第3話

 夏の暑さもピークを迎え、夏休みも後半に差し掛かかる今日この頃。


 今日は用事があり、夏休み中だけど学校が来ています。

 この学校は課題が早く終わったら、夏休みが終わる前に提出しても大丈夫なのです。


 わたしはほぼ毎日家から出ずに、周りと差をつけるために、コツコツと課題に取り組んでいたので結構早めに終わった。


 勘違いしないでほしい。けして友達が少ないから、ずっと家にいる訳ではありません。遊びたいと多少思ってるけど、都合が合わないだけです。


 南さんと陽葵さんは、とてつもなく友達が多いので、わたしに構ってる暇はありません。

 彼女らが例外なだけで、わたしのように家にいるのが普通のはず。


 でも友達が2人しかいないって、ちょっと寂しい。わたしのように引きこもり願望が強い友達が欲しいな。


 そんなことを考えながら先生に課題を提出すると


「あっそうだ。小鳥遊このあと暇か?」


「暇と言えば暇です」


「そうかじゃあこのプリントを、白石小春しらいしこはるの家まで届けてくれるか?」


 プリントを受け取り、小春さんの家までの道を確認して職員室を出た。


 小春さんの家は学校から歩いて15分ほどの距離だった。暑くてダルい体を引きずり、途中何度か迷いながらも無事に彼女の家に到着した。


 そういえば小春って名前、聞いたことないな。もしかしてずっと学校に来てない子かな。

 なんで学校に来てないんだろう?病気?家庭の事情?まぁ深く考えないようにしよう。


 それにしても小春って名前可愛いな。明るさを感じられる名前って、可愛くて羨ましい。


 脳内で小柄でかわいい女の子を勝手に想像する。

 これをきっかけで仲良くなれたりして!


 インターホンを鳴らし、ワクワクしながら美少女が出てくるのを待つ。


 少し時間がかかったが、ゆっくりと扉が開いた。


「こんにちはー!!プリントを届けに来ました!!」


 元気よく挨拶すると、170cmくらいのモデル体型の女性が出てきた。


 わたしは一瞬で委縮してしまい、天敵を前に震えて、なにもできないネズミのようになってしまった。


 身長たっか!?金髪だしピアス開けてるし。しかも軟骨のほうに開けてる。これなんだっけ?カフスって言うんだっけ?


 美人だけどヤンキーに見えて怖い。小春ちゃんのお姉ちゃんなのかな?


「もしかしてお姉さんですか?こ、妹さんの小春ちゃんっていますか?」


「小春ってわたしだけど。あとちゃん呼び気持ち悪いから止めてくれる?」


 なにこのギャップ!?彼女の威圧感に圧倒され、わたしは口ごもってしまった。このギャップ…どうやって接すればいいのか分からない。


 どうしよう…睨まれただけで気絶しそう…暑さもあってか熱と緊張のダブルパンチで、パタリと倒れてしまう。


「はぁ!!なんで急に倒れるの大丈夫かよ。ん?よく見たらこいつ可愛い顔してんな。危ないし取り合えず部屋に入れるか」


――


 あれ?体が異様にスースーする。特に下半身辺りが。そういえばわたし何してたんだっけ?


 ダルさを覚えながらゆっくり起き、違和感のある体の状態を確認する。


「なにこのダボダボなシャツ?」


 更に下に視線を送ると今まさに、わたしのズボンと下着を脱がしている、小春さんの姿が見えた。


 まだ寝ぼけていて、状況を把握できずにいると小春さんと目が合った。


「大丈夫か、もう元気そうか?」


 少しずつ事のヤバさを実感していく。


「な、何してるんですか?」


「見りゃ分かるだろ。お前もスッキリしたいだろ」


 ズボンどころか下着も脱がせ、スッキリさせる。この言葉の方程式から導かれし答えは…


「もしかして、えっちなことしようとしてますね!?まさかそのために、部屋に連れ込んだのですね!!」


「いやお前がいきなり倒れるし、汗びっしょりだし、そのまま外に放置できないだろ」


「え?わたし倒れたんですか?」


「いきなり玄関でな。一応タオルで軽く汗拭いといたから。汗を吸い込んだ服のままだと、気持ち悪いと思って変えといた」


「あ、ありがとうございます」


 えぇ!とんだ勘違いをしてしまった。凄い、いい人でした。


 あまりにも恥ずかしすぎる。さっきのわたしの言葉を忘れてくれないかな。


「あの用事も済んだし、このまま居座っても迷惑だと思うから帰るね」


 逃げよう。この黒歴史は真っ先に忘れないと。


 彼女は、そそくさと帰ろうとするわたしの肩を強く掴んだ。


「ねぇさっきのえっちなことってなに?」


 いやー!!そこを言及しないで…


「きっと何か聞き間違いですよ」


「もしかしてそういうのを期待してた?」


 腰に手を回して体をグッと密着させた。


「ねぇどうなの?」


 に、逃げられない。さよならわたしの青春。


 しばらく沈黙が続く。怖くて声が出ないよ。


「冗談だよ」


 そう言うと、可愛らしい笑顔を見せた。なんだそういう冗談も言えるんだ。焦った~


 どっと疲労感が体に広がり、ヘロヘロになる。


「そうだ、シャワー浴びてきなよ。タオルで拭いたけど、まだ少し汗で気持ち悪いでしょ」


「大丈夫ですよ。これ以上迷惑かけられませんし」


「浴びてくよね…」


 声のトーンが下がり圧を感じる。


「はい、浴びていきます」


 反射的に言ってしまった。まぁ、ただシャワー浴びるだけだし大丈夫でしょ。


 ――


「ここに着替え置いとくから」


「分かりました」


 洗面所から小春さんが出ていくの待ってから、浴室に入る。


 よし、さっさと体を流して帰ろう!!


 そう思ってシャワーを流すと、ふとシャンプーのボトルが目に入った。


「このシャンプー結構高いやつだ。いいなぁ、この匂い好きかも」


「わたしも、そのシャンプーの匂い好きだよ」


「へーそうなんですね……なんで小春さんもいるんですか!?しかも裸じゃないですか!!」


「シャワー浴びるんだから裸で当たり前でしょ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る