3-1 採用されたコーラス

 東の窓から差し込む日差しが、容赦なく眩しい。不快な湿度と汗に、わたしは眠りから引き離された。


 休みだからもう少し寝ていたかったけれども、一度目覚めたからだはもう眠る気はないようだった。


 起きあがり、シャワーを浴びながらなにをしようかと考える。久しぶりに誰とも予定を入れていない週末だった。


 何気なくつけたテレビからは、週末のエンタメ情報が流れてくる。それをBGMに朝食を済ませ、スマートフォンでSNSをチェックする。その手が、ふと止まった。


 いつも使っているSNSに、新しいオンラインゲームの広告が出ていた。柳島さんがプロデュースしたゲームだ。どんなゲームかが気になり、すぐにダウンロードした。


 すでにメディアミックス展開もしているようだ。関連記事を見ていくと、数日前にこのゲームのアルバムが発売になったことがわかった。試しに音楽サブスクリプションサービスで何曲か聞いてから、アルバムをダウンロードした。


 戦略に乗せられている感は否めない。でも、ゲームの質や展開に加え、先を見て様々な媒体を絡ませ、ヒットさせる柳島さんは、きっと人生勝ち組なのだろう。

 望むものを全部手に入れて、認められないとか、受け入れてもらえないなんて気持ちは、味わったことがないに違いない。


 ふと、彼の双子の兄、柳島将也さんを思い出した。

 ロックバンドをやっているらしいけれども、有名なのだろうか。売れているなら、どこかで見たり聞いたりしたことがあるはずなのに、彼の姿を媒体で見たことは多分、ない。


 プロだろ? と聞いてきたときの、覚悟を問うような口振りを思い出し、わたしは大きく頭を振った。


 あの二人にはもう関わりたくない。二人とも、違う側面からわたしのコンプレックスを刺激してくるタイプだ。思い出すと居心地が悪くて仕方がない。

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