第1話


 純白に包まれたこの部屋は、あまりに孤高でつかみがたい空気だった。


「おはよう」


 そう、一言。まだ、会えた。


「おはよう。」


 彼女に挨拶を返す。


 まだ、せめて少しでも、この時間が続けば。


 そう、思いたくなる。

 けれど、彼女の横の機械からは、ピッピッピと音が鳴っていて、その深刻さを加速させた。


「ほら、早く聞かせてよ。」



「あなたの、答えを。」


 そう告げる彼女の口元は笑っていて、目は死んでいて、頬には傷があった。


 そして、僕は少し苦笑いをした。


「もちろん。」




 ここからのことは、あまり覚えていない。


 それでも、僕は笑わなかったことだけは、鮮明に覚えていた。笑い返してあげられなかった。それだけが、心残りでもあった。

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