第5話 永久不変の存在
天体の大衝突によって引き起こされた壊滅的な打撃。楽園のような惑星であったペンタスは、一瞬にして混沌とした世界に陥ってしまう。これによって大陸の半数以上は失われ、家畜を含めた様々な動物達が死滅することになる。
こうして食料難となった世界では、一体どのような事が起きるのであろうか。状況を察するまでもなく、取引は主に物品交換が主流となる。そのせいもあり、お金という概念が次第に価値を持たなくなってしまった。そして今まで使用していた通貨もやがて意味を失う……。
このような形式となり、どれくらいの時が過ぎたのだろう。周辺の情景から窺えば、ゆうに数百年は経過した事になる。
ところが、再び通貨の時代がやってきた。といっても、以前から使用していた硬貨は廃止され、新たな貨幣が導入される。では何故、過去のものを使用しないのか。 無駄とも思えるような行為に、
先ず順を追って説明するなれば、このお金を製造したのは国ではない。というのも、天体衝突から以降、国家は法の尊厳を失うことになる。これにより、権威を失った組織は機能を果たせなくなり、次第に世界から無くなっていった。
そのため整備されない大地は荒れ果て、もはや道路と呼べるものではない。そればかりか、街では食料の強奪や殺し合い。犯罪などが横行し、強いものが弱いものを抑圧する時代となる。
これらのことから、動物界では弱肉強食とよく言ったものだ。しかしながら、まさか人間界でも行われようとは、思っても見なかったに違いない。全ては一つの出来事から始まった悲しき事実。未来も希望すらない世界は、やがて無法地帯と化す。
――かと思えば、捨てる神あれば拾う神あり。大陸を茫然と眺める一人の女性。
その女性は
こんな荒廃した惑星に価値などありはしないというのに、一体なにが目的なのであろう。
こうして街の治安は保たれ、活気を見せ始めることになる。といっても、気になるところは重要な食料。もしかして、衝突以前から地下にでも蓄えていたのかと思われるが、それだと汚染された大地のように穀物もただではすまない。
では、どうやって調達をしていたという疑問を抱くかも知れない。
じつのところ、
これにより、食料事情はひとまず安心できるのではなかろうか。ところが、もう一つだけ肝心な責務が残されていた。――そう、やつらと呼ぶ存在である。
この件に関して、対策はしているものの問題は山積みである。けれど、今のところ解決の糸口はなくとも、各地へ配置したギルドにより何とか応戦はしているという。また、ギルドに属さぬ者でも、やつらの一部を組織へ持ち込めば報酬として交換ができる。
とにかく、紫苑という人物。これほどまでに固執する理由からして、特別な深い事情があるに違いない。いずれにしても詳細は不明であり、謎めいた女性であるといえるだろう…………。
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