ギャルな巨乳女子高生が告白されまくって困っているって相談しにきたから、偽装彼氏になることを決めました。えっ? なんなのこいつもう! 聞いていないんですけど!

フィステリアタナカ

第1話

「ねぇねぇ。あたし先輩から告白された!」

「もしかしてサッカー部のイケメン?」

「そう! ユニフォームに自作の紋章エンブレムをつけてもらうよう顧問先生にお願いしているんだって」

「カッコよくて絵が描けるなんて、なんか羨ましい」

「あんたの彼氏、金持ちなんだからいいじゃん」

「まあね。でも今彼氏と喧嘩中」

「そうなの? ねぇ、ユメも彼氏作りなよ。告白されまくっているんでしょ」


「うーん。来る男子はみんなエッチな目をしているから、ちょっとね」

「仕方ないよユメ。あんたおっぱい大きくてスタイルいいんだから」


 僕がスマホで漫画を読んでいると、教卓の近くで、みんなからカワイイと言われている派手目の女子達が何やら喋っていた。彼氏の話をしているみたいだが、僕には縁遠い話だ。


「よっ、健次けんじ。頼みがあるんだが」

「なんだ?」

「数学の宿題の範囲のノート貸してくれないか?」

「お前なぁ。彼女に見せてもらえばいいだろ」

「あいつは数学苦手なんだよ。頼む、後でラーメン奢るから」

「ふぅ」


 僕は机の中から数学のノートを取り出し、渡す。


「五限目までに返してくれよ」

「サンキュー。やっぱ持つべきものは健次だな」

「そこは友達だろ」

「そうだな。じゃあな、健次」


 僕は次の化学の授業の為に、教科書とノートを準備する。幼馴染の彼女がいるあいつが正直羨ましい。カッコイイとかお金持ちだからと彼氏を選ぶ女子には少し疑問がある。外見や親がお金を持っているとかは一番ではないと思う。中身だろと。だからお互いの性格中身をよく知っているあいつが本当に羨ましい。


(じゃあ、行くか)


 移動教室のため、僕は化学室に向かう。高校二年生になって授業は難しくなってきたと感じつつ、廊下の窓を見ながら歩いていた。窓の外には桜の木が見えるがまだ咲いていない。早くつぼみから花が咲けばいいなと思っていると、後ろから声をかけられた。


「ねぇ、矢野やの君」

「ん? 石橋いしばしさんどうしたの?」

「この前、隣の班なのに実験手伝ってくれてありがとうね」


 声をかけてきた彼女は石橋夢乃ゆめのさん。先ほど教卓の周りにいた派手目の女子達の内一人だ。染めていない亜麻色の髪と大きな胸を持つクラスメイトだ。第二ボタンが外れているので下着が見えるのではと、どこかで期待している自分がいた。


「そんなことないよ。それより、石橋さん。下着が見えそうだからボタン閉めたら」

「矢野君の下の名前って健次だっけ?」


 どうやら彼女は僕の言うことは聞いてくれなさそうだ。


「そう。それで合っている」


 太陽の光で廊下が明かるいなと思う中、彼女と話しながら化学室に行く。


「周りの子みんなカワイイから、彼氏がいるの」

「そうなんだ。外見を気にしなくてもいいと思うよ。中身が大切だから」

「矢野君もそう思う? やっぱ人間中身だよね~」

「外見はなかなか変えられないけれど、中身は磨けるからね」


 彼女はその言葉を聞き、何かを考えているようだった。


「相談したいことがあるんだけど、矢野君放課後暇?」

「何もないから大丈夫だけど」

「じゃ、お願いね」



 いつものように授業を受け、昼休みは石橋さん達のグループが楽し気に喋っていた。僕はお昼を食べ終わった後、また漫画を読み始めると、


「健次! ほい」


 僕は放り投げられたノートをキャッチする。


「ありがとな。じゃあ」

「彼女のところに行くんだろ」

「正解。またな」


 昼休みが終わり授業が始まる。午後の授業は眠たくなるのを我慢して、先生の話を聞いていた。五限目六限目となんとか眠らずに授業を受けて、放課後になった。


「ユメ。ケーキ食べに寄らない?」

「あたい今日は用事あるからパスで」

「そうなの」

「それに先生に怒られて掃除しないといけないから」


「わかった~。先に帰るね」

「じゃ、別の機会にね。ユメ」


 僕は掃除が終わるまで、教卓の上で漫画を読んでいた。


「矢野君」

「ん?」

「みんなが帰ってからでもいい?」

「うん。大丈夫」


 掃除をしていたクラスメイトが帰っていく。石橋さんは二人だけになったのを確認して、


「矢野君さぁ、彼氏になってくれない?」

「ん? 相談だよね?」

「あたいおっぱい大きいしスタイルいいじゃん。体目当てに告白してくる人が多いから嫌になってさ。彼氏のふりでいいからさ」

「ああ、風よけになってくれと。それ僕じゃなくていいでしょ?」

「他の男はいやらしい目をしてくるから気持ち悪いの」

「うーん。僕もそんな男だよ」

「中身重視って言っていたじゃん。周りの子達に彼氏にした理由を聞かれたら、そう答えようと思って」

「そういうことね」


 僕は困っている石橋さんをどうしたいのか、少し考えた。


「わかった。いいよ」

「ホント!」

「彼氏のふりでいいんだろ」

「ありがとう! いやー本当に困っていたから助かる」


 彼女に手を掴まれ、ブンブンと縦に振られる。前かがみの姿勢になっているので彼女の胸の谷間が見えるが、役得だと思うことにした。


「それで、僕は具体的にどうしたらいいの?」

「うーん。ふりだとバレないように恋人っぽいことをたまにしてもらえればいいかな」

「わからん」

「っていうか、そこは男が考えるところ!」

「やっぱ、彼氏辞めるわ」

「ウソウソ、一緒に考えよっ!」


 こうして僕に(偽装)彼女ができた。きっとこれも高校生活のいい思い出になるだろう。


「じゃ、今日はドーナツ奢ってね。あっ、それと欲しいバックがあるの」


 僕は偽装彼氏になったことを早くも後悔した。

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