2-3.
イチゴとスポンジ、生クリームが層になっていて、天面にはふんわりホイップされた生クリームがこれでもかと絞られている。その上に、ちょこんと特大のイチゴがまるまるひとつ乗った、イチゴのショートケーキ。
コーヒーを染み込ませたスポンジとマスカルポーネが層になっていて、その上にマスカルポーネがこれでもかと乗っていて、そこにココアが降り注いでいるティラミス。
卵からこだわった特製のカスタードプリンは、とても綺麗なクリーム色とカラメルソースの茶色が見えてとても美味しそう。とてもぷるっぷるだと思う。
イチゴにブルーベリー、バナナ、マスカット、オレンジ、キウイ。色とりどりのフルーツがキラキラと輝きながら並ぶ、フルーツの市のようなフルーツタルト。土台のタルト生地はきっとサクサクだろう。
以上、私達4人が選んだ食後のデザートだ。上から順に私、リオ様、ラディ様、アマデオ様である。リオ様は甘いものがそこまで得意でないというので、コーヒー濃いめのティラミスを。アマデオ様は、ずっと色々悩んでいたので色んなフルーツが乗っているフルーツタルトにしたら? とオススメした。ラディ様は、さっさと決めていた。何でも、自分の知っているプリンと同じか知りたいらしい。
ショートケーキうまー、と目を輝かせていたら、リオ様からティラミスの乗ったスプーンが差し出された。これ間接キスでは、とは思ったが美味しいものに罪はない。ティラミスもうまー、とにっこにこのご機嫌さんになりました、私もリオ様も。いや、リオ様はいつも通り、口の端を上げたにぃっとした笑みだけど。
「こんなにフルーツが使われているって、ちょー贅沢ぅ……。こんなに美味しいケーキ、初めて食べた」
「プリンも美味しいです。こんなに滑らかな口溶けのプリンはなかなかありません。レシピがあれば料理人に渡すのですが……」
初めて異世界通販で買い物をした。果物のページの次は何故かお菓子のページに突入して、ケーキを見た私が我慢できなくなって買ったのが事の発端である。3人は付き合ってケーキを食べてくれているが、見た限り美味しく食べてくれているらしい。アマデオ様なんて、お顔がとろけるような輝かんばかりの素敵な笑顔である。どうやらフルーツタルトはとてもお気に召してくれたようだ。美味しいよね、フルーツタルト。そのフルーツタルト、日本でも有名なフルーツ屋さんで出しているフルーツタルトだからね、美味しいのは道理なのだ。
ちなみに、使用MPは締めて1,000MPちょっとである。だいたい、ケーキひとつあたり250MP前後ということになる。プリンがちょっと安くて、フルーツタルトがちょっと高かったが些事である。美味しければよかろうなのだ。なお、最初に抜かれた100MPは戻ってきた。MPがゼロになると気絶するらしいし、その対策なのかもしれない。
ともかく、ギフトの確認はできた。どうやら望んでいるものから表示されるらしく、見ようと思えば野菜もお肉も食べ物ならだいたい大丈夫だった。MPさえあれば、飢えることはなさそうである。大変ありがたいギフトを貰ったもんだ。何で取得に必要なポイントが安かったんだろう?
「俺のステラ、午後はどうする? 魔力が回復するまで魔法の練習はできないし、薬草採取でもしておくか?」
「ああ、そうしたら? 冒険者ギルドに所属するなら、最初は薬草採取だしアイテムボックスに入れておけばいいよ。時間停止なんでしょ? 鑑定のランクも上がるし一石二鳥だよ」
「ああ、鑑定しながら薬草採取すればいいんですね。分かりました、午後は薬草採取がんばります」
午後の先生役は、アマデオ様らしい。アマデオ様は鑑定が使えるし、調薬も多少できる多彩な人なんだとか。「器用貧乏なだけなんだけどね」とちょっと照れて笑っていたアマデオ様は、可愛らしかった。言わないけど。成人している男性捕まえて可愛いは失礼だ。可愛かったけど。
☆
「こんだけ集めれば、3回分くらいにはなるかな。最近は薬草採取の依頼、高額のものしか確認してないから、だいたいだけど。マリアちゃんは、薬草採取慣れた?」
「鑑定がチートってことだけ分かりました。あと、アマデオ様がすごく優秀な先生ってことも分かりました」
午後になって最初にやったことは、鑑定のやり方。といっても、鑑定したいと心で念じるだけで見えるようになる。私には、草の上にポップアップで名前が表示されるようになった。鑑定のランクが上がればどんどん見える内容が更新されていくらしい。消費MPも大したことなく、その辺の雑草や薬草を見るくらいなら自然回復のスピードとトントンくらいだそうだ。しかも私は「魔力回復速度上昇」のスキルまである。じゃんじゃん鑑定してくれて構わないとのことだった。
だが、これだけでは薬草採取は出来ない。なんせ、草の名前が分かったところでどれが薬草か分からないし、採取方法もそれぞれの薬草に合わせた方法で摘む必要がある。葉っぱだけとか、葉っぱを2~3枚残して茎から千切るとか、根っこから採取しなきゃいけないとか。それをアマデオ様は全部頭に入っていて、私に丁寧に教えてくれた。「これは安いけど摘みやすくてすぐ集まるからオススメ」とか、「これ根っこごと必要だから道具が必要だけど、単価は高い」とか、とても為になった。
リオ様はちょっと離れたところでうろうろしていて、ちょっと気になったけど私は勉強中なのでスルーさせてもらった。ラディ様は馬の世話をしていた。裸馬に乗って走らせていたけど、乗馬スキル高すぎなのでは?
かなり熱中して作業して、だいたい一刻――2時間ほど経ち、給水休憩をしていた。ちなみに、給水休憩はコップひとつあればいい。皆、生活魔法が使えるので、生活魔法の
「夕飯はしっかり食べたいし、ちょっと早いけどそろそろ帰ろっか。ねぇ、ヴィル?」
「そうだな。俺のステラ、何が食べたい?」
「ううん。逆に何があるか分からないので、皆さんのオススメで」
「いつものところだと、酒場になっちゃうねぇ。まあ女将さんいるし、マリアちゃんも大丈夫かな?」
安定のリオ様の膝の上にいたのだが、立ち上がろうとするとリオ様に押さえられてしまい、膝の上に逆戻りした。何のつもりかと振り返れば、リオ様は私の持っていたコップと自分のコップにクリーンをかけて、アマデオ様に押し付けていた。そして私を横抱きにして立ち上がると、荷馬車の方へと歩いていった。
リオ様と合流してから私あまり歩いてないような? 体力がつかないのではないかと心配していると、荷馬車で何やら作業していたらしいラディ様が顔を上げた。荷馬車の車輪を触っているので、点検していたのだろうか。
「ラディ、帰ることになった。馬つないどけ」
「かしこまりました。……ああ、アマデオ様、マジックバックはここです。コップ、預かりますよ」
「ありがと、ラディ。ついでに荷馬車見といて。僕が馬つないでくるよ」
アマデオ様はコップをラディ様に渡すと、たたーっと馬の方へと駆けていっていた。ラディ様は作業途中だったのか、何やらトンカチのようなものを持って数回車輪を叩いてから、溜息を吐いて片付けていた。その様子を見たリオ様は、荷馬車に私ごと乗り込む。次いで、ラディ様がマジックバックだけ荷馬車に乗せると、アマデオ様の方へと行ってしまった。
ややあって、アマデオ様が荷馬車へと乗り込むと、ゆっくりと荷馬車は動き出した。どうやら今度はラディ様が御者をするらしい。
「ヴィル、今日も酔いどれ鳩でいいかな。他のところ、あまり開拓してないし」
「そうだな……。俺のステラ、酒場は平気か? 酒を飲ませるつもりはないが」
「ごはんが美味しいならいいですよ」
「なら大丈夫だね。酔いどれ鳩はお昼に食べたヤママバトをメインに、鳥料理が美味しいんだぁ。あのヤママバトを美味しく出来るんだから、あそこの大将もやり手だよね」
お昼に食べたヤママバトという鳩の肉は美味しかったけど、更に美味しかったりするのだろうか。私は期待にわくわくして笑みを浮かべた。まだ日の高い草原の中を、荷馬車が駆ける。ちらほらと、若い少年少女の姿が見えるようになったので、きっと私の
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