第53話
アリスの声だ。どうしてここが分かったんだろうか?わざわざ来てくれて感謝しかない。
起きあがろうとしたが俺の上に彼女が寝転がってた為起き上がれない。どうやら彼女も寝ているようだ。
「ウルセェなぁ」
大きな欠伸をしながらウツツが目を覚ます。
「おはようウツツ。アリスが迎えに来てくれたから俺帰るよ」
俺は寝間着のボタンを一つ一つ外し彼女を起こさないようにそっと床に寝かした。
「ウツツさんいるんですよね?ナツ君はどこですか!」
外からアリスが叫ぶ。
「献身的だな。なんか言ってやれよ」
「アリスー!今から行くー!」
外にいるアリスに聞こえるように大きな声で返事をする。チラッと彼女を見る。よし、起きてないな。
「じゃあ俺行くよじゃあなウツツ」
「ちょっと待て。装備を置いていけ」
そういえばそんなの装備していたな。
「今って混沌魔法使われてる?
「いや使われてねーよ」
なら焦る必要はないな。
指に嵌めた青色の指輪と紫色の指輪を外す。この二つってなんの効果があったんだろ?まあいいか。ウエストポーチも外す。普通に下に敷いて寝てたけど中身のポーション割れてないかな?まあいいか。
「ダンジョンの入り口で外した装備ってどうなんの?」
確か俺には使いもんにならんって事で全部外したんだよな?まさか弁償しろなんて言わんよな。
「後で回収するから気にすんな。それよりも聞きたいことがある。全くストーリーが進んでないようだが、冒険者学校はどうなってやがる。主人公は何をしている」
「ストーリーを知らんからなんともいえんなぁ。でもこのままじゃやばいらしいね」
「やばいなんてもんじゃねーよ。はっきり言って未知数だ。お前の裏にいる転生者、そいつが何かしてんじゃねぇのか?」
人を滅ぼしたいと思ってるウツツがそう言うってことは相当ヤバいな。
「いや主人公には関わりたくないって言ってたよ」
「真に受けんなよ。もしかしたらそいつが俺の体を殺した張本人かもな」
「いやその可能性は低いと思うよ。爆発音がする直前まで一緒にいたから」
ウツツの言い分を真実と捉えるならリアは改良版ルードラを使えると言う事になる。それは無いと思うから多分違う。
「そうか。ならもう行っていいぞ」
「うん。じゃあなウツツ。彼女にもまた会おうって伝えておいて」
「俺の体を彼女って言うじゃねー。きめーんだよ」そんな言葉を背に受けながら、俺はウツツの家を出た。
目の前にはアリス。
「心配しました。無事で良かった」
夜、暗くて分からなかったが涙ぐんでる様な気がした。
「ごめんよ心配かけて。すぐに帰ってあげれば良かったね。もしかして学校の寮からここまできたの?」
「いえ…ナツ君達が消えた場所からここまで」
消えた場所ってあの戦闘があった場所の事だよな?一日中そこで待ってた事?それは酷いことをしてしまった。
「ずっと待っててくれたんだ。マジでごめん。もう一個聞いていいかな。どうやってここまで来たん?」
まさか走ってなんて言わないよね。もしそうなら申し訳がなさすぎる。
「その…走って…」
俺は額に手を当てた。これは可哀想な事をしてしまった。もっと気をきかせるべきだった。
「マジでごめんよ。あのさ、こんだけ尽くしてもらってるのにこんな事言うのは失礼かもしれないけどさ、キツイと思ったら自分の事優先していいよ」
「そんな尽くすだなんて…なんだか恥ずかしいです」
ポッとアリスが両頬に手を当てる。
そこじゃねぇ。そこじゃねぇけどアリスが可愛いからなんでもいいや。
「おい!俺の家の前でイチャつくんじゃねぇ!とっとと帰りやがれ!」
どうやら俺とアリスの会話が聞こえていたらしく、イラついた様子のウツツがそう言ってくる。
「いちゃつくだなんてそんな…」
顔を赤くしたアリスが俯く。可愛い。
「帰ろっかアリス」
そんなアリスに俺はそう言った。その瞬間夜空に光の柱が立つ。
この柱はもしかしたらリアの言っていた柱かもしれない。
「あ、アレは一体なんでしょう?学校側の方です」
アリスが驚いた様子でそう言う。
「分からん。もしかしたらウツツが何か知ってるかも」
俺はそう答えた。
スーンと光の柱がどんどん消えていく。
なんで今この光の柱が上がったのだろうか?最近色々ありすぎて正直混乱状態だ。
「ウツツ光の柱が見えた」
家の中にいるウツツに聞こえるようにちょっと大きな声で言った。
「そうかやっとか。お前様子を見に行けよ。誰が同行しているか見に行け、そして俺に伝えろ」
「嫌だよ。俺は疲れたから帰る」
本当は行った方がいいのだろうが、俺が首を突っ込むとアリスに迷惑がかかる。これ以上アリスが俺のせいで大変な目に遭うのは嫌だ。
「他人事じゃねぇんだがな。まあいいお前の好きにしろ」
ウツツがそう言い残す。なんかしこりを残す言い方だな。ま、帰るけどね。
「帰ろうぜアリス」
「はい!帰ったら色々聞かせてもらいます。ウツツさんとの関係とか。ウツツさんの体の事とか」
「お手柔らかにね」
そう言って俺はアリスの手を握る。アリスが「ルードラ」と唱えると俺たちは森の中に移動した。
「あの、部屋の中だと人がいる気がしてここになっちゃいました」
ここと言われてもどこか分からない。
「俺たち一日とはいえ失踪してたもんな。歩いて帰ろっか」
アリスは親に大事に育てられてる貴族だし、俺も父からは見放されてるが一応貴族だ。寮の部屋には捜査という名目で誰か人がいるかもしれない。ここからは歩いて帰ろう。
俺とアリスは学校まで歩き出した。
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