巨漢だけの世界に転生したガリ痩せ姫

戸部 アンソン

第1話 ガリ痩せ姫爆誕

ガリ痩せ姫こと「ジャン」はとても健康に生まれたお姫様でした。

姫と言えども両親が勝手に姫扱いしているだけで世間的には、日本の中流階級に属する庶民の娘です。

でも、笑えば天使、歩けば妖精と言われながらジャンはすくすくと育ちました。


 ジャンは好奇心旺盛であちこち出かけますが、なぜか食にあまり興味を示さない子でした。ジャンは身長は高いけれども体重は平均をはるかに下回りました。

両親は心配して小児科医師はもちろんメンタルヘルスセンターや宗教団体などありとあらゆる相談窓口に低体重の解消方法を聞いてみました。


けっきょく「ご機嫌よう」に到達するのでした。


両親は「ジャン」のご機嫌が良いかどうかを主軸として食事も体重も考えることにしました。

かくしてガリ痩せ姫こと「ジャン」は中学生になりました。家では姫のままだったのですが学校や両親の関係する大人たちの世界では「ジャン」はガリ痩せの女の子でした。ランニング時に乳房がゆれる子もクラスには存在していました。

「ジャン」は素っ裸のまま鏡にむかって「鎖骨の下にくぼみがある」ことを発見しました。ふくよかな子は鎖骨の下のほうからなにかしら発生しているのに。

かくして「ジャン」は自分が「ガリ痩せ」なんだなと、さとるのでした。


両親はというと「ジャン」には、リーダーシップをとって自分も他人も幸福になるような発明や工夫ができる人に育てばよいなと考えていました。

大成功をしたキュートで知的な「ジャン」を夢想していました。

そのために実施したことの1つは、好きな楽器を選ばせて教える。

いったん好きになれば音楽を通して表現力、コミュニケーション力を伸ばせると考えました。言葉はいらない世界。

好きな音を突き詰めていけば、それに合う言葉を載せてくれる人と出会うかもしれません。好きな音を突き詰めていけば、つらい思いをする時間を減らせるかもしれません。

ピンチになった時に救う音、嬉しい時により興奮させる音。

「ジャン」がそんな音を生み出す技を持てたら幸せに違いないと考えました。



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