第5話

「初めまして、アマツカゼ先生。書側かくがわスニーカー文庫の神山と申します」


「は、ひゃ、はじめ、まして……」


 先日、なんとビックリなことにおれのメールアドレスの元に書籍化の打診が来ていることを知らせるメールが来ていた。その時は、嬉しさのあまりに大声を出しそうになったが、こういうのは誰にも言ってはいけないと、仲が良い書籍化作家さんに教えてもらったことがある。


 胡春にバレないように、あれやこれやとメールでやり取りをして、そして今日、いよいよ編集者の人と打ち合わせの運びとなった。


 正直、めっちゃくちゃ緊張してて、背筋がありえないほどにピーン!となっている。うわぁ、編集者さんイケメンだぁ……。


 ちなみに、アマツカゼというのは俺のペンネームだ。


「実は私、何度も何度もアマツカゼ先生の作品を書籍化させたい!と上に言ってはいたのですが……」


「え、そうなんですか?」


「はい。私、アマツカゼ先生の大ファンなので。勿論、カケヨメでもサポーターになってますよ」


「えと……その……嬉しい、です」


 作家というものは、凄く単純な生き物なので、こうして一人にベタ褒めされただけでも嬉しくなってしまう。頬がによによと上がるのを、何とか指で揉んで収める。


「それでは、打ち合わせを始めましょうか」


「は、はい!よろしくお願いします!」


「今日決めていきたいことは────」


 打ち合わせは、俺が思っているよりも結構和やかな雰囲気で進んだ。


 しっかりするとこはキチンと進めるが、多少の雑談を挟んだり、編集者さんのちょっとした裏話を聞けたりとか、飽きることなく打ち合わせの時間は過ぎていった。


「────といった流れで、今後お付き合いさせていただきます。よろしくお願いしますアマツカゼ先生」


「よろしくお願いします神山さん……あの書籍化することを皆に知らせるのはいつすればいいですかね」


「そうですね……イラストレーターさんが正式に決まったら発表といった形にしましょう。私の方でも何人か候補を探しておきますが、アマツカゼ先生もいいなと思った方がいましたら、是非──────」


「あのっ」


「────はい」


「います。イラストレーター」


「います、とは」


「今許可取ってきます」


「アマツカゼ先生!?ま、まさか……ツブヤイテーで噂になっているあの────」


 ヘッドホンを外し、隣部屋にいる胡春の元へと走る。


「胡春!」


「きゃっ!?」


 バタン!と勢いよく扉を開ける。完全にリラックスしていた胡春は、ビックリして思いっきり肩を跳ねさせていた。


「ゆ、ゆきちゃん!?」


「胡春────あの時の約束を果たす時が来た」


 俺は、ベッドに座る胡春の前に立ってから跪き、手を握った。


「胡春────いや、スノウム先生。俺の────俺だけの、イラストレーターになってください」


「──────!!」


 俺の言葉に、大きく目を見開かせる胡春。そして、ゆっくりと俺の手を握ると満面の笑みでこう言ったのだった。


「────はい、喜んで」










 スノウム

  ㅤ@snowm

 ということで、入籍します

 ㅤㅤㅤ _____________

 ㅤㅤㅤ|アマツカゼㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ|

 ㅤㅤㅤ|ㅤ@Amatukazeㅤㅤㅤㅤㅤㅤ|

 ㅤㅤㅤ|なんとこの度、書籍化が決ま|

 ㅤㅤㅤ|りました!絵師さんはスノウ|

 ㅤㅤㅤ|ム先生です!ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ|

 ㅤㅤㅤㅤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 アマツカゼ

 返信先 @snowm

 ……………………え?

 スノウム

 返信先 @Amatukaze

 ……………………は?しないの?

 アマツカゼ

 返信先 @snowm

 ………………する




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

何とか引用を表現したかったが、カクヨムくんではこれが限界だったよ……


この最後のやり取りがやりたかったがために、この短編を書いたと言っても過言では無い

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