第九章 献身と自由
9-1
「からあげにしたら美味えだろうなあ」
鼓童が肉を咀嚼しながら呟いた。
焚火を囲み、捌いた野衾の肉を焼く。食べる部分が少なく、硬めの食べ応えだが、狩りをするまでもなく供給される点は良かった。自ら顔に飛び掛かってくるからだ。
肉の処理は手分けして行ったが、四蛇の手際がいいので、句朗は感心した。
佐治がみなの一歩後ろに佇んでいたため、句朗は肉を勧めようとして、憑き物は食事しないのだと思い出す。無意識に、人間扱いしていたようだ。
「時間がない」
四蛇が、浮文紙を見ながら言った。ワロからの連絡らしい。
十日後に、蒼羽隊の慰霊式がある。年に一度催される式典で、本部にいる蒼羽隊全員が集められ、名法師、ヨア、リアの三人が人前に姿を現す貴重な機会となっている。
次の計画は、その日を狙って蒼羽隊本部へ行き、ワロと目有を、スムヨアに引き合わせることだった。
「ヘドリアを待たずに、出るべきだ」
史紋が言う。
ヘドリアの容態は芳しくないとのことだった。又旅と茶々をヘドリアの元に残し、他は山の麓でヘドリアの回復を待っていた。彼女は自分が犯した罪を認識し、受け止めることができていないそうだ。無理もないことだと句朗は思った。
又旅は償いを促すような方向で、彼女の心を繋ぎとめようとしているようだ。
「みんなは、どうする?」
四蛇が桂班の五人に尋ねる。
「俺は行こう」
史紋が即断する。
「僕も」
「私も」
句朗と入が答える。
傘音は四蛇を見つめたまま少し止まり、鼓童は大げさに顔を顰めて仰け反った。
二人とも、ヘドリアに自分の魂を見てもらい、元の自分を教えてもらえるのを心待ちにしていたのだろう。
迷いはあったものの、ほとんど二人同時に「俺も行く」「私も行く」と言った。
又旅、茶々、乞除、佐治とはそこで別れた。ヘドリアや佐治が一緒であれば、又旅たちが憑き物に襲われることもないだろう。
桂班と四蛇の六人は、ザムザを経由して、蒼羽隊本部を目指す。
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