08:四天王と今後の対応を検討
「戻ったぞ」
「ただいまぁ~」
魔王城の玉座へと戻り、再び肩車玉座になってマオリーを座らせる。
四天王は私達が戻ったのに気付くまで、あぁだこぉだと騒いでいたようだ。
「お戻りニャさいませ、陛下。筆頭魔術師殿」
お戻りなさいませ、と揃って頭を下げる
表情から察するに、あまり話は進んでいないような気がするな。
「此度の勇者による侵攻についてですが、前例と突き合わせるとおかしな点が多くございまして。
相違点をどう捉えるかについて、意見が分かれておったところでございます」
岩がゴツゴツしながら報告をして来た。
意見が分かれている、というのはどういう事だろうか。
詳しく聞かせてもらおう。
「前回の勇者侵攻までの共通点として、大規模な戦闘がいくつも起こった後に本丸であるここ、魔王城へと攻め込まれるという流れがございました。
我々も無力ではございません。ジュモーグスの軍勢を押し返し、王国の領土を奪った戦いもございます」
“ジュモーグスとは人間の国、勇者の国の事です”
「つまり、今回は勇者パーティーが4人だけでこちらの本丸である魔王城へと直接奇襲を掛けて来た、という事か?」
「はっ、その通りにございます」
なるほど、いつもであれば大規模な戦闘の後に勇者と魔王による頂上決戦が行われる、と。
しかし、今回の狙いは魔王の、マオリーの首のみ。
ふと、勇者ちゃん達の話していた内容を思い出す。
『いいんですよ姫様、勇者様は魔王を殺してこそ勇者様ですもの』
『ですです~、これで勇者様こそが真の勇者であると認められるでしょう。
姫様と勇者様が結ばれて、私達も側室として迎えてもられば人生安泰ですわ~』
う~ん、本来魔王国へと攻める必要のないタイミングで、自分こそが勇者であると認められたいが為にマオリーの命を狙って来たような気がするが。
“可能性としては十分にございます”
「勇者がいた国にこちら側の内通者はおらんのか?」
「それが……」
何やらトカゲが言い辛そうにしている。
舌をチロチロさせているのを見ながら、トカゲの言葉を待つ。
「先代魔王様がお亡くなりになってしばらくの後、ジュモーグス国内の魔族の血を引いた者が次々に粛清されて行きまして……。
こちらの手の者はほぼ殺されてしまったのです」
“ジュモーグスは人族の王家を頂く国家です。
元々は差別等ございませんでしたが、情勢が変わって人族以外の者を可能な限り排除しようとしたのではないでしょうか”
なるほど、魔王国の脅威に怯えた為に国民すらも手に掛けて行ったという事か。
魔法があり、人以外の人種が多くいるこの世界。
自分よりも筋力・魔力の高い人種や亜人達を排除して行ったのだろう。
気持ちは分からなくもないが、そんな事をすればどんどん自分の首を絞めて行くようなものだと思うんだけどな。
“その為の異世界召喚だったのではないでしょうか”
あ、そう言えばジュモーグス王国が私の存在を複製し、この世界に召喚したんだった。
思い出してしまった。さて、どうやってあの国を滅茶苦茶にしてやろうか。
「メェッ!?」
おっと、感情が顔に出てしまっていたらしい。黒ヤギが怯えている。
そうそう、マオリーとスカイダイビングを楽しんでいた時に目にした、軍隊について伝えておかなければ。
「そう言えば、ジュモーグスからだと思われる軍隊が魔王国へと向かって進軍して来ているようだ。
勇者達が先行して魔王を狙い、その後魔王国王都を落とすという段取りだったのではないか?」
肩に乗せられたマオリーの太ももがギュッと締め付ける。
自分の命を狙われたという話を聞きたくないって気持ちは分かるけど。
ごめんね、どうしても今確認しておかなければならない事だから。
「勇者のみ先行して魔王都へ攻め入るという作戦、前例はござ……、ごニャいません」
……ワザと猫訛りにする必要ないからな?
「そうか……、ちょっと行って話を聞いてこようか」
私は今、どこから見ても魔王だろっていう身体になってはいるが、元々は人族、人間だ。
その人間の姿へは簡単に戻れるので、ちょっと飛んで行って、ジュモーグス軍にぶつかる前に人間の姿へと戻れば、警戒される事なく話が出来るんじゃないだろうか。
“自ら斥候の役割を果たそうという事ですね?”
そういう事。
「え? パパ人族の軍隊に会いに行くの?
マオはちょっと怖いなぁ……」
「パパが1人で行くから大丈夫だ。安心して待っていなさい」
「本当? もういなくなったりしない?」
「ははは、パパはマオリーがいるこの魔王城に帰ってくるさ、必ずね」
「約束だよ?」
“フラグですか?”
違う。
「では、ちょっと行って来る」
「「「「ははぁぁぁ~~~」」」」
また歩いて魔王城の外へ出て、翼を広げてさぁ飛ぼうかと思ったところへ、レイラさんとエリナさんがケンタウロスが引く馬車に乗って登城して来た。
レイラさんが昨日のゆっくりした動作は何だったのかと言うほどの素早い動きで私の前へとやって来て、
「生きとったんかワレぇぇぇ!!?」
と叫んだので、王国軍への斥候は中止となったのだった。
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