第6話 創造者の名は…………。

 こうした理由から、力のない者にとって討伐は無理でも、何か見つければ数日は凌ぐことが出来る。それに、都合よく荒野には機械の山が点在。二人にとっては、宝の山ともいえるだろう。ではどうして、他の者たちは残骸ざんがいを求めようとしないのか。


その理由は二つあった。


 先ず一つ目は、ほとんどの者達はギルドに属しているということ。危険は伴うが報酬は高く、所属しているだけで毎月一回の賃金が支払われる。といっても、仕事の内容は交代制での見張りや討伐依頼、ろくに休む暇さえなかったという。ゆえに、あるかないかの宝を探し回るほど暇ではないということ。


 そして二つ目は、当然のことながら壊れた機械にはなんの価値もない。であるならば、直して使えばいい。確かにその通りではあるも、実際は中々に厳しい状況だ。その理由は、修繕・補修といった補強する者達はいるが、修理・修復などの壊れたものを完全に元へ戻す技術者はいない。


 といいながらも、若干の優れた技能を持つ者はいる。からといって、その者達は全てがスターチスギルドに属した人間。一般からの依頼だと、かなりの高額な金額を要求された。それよりも、惑星テロメアからの新製品を購入する方が非常に安い。これらのことから、残骸ざんがいを集めてもなんのメリットもないといえる。


 ところが、不要な鉄屑も価値ある物に変化させる者がいた。その人物はどこにも属さず、各地を転々と渡り歩き荒野を彷徨う。誰に教わったわけでもなく、不思議と壊れた物を再生することができた。とはいえ、ここまでなら他の者達とも大差はないかも知れない。


 けれども、この者が凄いのはそれだけじゃない。様々な部品から新たな形を創造し、自然の力を応用した未知なる発明を生みだす。まさに天性の才能とでもいうべきであろう。大陸中を探せど、他に類を見ない驚くべき存在。


 ひとたび何かに没頭すれば、我を忘れて夢中になることも度々。そんな感じだからか、親しき仲間には機械のようだと譬えられ、メカニカル機械人間と冗談で呼ばれることも。しかしながら、全てが万能というわけではない。つまりは、生み出す創造は得意でも、狩猟のような動物を殺すことは苦手。


 ちょっぴりお茶目で、温かな心を持った優しき人物。その名は、りん。義兄弟の紅蓮ぐれんと共に、世界を旅する放浪者であった…………。

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