04:四天王何してんのう?

「勇者が攻めて来たので」


「陛下をお逃がしし」


「隠れ階段を使って」


「隠れてました」


 何やらゴチャゴチャと言い訳をしていた四天王達だが、簡単に言うとそんな内容。

 どうも私が思っているような魔王やら魔族とは違う印象だなぁ。

 まぁ、勇者も正義! って感じじゃなかったし、魔王サイドも悪! って感じじゃなくてもいいか。


「おばあちゃん、とりあえずマオリーちゃんの部屋に行きませんか?

 抱っこしたままだと起きちゃいそうで」


 憤怒の表情をしたおばあちゃんが、マオリーちゃんを見るとニコニコ顔に戻る。

 筆頭宮廷魔術師だったらしいし、マオリーちゃんとの関わりもあったのだろう。

 生まれた時、いや生まれる前から知っている子だからこそ、マオリーちゃんが襲われた際に側にいなかった四天王に対する怒りが収まらないのかも知れない。


「ところで、陛下を抱っこしている人間は何奴じゃ?

 場合によっては成敗して痛い痛い痛いですレイラ様!!」


 痛い痛いと彼は言うが、見た目岩なので本当に痛いのか疑わしきところ。

 岩を叩いている杖の方がボロボロになりそう。


「ボーガン様、このお方は魔王陛下を助けて下さったのですわ。

 勇者パーティーを一瞬の内に消滅させた魔術師です」


 土下座スタイルのまま、四天王が私を見上げて来る。

 岩人間・トカゲ人間・猫人間・黒ヤギ人間。

 猫はどこか女性っぽい顔付きだな。青くて長い髪の毛、サラサラで触ってみたい。


「そ、それはそれはありがとうございますニャ。国を挙げて歓迎を痛いニャ!!」


 猫が立ち上がろうとしたところに、その頭へと振り下ろされたおばあちゃんの杖。

 ポカリと叩かれて、頭を抱えている。


「本当にコヤツが勇者を倒したとはとても思えませぬ。レイラ様のお力なのではないですか?」


 下を向いたままチロチロと舌を出し入れするトカゲ。

 おばあちゃんが私を見やり、イタズラっ子のような表情をする。

 あれをやれと言われているような気がするが。

 まぁ、本当にぶっ放す訳ではないからいいか。

 4人の下に光る魔法陣を出現させる。


「な、何だコレは!?」


 魔法陣を回転させる。


「すごい魔力が込められているニャ!?」


 魔法陣全体が眩い光に包まれて、


「わ、分かりました信じます! 信じますから!」


 そして消える。


「……死ぬかと思った」



 隠し部屋から別室へと移動。

 どことなく会議室っぽい部屋。

 マオリーちゃんを寝室の天蓋付きベッドへと寝かせた後、ここに連れて来られた。


 マオリーちゃんが空から落ちて来て、追いかけて来た勇者達4人を消滅させて、そしてここまで送って来た。

 簡単に説明すると、未だ信じられないという表情の4人。

 マオリーちゃんがいないからいいよね?

 異次元空間収納インベントリから勇者ちゃんが残して逝ったあの剣を取り出す。


「こ、これは代々勇者に伝わる聖剣、魔王殺しの剣サタンズソウル!?」


 あ、そんな名前なんだ。

 何か物々しい名前だな~。


「この剣は歴代魔王の生き血を吸っておるゆえ、魔族に対する特殊効果がある。

 ワシなんかは触れただけで気絶するやも知れん」


 岩がゴツゴツした顔をさらにゴツゴツさせて聖剣を見つめている。

 おばあちゃん、そんな顔してもやりませんからね?

 岩を剣先でコツンとかしませんからね?

 あのばあちゃん、本当にボケてんのかねぇ。


「聖剣をお持ちという事は、貴殿が勇者を倒して下さったというのは事実である、という証拠。

 この度は魔王陛下をお救い頂き、ありがとうございます。

 そこで、ご相談させて頂きたいのですが……」


 黒ヤギ曰く、

 前回、先代勇者が攻めて来た時にマオリーちゃんの父親である先代魔王が殺された。

 先代四天王もその際に殺された。

 おばあちゃんことレイラさんが後任として指名した筆頭宮廷魔術師も殺された。

 ここにいる四天王は四天王を名乗るにはまだ早い若輩者ばかりである。

 筆頭宮廷魔術師はまだ選べていない。というよりも該当者がいない。


「ので、是非あなたに筆頭宮廷魔術師と1人四天王になって頂きたいなと」


 宮廷筆頭魔術師は分かるにしても、1人四天王って何だ。


「あ、あなたお1人で我ら四天王の代わりをして頂きたく……」


 バンッ! おばあちゃんが机を叩き、

 ピョン! 四天王達が驚いて椅子から飛び上がる。

 おばあちゃんが現役だった頃、さぞ怖い魔術師だったんだろうと思える光景である。


「いいですよ」


 どうせ夢だ、夢なら何でも出来るだろう。

 何せ勇者はすでに倒したのだから。

 これ以上の脅威はないんだろう?

 後はマオリーちゃんが立派な魔王になれるようにサポートすればいいんじゃない?


「本当ですかニャ!? ではこニョイヤリングを!」

「この指輪を!」

「この首輪を!」

「この腕輪を!」


 バンッ!


 ピョン!


 おばあちゃんのひと叩きで、筆頭魔術師は引き受けるが1人四天王はナシとなった。

 それにしてもニョイヤリングって何だ?



 その後、改めて筆頭魔術師としての部屋を用意するが今日のところは客室でと言われて、この部屋へと通された。

 超絶美人なメイドさん付きの客室。


「心配だから明日また来ますね」


 おばあちゃんとエリナさんは泊まらず帰って行った。

 魔王城から馬車で送り届けるらしい。

 まぁ、引いているのは馬ではなくケンタウロスだが。あれなら御者がいなくても大丈夫だね。


 ふぅ、これだけ広いと落ち着かないな。

 夕食はこの部屋へ持って来てもらい、1人で食べた。

 マオリーちゃんもあれからずっと寝ているのかな? 手持ち無沙汰でやる事がない。

 暇だ、落ち着かない。暇な夢って見るもんなんだな。

 それにメイドさんがずっとこっちを見ているし。

 ただのメイドさんじゃない、白人系超絶美人なメイドさん。

 やる事がないのと居心地が悪いのと相まって、ついチラチラと見てしまう。

 紫色の髪の毛に紫色の翼とシッポ。

 出るとこ出ていて締まるとこ締まってる。

 メイドさんは心なしか、儚げというかやつれた印象。

 笑っているが、目元に力がない。

 私から用事を頼む事はないだろうから、ゆっくりしておいてもらおう。

 

 そわそわしていてもカッコ悪いな、ソファーにドンと座っておこう。


 ん、メイドさんがこちらへ来た。

 何? え、脱げって? あ、お風呂かな?

 いやいやいや、自分で出来ますから。

 あ~、めっちゃいい匂いするよ、この美人さん……。

 いやいやいや、ダメです! 私には妻もむぅ!?


 はぁ~……、夢ですもんね?

 たまにはこんな夢も、いいっスよね?

 あ、ベッド? あっちに行くの?

 横になるの?

 ああ~……。


 これはいい夢ですねぇ~。

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