第14話


「助けて。恭子ちゃん。」


 懐かしい、声が聞こえる。

 真奈・・・?


 おかしい。

 ついさっき、村は壊滅したはず。


「助けて・・・」


 ガラガラ。

 鎖の音だ。


 私は動き出した。



 ×+×+×+×+×



「大丈夫? 真奈。」


「よかった、助けてくれるの?」


「まあね!」


 中身のない、会話を重ねる。


「けがはしてない?」


 真奈に問いかける。


「うん。けがはないよ。」


「そか。よかった。」


 沈黙。

 長い時間だ。


「今、何時・・・?」


「午前3時くらい。」


「あはは。じゃあ、大丈夫だ。」


 ガラガラ。

 たくさんの鎖を引き連れて歩く。


 ガラガラ。

 ガラガラ。


「真奈。大丈夫?」


 返答はない。


「真奈?」


 誰もいない。

 ああ、もう耳も駄目になったか。


 あはは。


「真奈、朝を待ちなさい。」


 私は倒れゆく・・・。



 ×+×+×+×+×



 「恭子ちゃんがいる。」


 村が壊滅した直後。

 私は木の裏に隠れキョンシーから身を隠していた。


「恭子ちゃんなら、なんとかできるかもしれない。」


 必死に拘置所に走る。

 もう、誰も助からないかもしれない。


 恭子ちゃんなら、なんとか・・・


「助けて。恭子ちゃん。」


 息が続かない。


「助けて・・・」




「大丈夫? 真奈。」


 明るい、声がする。


「よかった、助けてくれるの?」


「まあね!」


 久々の、暖かい会話だ。


「けがはしてない?」


 恭子ちゃんに聴かれる。


「うん。けがはないよ。」


 嘘だ。

 今は全身血まみれ。


 どう考えても生き残れない。


「そか。よかった。」


 え?


「今、何時・・・?」


「午前3時くらい。」


「あはは。じゃあ、大丈夫だ。」


 大丈夫? 何が?


「真奈。大丈夫?」


「何も大丈夫じゃないよ。助けてよ。」


「真奈?」


 変だ。確実に変だ。


「真奈、朝を待ちなさい。」


 そう言って、恭子ちゃんは倒れた。

 もう、駄目なのかな。

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