第24話 ゲーム機の産声
死体に直接情報を書き込んで操作する魔法は、『死霊魔法』とでも定義しておこう。
そして、この使い魔は、『魔導具化した生命体』という微妙な枠組みだ。
いや、待てよ?
モンスター……。
そう、モンスターの体内には、元々魔石があるよな?
で、モンスターの中には、魔法を使ってくるやつもいる……。魔法の演算装置は魔石。
俺が作り出そうとしている使い魔は、魔石を埋め込まれた生物。
……これってさ、モンスターも、使い魔と同じ定義の生き物なんじゃねーの?
『魔導具化した生命体』が、モンスターであり、使い魔である。
じゃあ、使い魔の創造は、モンスターを作る技術ってことか。
って事は……、『召喚魔法』とでも便宜的に定義するか。別に召喚する訳じゃないが、イメージでね。良いんだよ!召喚のシステムはいずれ実装するから!ハード(召喚される使い魔)を先に用意しただけだ!ソフトは後!
……と、そんな話をエイダにした。
「凄いです!」
エイダは基本的に、「凄いです」マシーンだ。
理解してるのかは謎。
一方で、その話を聞いていたマーガレット先生は、顔面がゲシュタルト崩壊して前衛芸術みたいになっていた。
面白いね。
あと、魔導具を作る魔法は『付与魔法』としておこうか。
そっかー、魔石に情報を書き込めば良いのか……。
………………ふむ。
そう言えば、金儲けもしたいんだよね。
今までは、村の隠し畑ゾーンでとれたものを、遠方の商人に売っていた。いや、まだこの地域にない野菜とかは売ってないけど、蜂蜜や蜂蜜酒とかをね?
それがかなり良い値段で売れていて、弟達と利益を分け合い、今手元には金貨百枚足らず(一千万円ちょい?)あるんだよ。
でも、こんなんじゃ足りないよね。
派閥を形成するんだもん、金なんていくらあっても足りないよ。
そんな訳で、商品を作る。
えー、まず、ガラス板とプラスチック板を重ねます。
両脇にプラスチックを設置。
プラスチックの上にボタンを設置。
魔石を埋め込んで……。
そこに、あらかじめ作っておいたゲームを書き込む。
「こんなもんかな?『ファイルプリント 《テトロス》』っと」
起動ボタンを押すと……。
《てーてれてーてれてーてれてーてれてーてれてーれーてってってー》
おし、できた。
某有名落ちものパズルだ!
「エイダ、デバッグよろしく」
「デバッグ?」
「あー……、弄ってて壊れたら言って」
「はい!」
うーん、売れるかなあ……。
この世界、文盲がかなり多いから、大作RPGとか作っても売れなそうなんだよね。
だから、アホでもできる直感的な落ちものパズルとかなら売れそうなんだけど……。
あ、因みに、今ので一連の動作は保存してあるから、その気になれば秒間数百個のペースで量産できるぞ。
「……あっそこ……、違う、そこは……」
あ、先生がテトロスをプレイ中のエイダの隣で、なんかブツブツ言ってる。
……欲しいんだな。
「先生、一つあげるよ」
「ありがとうございます!!!!」
めっちゃ嬉しそうじゃん。
面白いね。
馬車の中でメチャクチャにテトロスをやり込む二人。
「マーガレット様、得点どこまで行きました?」
「ふふふ、十万と少しよ」
「凄いですー!コツとかあるんですか?!」
「これはね、こんな風にして……、溜めてから、長い棒で一気に消すの。そうすると、得点が大きくなるのよ」
「へー!そうなんですかー!」
そんな和気藹々としたところに、俺は突っ込んだ。
「で、改善点とかあります?」
「え?面白いですよ?」
とエイダ。
まあ、こいつは良い。
先生は?
「そうですね……、まず問題としては、『面白過ぎる』と言うことですかね?」
ふむ?
「確実に、手に入れるための争奪戦が始まるわ。大混乱でしょうね」
物売るってレベルじゃねえぞ!ってこと?
「最初は、好事家に売れる程度でしょうけど、評判が広まれば街中の人が欲しがりますね」
そんなレベルか?
「いやぁ、魔石を入れ替えると別のゲームができたり、あとは対戦機能とかも付けようと思うんですけど」
「やめた方がいいです!大変なことになりますよ?!人気過ぎて!!」
「でも、一秒間に百個は作れます」
「あー……、じゃあ、その……、やってもいいとは思いますが、売り子とかはどうするのですか?」
「人を雇います」
「なるほど……。でしたら、カーレンハイト家の伝手を用意いたしましょうか?」
「ああ、お願いします」
「いえ、確実に儲かるので……。と、ところで、別のその、げーむ?というのは、どんなものがあるのですか?!!」
そうねぇ……。
俺は元々、学生時代は同人ゲームを作っていた。
小学生の頃は『flash』というソフトが流行っていたから、それで適当にゲームやアニメを作って、ネット掲示板や自サイトに公開して遊んでいたっけな。
中学生の頃には、本格的にプログラマを目指し始めて、『RPGツクローゼ』というソフトを販売したところバカ売れし、「俺はプログラマとしてやっていける!」と自信をつけんたんだよな。
高校からはパソコン部を作って、学園祭とかで大作RPGを公開したりして、それの完成度が高いとネットで話題になったりしたなあ。俺が作った高校の頃のゲームは、当時のソフトを買おうとすると開封品でもプレミアで十万円くらいするらしい。
大学以降も、息抜きにゲーム作りはしていたし、かなりそっちも稼げていた。
多分、本業たるプログラマの収入には届かないが、ゲームクリエイターでもまあそこそこに食っていけたはずだ。
まあでもやはり、より上のゲームクリエイターを見た時に、俺に向いているのはプログラマだなと悟ったものだ。
俺はゲームクリエイターとしては秀才程度に過ぎないからな。
本物の天才や奇才と比べると、見劣りがするもんだ。
……とは言え、暇な時にはやっぱり、趣味程度にゲーム作りをしていたのは、この世界に来てからも同じだ。
「今手元にあるのは、《テトロス》と《ぽよぽよ》、《ラックマン》、《スーパーマルオ》、《ドラグーンクエスト》ですかねえ……」
全部パクリゲーだが、俺の世代のflashゲーム全盛期はこんなもんだった。
とは言え、タイトルはパクってるけど、ストーリーはオリジナルだぞ?
「どんなの?!どんなのですか?!」
「あー、じゃあほら、あげるんで」
「わぁい!」
×××××××××××××××
ゲーム機(魔導映像機)
魔神エグザスが作った魔導具の中でも、当時、特に話題になったもの。
他に、魔導冷蔵庫、魔導洗濯機、魔導焜炉と合わせて、俗に『四種の神品』と呼ばれた。
この時期のエグザスの魔導具は、従来の、『戦闘やそれに関するもの』という定義を打ち破り、『日常生活を豊かにするもの』という、新しい魔導具の形を生み出した。これは、経済史においても著名な話で、「まず民を豊かにしてから、その消費で国を豊かにする」という思想は、経済界では『エグザス経済』と呼ばれる。
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