俺は、エイダとフランシスを両脇に並べて歩く。


フランシスは、前代未聞だのなんだのと騒いでいる……。


「だからっ!あ、あんなことしたら……!」


「なぁにが拙いんだ?瞬きする間にこの街を消せる俺が偉そうにして何が悪い?」


「だ、駄目よ!本当にお願いだからやめてよ?!」


「どーしよっかなー?」


「お願いだから!何でもするから!」


「ん?」


今何でもするって……。


そんな感じで、俺がフランシスを弄くり回して遊んでいると……。


いきなり、十人ほどの生徒らに囲まれた。多分上級生。


「誰だ、お前ら?」


俺は、エイダの胸を揉みながら訊ねる。素晴らしくもちもちだな。流石に十二のガキの乳を揉むのは初めての経験だ、新鮮で良い。


「貴様……!」


前に出てきたのは、金髪サラサラのイケメンだ。まあ、俺には劣るけど。


俺がハリヴッドの大スターだとしたら、こいつは日本の二流モデルくらい?ジャなんとかみたいなの。


……あれ、イケメンじゃないのに何で売れてるんだろうな?ブサイクってほどでもないんだろうけどさ。


まあ、ある程度ブサイクでも、男は他で挽回できるってことか。


けど女は美人じゃないと他の能力があっても敬遠されがち……。


どっちが辛いんだろうなあ?


で、何だっけ?


この……、こいつは何なの?


誰だと聞かれて貴様と返す?どう言う教育を受けてきたんだ?


「へえ、あなた、キサマって言うのね!酷い名だ、親の顔が見てェーわ」


「……クラディオン伯爵家嫡男、セイ・クラディオンだ」


「クラディオン……?あー!あれでしょ?枯れかけ鉱山しかないゴミプロビの」


あー、思い出した。


先生から習ったよ。


伯爵家だが金の回りが悪いと評判らしい。


「ゴミ……?!ゴミだと?!貴様!我が家を侮辱するのか?!」


「侮辱もクソも、お前ん家マジで何もないじゃん。なーんで鉱山掘り尽くす前に産業化しておかなかったんですかね?アホなん?」


「き、貴様……!許せん!決闘だ!これは、我が家に対する侮辱を撤回させる為だけではなく、学内の秩序を乱す貴様を排除する為のものでもある!私が勝てば、学園から消えてもらう!」


はあ。


血糖……?あ、決闘か。


あーはいはい、そう言うアレね。


「この周りの奴らも殺して良いのか?」


なんか囲まれてるからなあ。


「……彼らは見届け人だ」


あっそう。


見届け人でも何でも良いけど、歳下を多数の人で囲んで恫喝する辺り、お里が知れるなあ。


「お前は殺して良いの?」


「やれるものなら、やってみろ!!!」


ほーん。


俺が指を弾こうとしたら……。


「ちょっまーーーーーっ!!!!」


凄い勢いでフランシスが腕を掴んできた。


「どうしたフランちゃん?構ってほしいのか?おーよしよし」


「ちょっと、本当に待って?洒落にならないから待って????」


「おうよ」


「待っててね?何もやらないでね?お願いよ?フランちゃんのお願い」


フランちゃんを自称するのは草。


面白いので待ってやろう。


「おう」


「エイダ!そいつに何もやらせないで!お願いよ!」


「はい!」


と、威勢よく返事するエイダだが、こいつはお前には従わんぞ?


そして、フランシスは。


「んっん……」


と咳払いしてから、ゴミプロビの人に向き合った。


「失礼しますわ、クラディオン様」


「貴方は……、クライン家の?」


「ええ、フランシスと申しますわ」


「これは失礼しました。セイ・クラディオンと申します」


「クラディオン様……、前置きはせずに、単刀直入に申し上げます。どうか、おやめ下さい」


「しかし……!」


「クラディオン様。こちらのエグザスは、加減や容赦をしません。勝っても負けても損にしかなりませんわ。騎士爵崩れの侮辱など、犬に噛まれたと思って……」


「いや、それはできない!私はこの学園の生徒会長なのだ!学内の秩序を守る為にも、彼は許せない!」


「でしたら、せめて、決闘の作法だけでも彼に……」


「……先ほどからのクライン様の口振りは、私が負けるかのようですね」


「そ、それは……!」


「私が、試験で不正をしたような者に負けるとでも?」


あはーん?


そう言うアレになってんだ。


おもしれーな。


まあ、人間なんてそんなもの。自分の理解できないものは「何かの間違いだ!」と主張するのが当たり前……。


何かの間違いが起きたら、何故その間違いが起きたか検証しよう!と思えるような奴はそうそうおらんのよな。


大学で習うはずなのにな!おかしいな!


「え、ええと……。そ、そう!彼にも、負けるにしても降参の仕方が分からなければ死んでしまいますわ!それはあまりよろしくないかと!」


「む……、分かりました。少し待ちましょう」


「ありがとうございます」


そして、フランシスは……。


「良いかしら?!ぜっっったいに、殺しちゃ駄目だからね?!」


「何割殺して良い?」


「何割とかじゃなくって、怪我させないで!」


「それじゃ決闘にならなくない?」


「と、とにかく、なるべく痛めつけないで!」


「まあ分かった」


さて……。


「えーっと、ゴミプロビさん」


「クラディオンだっ!!!」


「俺が負けたら学校をやめろって話だったな」


「……そうだ」


「お前が負けたらどうするんだ?」


「何だってしてやろう」


ふーん?


「じゃ、整形してやるよ」


「せい、けい?」


「お前の鼻を削り取って、代わりにゴブリンの鼻をつけてやる」


「どこまで……!貴様は、どこまで私を侮辱する気だ?!!!」


「無論、どこまでも」


隣のフランシスが見事な絶望顔をする中、崇高なる決闘が始まる……!




「ぐぎゃあアアアアアアア!!!!」


終わった。


あんだけ偉そうにしてたのに瞬殺されちゃったよ、ゴミプロビの人。


悲しいね。


なんか、よく分からん火をぴょいぴょい飛ばしてきたが、俺の身体の表面には常に、魔法を分解する『ディスペル』と、過度のエネルギーを吸収する『バリア』を張ってあるから……。


理論上は核ミサイルが降ってきても死なないんだよね。


で、今。


予告通り鼻を削り取ってやった。


なので早速、ゴブリンの鼻を移植してやる。


「はい、終わり。お似合いですよー」


「あ、あ、うわアアアアアアア!!!!!」


おーおー、狂乱じゃん。


面白いね。


鼻を隠しながら逃げていったよ。


「何だったんでしょうね?」


とエイダ。


「暇人ってのはどこにでもいるもんだなあ。羨ましいわー」


と俺。


絶望顔のままフリーズしたフランシスを抱えて、クライン家の屋敷に帰宅した……。

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