02

 ねえ、どうしたらいい。私は腕に縋ったが、当然答えなど返ってこなかった。ただ嫌に、部屋の白さが際立った。どうしよう、どうしたらって。胸の奥で解答にありつけなかった言葉たちが、飛べなくなった鳥のように、燻っては黒くなった。どうやら不安というものは、心臓で結ばれるらしかった。正解なんてないからさあ、部屋の隅で埃たちが歌っていた。腕は沈黙を守っていた。もう少しで時計の針が、午前六時を指そうとしていた。ねえ、これ、食べてしまえる。骨のように黙る腕に、私は尋ねてみた。誰もいないのに声が、密かに震えていた。心臓の中で黒い鳥が、騒ぎ立ててうるさかった。腕は有無を言わずに、薄い手のひらを翻した。皮ふが音を立てずに揺らぐと、浅い切れ目が生じた——すっくと濡れて、まるで傷口を開くように——粒状に並んだ切歯は、部屋に満たされた光と等しい明るさをしていた。

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白い部屋 古森もの @morinomono

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