酒場で良い女を演じる人
タヌキング
酒場に居る良い女
うふ♪私の名はミレーナ。冒険者たちの集まる集会酒場で働く女よ。
今日も今日とて酒場に来るカウンターの客の相手に精を出すわ。
まずは女僧侶のルカちゃん。
「ミレーナさん。聞いて下さいよ。また彼氏にフラれちゃって。」
「ルカちゃん、男なんて星の数ほどいるんだから気にしないの。次はもっと輝いている一番星見つけなさいな。」
「う、うん、ミレーナさんありがとう。」
こんなことを言って励ましているんだけど、実はここだけの話、産まれてこの方29年間、私は男性とお付き合いしたことが無いの。ここだけの内緒よ。
次は中年戦士のダリルさん。
「ミレーナちゃんはオッパイ大きくて、いつも綺麗だねぇ♪どれ♪おじさんに触らせてごらん♪」
「もう、ダリルさん。触っても良いけど高くつくわよ。一生この酒場でタダ働きしてもらうけど良いかしら?」
「おっとコイツは怖いねぇ、ガッハハハハハハ‼」
下ネタは本当に苦手。男の人って皆こうなのかしら?だとしたら私は一生独身のままでいい。男の人怖い。
私だって最初から良い女を演じていたわけじゃない。ただ皆が勝手に私を良い女に仕立て上げただけ、見た目が良い女だからといって中身は初心な乙女、そんなこともあるのよ。
でも、ニーズに応えるのが酒場の女の勤めなの。大変だけど頑張らないと。
「ひっく、ミレーナさん、男の人とまぐわう時、どうやってます?」
・・・はい?
ちょっとルカちゃん飲み過ぎてるわね。まぐわうって何かしら?
この手の話題には疎い。男の人と女の人が二人で何をするかなんて私は知らないのである。
「そ、そりゃ、女が男をリードしてあげないとね。男の人はこういうの下手くそだから。」
「へぇ、でもそれだと疲れませんか?」
「それは仕方ないの。男ってのは女に安らぎを求めているんだから、女は温かく男を包んであげないと。」
「流石姉さん。一生付いて行きます♪」
ふぅ、何とかなった~。女が男をリードって何も知らないくせに何を偉そうにって、少し自己嫌悪に陥りそうになる。
「ガッハハ‼そいつは良いねぇ‼俺もミレーナちゃんにリードしてもらいたいねぇ‼どう今晩にでも俺に乗ってみない?」
「もうダリルさん最低‼ミレーナさん、あんなアホな話は聞かないで良いですよ。」
・・・ん?ダリルさんは何を言っているのかしら?ルカちゃんは分かっているみたいだけど・・・乗る?
全然意味は分からないのだけど、とりあえず良い女ぶらないと。
「うふ、乗っても良いけど、ビシバシ行くわよ。覚悟してねお馬さん♪」
「ウォオオ‼ミレーナちゃんはSなんだな‼参ったなコイツは‼鞭で叩かれるのは勘弁だ‼ガッハハ‼」
「ミレーナさん、酔っ払いのあしらい方上手いー♪」
ふぅ、良かった。なんだか上手いこといったわ。乗るってワードからお馬さんしか出てこなかったけど何とかなったわ。大人になってもお馬さんごっこする人居るのね。勉強になったわ。
今宵もなんとか乗り切れそう、そう思っていた矢先、ここでトラブル発生。
「ミ、ミレーナさん、僕とお付き合いしてください‼」
カウンターの席に座るなり、そう言ってきたのは新人剣士のロッソ君。まだ18歳の彼が私に告白して来たのである。
「おいおい、身の程知らずの野郎が出てきたな。」
「ルーキーがミレーナに告白なんて10年早いだろう。」
ざわつく周りの客たち、きっと私みたいな良い女がロッソ君になびくわけ無いと思っているのだろう。
「あのねルッソ君。ミレーナさんは高嶺の花なの。正直ロッソ君とは釣り合わないわ。魔王でも討伐してから出直してきなさい。」
いつも優しいルカちゃんですらこの態度である。でもロッソ君は決して折れることはなかった。
「じ、自分とミレーナさんが釣り合わないのは重々承知の上です‼でも湧き上がってくるこの感情を抑えきれなくて‼思い切って告白した次第であります‼」
真面目そうな良い子。正直あまり話したことは無いのだけど、ここまで私のことを想ってくれているなんて感無量ね。
「そ、それでミレーナさん‼告白の返答を頂けないでしょうか‼」
やれやれ、急かすんじゃないの。でも私の言う事は決まっていた。
「ひゃい、お、お付き合いして下さい。」
顔を真っ赤にして、たどたどしく私がOKを出したものだから、酒場に居た誰もが口に含んだ酒をブーーッ‼と吹き出していた。
ハッキリ言ってこんな風に真っ直ぐに告白されたことなんて無かったからキュンとしてしまったわ。即落ち、こんなの即落ちよ♪
それから私の良い女のメッキは剥がれ落ち、ロッソ君とお付き合いを始めたわ。
もう良い女なんて演じる必要無い。良い女ぶって幸せを逃したなら何にもならないもんね♪
それで初めてロッソ君とまぐわう時、本当に何も知らなかった私は終始ロッソ君にリードされるのでありました♪
マグロッ‼
酒場で良い女を演じる人 タヌキング @kibamusi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます