第20話 職人探しへ
前回、ダンジョンを攻略し、鉱石やモンスターの素材を手に入れた一行。
装備強化の準備はこれで万全かと思われた。
だが、ここでモモが一つ大事なことに気がついた。
「そう言えばみなさん、職人さんの方はみつけているんですか?」
モモの不意の問いにキョトンとした顔になる。
「えーと、そこの商店街にある鍛冶屋とかじゃダメなんですか?」
ここらへんはダンジョンが多いため冒険者向けの店が多く立ち並んでいる。
その中にはもちろん鍛冶屋も含まれているため、今でも何店舗かは視界にあるほどなのだが、「それではだめです」とモモは首を横にふる。
「自分の生死に関わることなので鍛冶師は適当に決めてはいけないんです。
あと、カインさんが手に入れたその『ミスリル』。普通の鍛冶師では加工できない品物なんです」
モモいわく、『ミスリル』はその頑丈性から、普通の金属を加工するのとはわけが違うらしい。
「それじゃあ、一体どうすれば・・・」
その問のアンサーとして、モモは渋い顔になりながら、あの種族の名前を出した。
「・・・そこはやはり、あまり頼りたくないんですが『
未だに小人族特有の
しかし、そう言われても俺にドワーフの知り合いなんているはずがない。
他に知っていそうな人といえば。
「・・そうだ、グラジオさんと師匠は腕利きの鍛冶師を知っているんじゃないですか?」
長年冒険をしている師匠とアイルで隊長も務めているグラジオなら、
そう考えて聞いてみたが・・
「いや、うちはそういうのはルミアやダインに任せてたから・・」
「私も国から支給されたものを使っていたので・・・」
まさかの結果だ。
ツバキはわかっていたとして、当てにしていたグラジオもだめとなると相当まずい。
ミリアが知っているはずもないし。
「とりあえず、ダメ元で鍛冶屋に行ってみましょう。もしかしたらドワーフの職人について知っている人がいるかも知れませんし」
ということで俺たちは、街中の鍛冶屋を訪れてみることにした。
///
「だーーめだーーー」
まあ予想通りだった。
近くにあったベンチにだらしなく座り込む。
「
同じくベンチに座るモモ。
「まあ、そう簡単にいるはずないよな・・・・」
どの店もいるのは人族の職人。
知らないか聞いてみたが「知らない」の一点張り。
一応『ミスリル』の加工もお願いしてみたが、逆に追い出されてしまった。
それほど難しいとは。
「そっちもダメだったみたいですね」
時間短縮も兼ねて二手に分かれていたグラジオたちも合流した。
まあ、この反応からするにどうやらグラジオたちの方もダメだったみたいだ。
「そうなるとどうしましょうか・・」
グラジオがそう聞いても解決案をそう簡単に出せる人はいない。
ただ一刻と時間が過ぎる中、「はぁ」と突如、モモが大きくため息を吐いた。
「頼りたくはなかったんですがこの際、仕方ありませんよね」
何か独り言をつぶやいたかと思うと、モモは気分が乗らない様子でそっと口を開いた。
「一人知ってますよ。凄腕で、しかも
「・・・え!?」
予想外のことにみんなが驚いた。
まさか、モモに
だってあの
「名前はカンナって言うんですが。昔からの知り合いで腕は悔しいですが本物です」
そう言って、手に持っていた杖をみせる。
「たしかそれって大金をはたいて手に入れた・・・・」
「はい、これを制作したのも彼女なんです」
そういえば出会った時、この杖を
「すみません、よかったらそれを少し見せてもらってもいいですか」
「もちろんです 」
モモはグラジオに杖を渡すと、それを受け取ったグラジオは様々な角度から杖を見て、「ありがとうございます」と言ってモモに返却した。
「どうでした?」と聞くと、グラジオは興味深そうに
「正直、すごいとしか言えません。今まで見てきた中でトップレベルのものでした」
と答えた。
「私は賛成です。正直、これ以上の職人はなかなか見つけられませんよ」
グラジオがそこまで言うなら反対する理由はない。
「そうなると決まりですね。その人は今どこにいるんですか?」
「それが・・・」
モモは少し間を開けて、
「この街にいるんですよね」
「な!?」
まさかの事実に驚きが隠せなかった。
「ですがどの鍛冶屋を探しても見当たりませんでしたが」
ミリアの言うとおり、もしこの街にいるなら見つけててもおかしくないのだが。
「たしか故郷で最後に会ったとき、地図をもらったので」
そう言って荷物の中からゴソゴソとものを探すと、小さい子が書いたのかと思うほど乱雑かつ大まか過ぎる地図がでてきた。
「・・・ええと、本当に凄腕なんだよね・・・」
あの師匠も心配になるほどの地図の出来だったが、
「腕だけは確かですから」と、あのモモがフォローを入れる。
「ただ一つだけ、大きな問題があるんですよね・・・・」
「その問題って・・・?」
聞き返すとモモは「まあ、会えばすぐに分かりますよ」とだけ言って、最大限の不安を抱えながら、俺達は地図を頼りにそのカンナのもとへ向かったのだった。
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